ヘルメス主義

出典: Jinkawiki

2009年6月4日 (木) 11:33 の版; 最新版を表示
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ヘルメス主義とは 主として、*ヘルメス・トリスメギストスという著者に仮託された古代の神秘主義的な一群の文献ヘルメス文書に基づく、哲学的・宗教的思想の総称。

  • ヘルメス文書で扱われる、占星術、錬金術、神智学、自然哲学などを含み、日本語では神秘学の名で呼ばれるような概念にも近い。


ヘルメス主義の原理

これは、うそいつわりなく真実、確実にしてこのうえなく真正である。一つのものの奇跡をなしとげるにあたっては、 ①下にあるものは上にあるものに似ており、上にあるものは下にあるものに似ている。そして万物は、一つのものの和解によって、一つのものから成ったように、 ②万物は順応によって、この一つのものから生まれた。このものの父は太陽で母は月である。風はこのものを胎内にもち、その乳母は大地である。このものは、全世界の一切の仕上げの父である。その力は、もし大地にむけられれば、完全無欠である。 ③なんじは、土を火から精妙なものを粗雑なものから、円滑にきわめて敏捷に分離するがよい。それは、大地から天へ上昇し、ふたたび大地へ下降して、すぐれたものと劣れるものの力をうけとる。かくしてなんじは、全世界の栄光を手に入れ、一切の不明瞭はなんじから消えさるであろう。このものは、すべての剛毅のうちでも、いやがうえにも剛毅である。なぜなら、それはあらゆる精妙なものに打ち勝ち、あらゆる固体に浸透するから。かくて、大地は創造された。したがって、このものを手段として、驚異すべき順応がなされるであろう。このため私は、全世界の哲学の三部をもつヘルメス・トリスメギストスと呼ばれる。私が太陽の働きについて述べるべきことは、以上で終わる。(平田寛訳) †

─エメラルド・タブレットに見られるヘルメス主義の中心的概念─

①上なるものは下なるものの如し─万物照応 ②全存在の秩序連関、および万物照応 ↓ ③の操作が必要☆ヘルメス主義の意義

  <ヘルメス主義的考え方> ①想像力をはばたかせること←万物照応の実践 ②世界と自分が一体であると考えること←全存在の秩序連関(⇔グノーシス主義) ③したがって、個としての特徴を維持しつつ(①)、他の存在とのバランスもとる(②)ということに…                  ↓   世界をそして自分を肯定し、しかもバランスを重んじる考え方                             →現代にも通ずる



  • ヘルメス・トリスメギストス

 ギリシア神話に現れるヘルメスがエジプトに持ち込まれた結果、エジプトの知恵の神トートと同一視されて生まれた神格。ヘルメス・トリスメギストスの「トリスメギストス」とは「三重に偉大なる」と言う意味で、このヘルメス神は偉大なる王であり、哲学者であり、神官であると言う意味が込められている。

  • ヘルメス文書

ヘルメス・トリスメギストスが著したと考えられた神秘主義的な古代思想の文献写本の総称。その範囲には、 ①哲学・宗教関係  (1)『ヘルメス選集』(CH=Corpus Hermeticum)――後2-3世紀  ギリシア語。第I-XVIIIの17冊子を含む(XVは欠番)。国王の称賛演説を内容とする第XVIII冊子を別とすれば、すべて宗教・哲学的な教えを主体とする。  荒井献・柴田有訳『ヘルメス文書』(朝日出版社、1980.10.)に全訳されている。  (2)『アスクレビオス』(AsL)――後2世紀  ラテン語。ギリシア語原本からのラテン訳であるが、原本は散失し、ラクタンチゥス『神学体系』とアレクサンドリアのキュリロス『反ユリアヌス論』などに 部分的に伝存するのみである。ギリシア語題は、『完全な教え』(logos teleios)であった。  邦訳はないが、柴田有「ヘルメス思想の源流:『アスクレピオス』の自然哲学とその周辺」(新岩波講座・哲学8『技術・魔術・科学』所収)に概説されてい る。  (3)『ストバイオスのヘルメス文書断片』  ギリシア語。後5世紀初めにまとめられた詞華集の著者、ストバイオスがその中に伝えている断片。断片の数は数十に上るが、現代のヘルメス文書テキストに 収録されている数は編集者により異る。NF(Nock, Festugièreの校訂本)は三〇を収めている。  (4)その他の断片  ラクタンチゥス(3-4世紀)、アレクサンドリアのキュリロス(4-5世紀)、錬金術師ゾシモス(3世紀)、プラトン主義者ヤンプリコス(3-4世紀) らの伝えるヘルメス文書断片。ギリシア語のものとラテン語のものとがある。  (5)ナグ・ハマディ文書の一部  コプト語。ナグ・ハマディ文書は13のコーデックス(冊子群)から成っている。そしてコーデックVIの第6-8冊子はヘルメス文書である。「第八のものと第九 の もの」はグノーシス作品で、「再生」(CHXIII)を基本的に受け継いでいる。「唱えられた祈り」は、『アスクレピオス』末尾の祈りと一致する。「アス クレビオス」は『アスクレピオス』(2)と多くの箇所で並行する。


②占星術関係  今日ラテン訳でしか伝存していない『ヘルメスの書』(Liber Hermetis)は、その内容において紀元前の初期エジプト占星術を伝えるものと評されている。原 本はギリシア語である。ラテン語写本は15世紀のもので、今世紀前半、グンデルが発見した。  古代占星術は通常薬学や植物学と一体をなす。例えば、ヘルメースからアンモーンに宛てた『イアトロマテマティカ』は天体の観測に基いた薬剤の研究であ  る。この作品は後1世紀の医師テッサロスによるとも言われている。また幾つかの写本に伝えられる、ギリシア語の『シャクヤクについて』は天体現象と植物 の関係を論じている。


③錬金術関係  エジプト、メンデスのボーロスによる『自然学と神秘学』(Physika et mystica)は、錬金術のヘルメス文書であるが、今日その残片しか存在しない。前200 年頃のデーモクリトス派の一人によれば、ギリシア・エジプト的な錬金術はとりわけボーロスによって体系化されたのである。ボーロスから後3世紀のゾシモ スに至る期間については、やはり僅かの断片が残っているにすぎない。パノポリス(現在アグミーム)のゾシモスは『オメガ文字について』、『最後の勘定  書』、『器具と炉について』など多数の錬金術著作をギリシア語で残している。彼自身の言葉からも推定できるように、これらは多量の*ヘルメス*錬金術の知 識を取り入れている。換言すればゾシモスはヘルメス錬金術の貴重な証人なのである。

  ④魔術関係  ギリシア語で書かれた古代魔術文書の集成である、プライゼンダンツのテキストは既に古典的位置を占めるものである。しかも我々にとって重要なのは、純粋 に魔術的な内容の一部がヘルメース・トートに帰されている点である。この外には、比較的早い時期に作られた、『キュラニデス』ないし『コイラニデス』を 挙げれば十分であろう。これはヘルメースから「キュラノス」(架空のベルシア王)へ宛てられている。 (荒井献・柴田有訳『ヘルメス文書』(朝日出版社、1980.10.)の解説)による。

  がある。

 




<参考文献>

・『ヘルメス文書』荒井献+柴田有訳 朝日新聞社 ・ブロッサム・ファインスタイン「ヘルメス思想」(『西洋思想大事典』平凡社 1990) ・ジョージ・ボアズ「マクロコスモスとミクロコスモス」(『西洋思想大事典』平凡社 1990) ・アントワーヌ・フェーブル『エゾテリスム思想』田中義廣訳 白水社 1995     ・Roelof van den Rroek ”Gnosticism and Hermetism in Antiquity:Two Roads to Salvation”in ed.Roelf van den Rroek and Woulter J. Hanegraaff Gnosis and Hermeticism 1998 ・Antoine Faivre “Renaissannce Hermeticism and the Concept of Western Esotericism” in ed.Roelf van den Rroek and Woulter J. Hanegraaff Gnosis and Hermeticism 1998 ・Alexander Roob Alchemy&Mystisism 1996 ・Three Initiates The Kybalion 1908 http://www006.upp.so-net.ne.jp/whitey/esoteric_text/hermetism.htm#hedline http://web.kyoto-inet.or.jp/people/tiakio/urchristentum/ch_index.html


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