風力発電

出典: Jinkawiki

2010年1月9日 (土) 21:26 の版; 最新版を表示
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風力発電

風力発電とは、風力エネルギーを風車によって機械的エネルギーに変換し、発電機を回して発電する方式のことだ。風力エネルギーは風速によって変化し、受風面積半径1メートル、風速10メートル毎秒では、1キロワットが得られる。風力発電の利用システムとしては、交流の風力発電機を直接電力系統に利用する直接利用システムと、風力発電機の電気を蓄電池に蓄え、電力系統に並列する蓄電池利用システムの二つがある。前者は風力変化の影響を直接受けるが、後者は蓄電池で補うため平均的に利用できる。しかし、そのぶん設備費は高価となる。
 風力エネルギーを動力源に利用している代表的な例はオランダの風車であるが、アメリカ、イギリスなどで100キロ~1000キロワット級がすでに実用化している。日本でも数キロワット~数百ワットのものが稼働している。


風車の歴史 
風車のルーツは中近東にあることが知られているが、その後、ヨーロッパの国々では製粉や揚水用として700年以上にわたって利用されてきた。最も古い風力の利用は帆による船の推進であり、エジプトの古い記録によれば、風車は3000年以上前から使われているとある。ヨーロッパにおける風車利用の最初の証拠としては、風車の建設許可に関する1105年のフランスの書類がある。19世紀の終わりにいくつかの国で風力発電が誕生し、その後、デンマークを中心にして発展したが第二次世界大戦の後、世の中が落ち着き石油の価格が下がったため、風力発電はしばらく見捨てられた状態にあった。しかし、1970年代以降、環境問題が大きく取り上げられるようになると、クリーンで再生可能なエネルギー源として風力発電を積極的に導入する動きは世界的なものとなった。


オランダの風車 
オランダの国名、ネーデルランドは「低い土地」という意味があるように、国土の約4分の1は海面下にある。そのため、オランダの象徴ともいえる風車は、揚水のために利用されてきたのだ。北海に面したオランダは、昼と夜では風向きが逆になるが、間断なく海陸風が吹くことから干拓地の排水には好都合であった。風車で揚水をするには、スクープホイールと呼ばれる羽根車を風車で駆使して水を揚げるなどした。  オランダで最初の穀物製粉用の風車が建てられたのは1439年といわれており、そこから極めて多数の干拓地の排水用の風車が用いられていった。19世紀初めまでには、オランダ内では約一万台の風車が使われるようになった。


オランダの風車の型
①オランダ型排水風車
 特に南オランダ型のもので、風向に応じて頭部の向きを変える装置が外にむきだしになっているものをいう。このため、上部装置型ともいう。底部は普通八角形である。ライデンの北東80キロメートルには1780年に建てられた珍しい十二角形の風車があり現在も使用している。
②北オランダ型排水風車
 ①との違いは、風向に応じて頭部の向きを変える装置が内部に隠されている点だ。内部装置型ともいう。①と同様で、水かき車はその体内にあり、水位差が大きいときにはスクリューで水をかきあげる。
③ステージつき塔状風車
 粉ひき用のため、集落の近くに建つことが多いので、風力をより多く利用するために高さが高い。一階は馬車や自動車が出入りできるようになっており、穀物を搬入し、またひいた粉がすぐに搬出できる。特に町の中にあるものをWalmolenと呼び、ライデン、デルフト、シーダム等に多い。
④パルトローク型風車
 製材用の特殊な風車だ。その型はちょうどドイツのプファルツから来た人達の着るスカートのようであったから、プファルツロークと呼ばれ、やがて縮まりパルトロークになったといわれる。
⑤築山塔状風車
 ③と風車の上半部は同じだが、高い塔になっておらず、築山の上に建っている。築山の部分にはやはり車が出入りできるようになっている。
⑥ウィップミル
 オランダでは古い型で、普通は排水用風車である。風向に応じて向きが変えられる上部分は、中心の柱で支えられている。その柱が中空になっていて、その中に風車の回転を水かき車の回転に連結する軸が入っている。
⑦メドウミル
 ⑥の特に小さい型で、牧場のすみなどに排水用としてある風車だ。高さは3~4メートル。
⑧ポストミル
 風車の原型で、製粉用風車のこと。フランダースに行くとまだみることができる。


日本の風力発電
日本では玩具としての風車が平安時代に中国から伝わっているが、明治以前に実用の風車が使われた記録は存在しない。これは、日本には大小の落差のある三万本もの河川があって、水車が発達し、風車を使う必要がなかったからである。しかし、明治以降には外国人居留地やミッションスクールなどで輸入風車が回り始めた。また、大正から昭和初期にかけて、風車による揚水は農業用として茨城、千葉、長野、大阪などに広まった。ヨーロッパのドイツやスペイン、デンマーク、さらにアメリカなどと比べると、風力発電の導入量は極めて小さいが、1990年代後半から伸び、2007年時点で160万キロワットを超えている。
 現代では、都市部で風力エネルギーの地産地消・分散型電源として都市型風力発電システムが注目されている。地方自治体やコミュニティの分散型発電システムも考えられ、従来のように一方的に与えられる電力でなく、自分の意思で選べる、市民風車のような取り組みがある。設置コストも年々下がり、経済性が上がり、経済的に成立する大規模発電事業も増えてきている。


風力発電の問題点
風力発電は、二酸化炭素を排出せず、酸性雨や放射能汚染とも無縁であり、風力エネルギーの使用は従来の化石燃料や原子力への依存を減少させる利点がある。だが同時に、環境への悪影響の問題もある。鳥が回転するブレードにぶつかり死ぬ(バードストライク)という動物愛護の観念からの鳥問題や、設置することにより周囲の自然や景観・美観を損なう景観問題がある。また、ブレードが動く際に風を切るためおこる騒音や、風車がラジオ局、マイクロ波送受信機などの間に位置することで起こる電波障害、発電効率があまりよくなく1機当たりの発電量が限られているという問題、強度の風力や落雷などによってブレードや機器が破損したり、本体が倒れるといった問題などがある。きちんとした環境アセスメントに基づいて風力開発を進めることが不可欠となっている。



【参考文献】
 成山堂書店 「風と風車のはなし」 牛山泉 2008年1月18日
 東京大学出版会 「風の世界」 吉野正敏 1989年3月10日
 小学館 「日本百科全書」渡邉静夫 1985年
 新エネルギー団体http://www.nef.or.jp/windpower/merit01.html


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