出版権

出典: Jinkawiki

2009年7月29日 (水) 11:24 の版; 最新版を表示
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目次

出版権とは

出版権設定契約によって出版者が取得する、その著作物を出版する(本を出す)ことができる権利。出版権は、出版者に対し契約によって定められた範囲内で出版の目的のために著作物の直接的支配を許す権利であるから、著作権者は出版権者による著作物の利用(出版の目的でかつ設定行為で定められた範囲内に限られる)を認容しなければならない義務を負う。出版権は、著作物を原作のまま印刷その他の機械的または化学的方法により文書または図画として複製・頒布する専有権を内容とする。したがって著作物の内容を変更することは許されない。出版権の設定を受けた者は、当該著作物を出版する権利を専有することになるが、出版権の設定を受けてから6ヶ月以内に出版しなければならない義務を負う。したがって第三者に対しその出版権の目的である著作物の複製を許諾する権限を有しない。

出版権の設定

第七十九条 第二十一条に規定する権利を有する者(複製権者)は、その著作物を文書又は図画として出版することを引き受ける者に対し、出版権を設定することができる。 複製権者は、その複製権を目的とする質権が設定されているときは、当該質権を有する者の承諾を得た場合に限り、出版権を設定することができるものとする。出版権は著作物の複製権を有する者がその著作物を出版する権利を与えるものであり、出版する権利を付与された(引き受けた)者は著作物を出版する権利のみを有し、著作物そのものには権利を有しない。すなわち、出版する本に関する著作権も著作隣接権も持たない。

出版権の内容

出版権者は出版権が設定された原作を頒布するために複製する権利を専有することになるため、出版権者以外の者が頒布の目的をもって原作を印刷し、出版することはできない。但し、出版権設定後3年経過後は、当該著作物の複製権を有する者は、当該著作物を全集又は当該著作物の著作者のみを編集したその他の編集物に収録することができる。また、出版権者は、著作権や著作隣接権を有するわけではないので、出版権の対象である著作物の複製を許諾することはできない。


出版の義務

出版権者は、その出版権の目的である著作物につき次の義務を負う。ただし、設定行為に別段の定めがある場合は、この限りでない。

 ・当該著作物を慣行に従い継続して出版する義務

 ・複製権者からその著作物を複製するために必要な原稿その他の原品又はこれに相当する物の引渡しを受けた日から6ヵ月以内に当該著作物を出版する義務


出版権者が出版物を増刷する際、著作者は、その著作物に正当な範囲で修正を加えることができ、また、出版権者は、増刷する旨通知する義務がある。


出版権の存続期間

出版権の存続期間については、原則として出版権設定契約において当事者間で任意に定めることができる。そして、そのような任意の定めがないときは、出版業界の慣行も考慮し、出版権の設定後「最初の出版があった日から3年を経過した日」において消滅するものとされている。 当事者間で任意に出版権の存続期間を定める場合、「無期限」の存続期間を定めたり、「複製権の存続期間と同じ期間」といった極めて長期にわたる存続期間を定めると無効と解され、結局、任意の定めがないものとして「最初の出版があった日から3年を経過した日」が適用されるおそれがある。なお、「最初の出版があった日」とは、出版物(著作物の複製物)の第一回(初版)の発売配布があった日(取次店に引き渡されて流通過程におかれた日)をいう。

出版権の消滅

出版権者が、出版権設定後6ヶ月以内に出版しない場合、複製権者は出版権を消滅させることができる。また、慣行に従い継続して出版しない場合であり、催告後3ヶ月以内に履行しない場合も出版権を消滅させることができる。また、著作物の内容が、自己の考えに合わなくなった場合、著作者は、出版権を消滅させることができるが、消滅に伴い出版権者に生じた損害を賠償する義務が生じ、損害を賠償できない場合は、出版権を消滅させることはできない。


出版権の登録

次に掲げる事項は、登録しなければ、第三者に対抗することができない。

・ 出版権の設定、移転、変更若しくは消滅、又は処分の制限

・ 出版権を目的とする質権の設定、移転、変更若しくは消滅、又は処分の制限


出版権設定の効果

出版権は設定行為で定められた範囲内で著作物を出版する「排他独占的権利」であるため、出版権者は、当該出版権の内容と抵触する第三者の無断出版行為に対して自らの有する出版権に基づいて発行差止めや損害賠償を請求することができる(当該出版権の内容と抵触する複製権者の出版行為に対しても権利を行使することができる)。また、設定された出版権の範囲内で複製権は制限を受けることになるため、複製権者は、他に出版を希望する者に対し、当該出版権の内容と抵触する出版権を設定することも、出版の許諾を与えることもできない。なお、出版権が設定されている場合で第三者による無断出版行為が行われているときは、当該無断出版行為に対して、出版権者はもちろん、複製権者も自らの複製権に基づいて当該出版発行の差止めや損害賠償を請求することができるものと解される。 出版権が設定されると、以上のように、その範囲内で複製権は制限を受けるため、複製権者といえども、当該出版権の目的となっている著作物をその著作者の全集などに出版権者に無断で収録することは許されないのが原則である。しかし、「出版権の存続期間中に当該著作物の著作者が死亡したとき」は、複製権者は、当該出版権の目的となっているその著作物を「全集その他の編集物(その著作者の著作物のみを編集したものに限る。)」に収録して複製することができるとされている。また、設定行為に別段の定めがある場合を除いて、「出版権の設定後最初の出版があった日から3年を経過したとき」にも、複製権者は、同様の行為をすることができる。出版権者は、他人に対し、出版権の目的である著作物の複製を許諾することができない、とされている。


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