バベルの塔2
出典: Jinkawiki
バベルの塔の建設と言語の混乱の物語
世界中は同じ言葉を使って、同じように話していた。 東の方から移動してきた人々は、シンアルの地に平野を見つけ、そこに住み着いた。 彼らは、「れんがを作り、それをよく焼こう」と話し合った。石の代わりにれんがを、しっくいの代わりにアスファルトを用いた。 彼らは、「さあ、天まで届く塔のある町を建て、有名になろう。そして、全地に散らされることのないようにしよう」と言った。 主は降って来て、人の子らが建てた、塔のあるこの町を見て、 言われた。「彼らは一つの民で、皆一つの言葉を話しているから、このようなことをし始めたのだ。これでは、彼らが何を企てても、妨げることはできない。 我々は降って行って、直ちに彼らの言葉を混乱させ、互いの言葉が聞き分けられぬようにしてしまおう。」 主は彼らをそこから全地に散らされたので、彼らはこの町の建設をやめた。 こういうわけで、この町の名はバベルと呼ばれた。主がそこで全地の言葉を混乱(バラル)させ、また、主がそこから彼らを全地に散らされたからである。
ノアの洪水の後、人間はみな、同じ言葉を話していた。
人間は石の代わりにレンガをつくり、漆喰の代わりにアスファルトを手に入れた。こうした技術の進歩は人間を傲慢にしていった。天まで届く塔のある町を建てて、有名になろうとしたのである。
神は、人間の高慢な企てを知り、心配し、怒った。そして人間の言葉を混乱(バラル)させた。
今日、世界中に多様な言葉が存在するのは、バベル(混乱)の塔を建てようとした人間の傲慢を、神が裁いた結果なのである。
この物語から読み取れること
この書き出しの部分には鋭敏な歴史的観察が披瀝されている。すなわち、ここの民族は一般に、大きな民族移動の結果として生み出されたのである。
人々の大きな結合体が、謎めいた仕方で動き出す。そしてそれまで歴史を持たずに存在していた隠れた人々が、あるとき突然歴史の脚光の中に登場し、文化的勢力に押しあがる。
このことに伴い、その定着も特殊な形態をとる。彼らは以前のように特定の土地に根を下ろすばかりでなく、むしろ自覚的に強力な団結を追及し、そして名声を求める。
彼らは、巨大な都市と高い塔を建てて、自分たちの建築技術の記念碑を打ちたてようとする。
この巨人的な文化事業に際しては、若い民族特有の情熱と生き生きとした楽天主義が彼らの意気を鼓舞する。
したがって、都市は彼らの防衛上の自信の象徴として、また、塔は彼らの名誉への意志の象徴として建てられたのである。
塔の頂を天にまで届かせる、という文章をあまり強調して受け取ってはいけない。それは、建物の特別な高さを描く表現にすぎない。
人類が神の住まいである天に押し寄せようとしたことは語られていないのである。
ここで建築事業の動機として、決して前代未聞のことが語られておらず、むしろ結局は人間の可能性の枠内のことが挙げられているということに、この物語の特別に微妙な点があると見なければならない。
すなわちその動機とは、一方では彼らのエネルギーの統合集中であり、他方では名声の獲得、すなわちは偉大なものになりたいという素朴な欲求なのである。
参考文献
アルトゥール・ヴァイザー監修 ATD旧約聖書註解
C・ヴェルターマン 旧約聖書 ヨルダン社
http://www.ne.jp/asahi/art/dorian/BibleOld/AGenesis/08Babel/Babel.htm