フレネ教育2

出典: Jinkawiki

2010年2月2日 (火) 10:40 の版; 最新版を表示
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目次

フレネとは

フレネとは人の名前である。 フレネは伝達本位の教育ではなく、こどもの生活、かれらの表現そのものを学習の中心にすえることに活路を見いだした。 その方法を見出すことができたのはフレネがハンディキャップを持っていたからということもあってである。 フレネは第一次世界大戦が勃発したとき戦場へと送られて、そこで毒ガスに肺を侵されたため70%肺切除の障害者となった。大声を出せないというハンディキャップをフレネはもってしまう。 フレネ学校をつくり、その場所がヨーロッパ各地に拡大していたフレネ教育運動の拠点となり、内戦下のスペインから避難してきたこどもたちや教師も迎えた。 第二次世界大戦が始まった次の年に、フレネは逮捕され強制収容所に送られたためフレネ学校も閉鎖された。映画『緑の学園』などでフレネの知名度は高まる。 フレネはあらゆる主義や無党派の教師をも結集する開かれた教育改革運動を主張した。フレネは1957年、現代学校運動国際連盟(FIMEM)の創設を提議し、実現する。


フレネ教育の始まり

南フランスの山のなかに赴任してフレネは、子どもの世界とかけ離れた教科書とその説明に終始する教師、その反復練習のためにすっかり学習意欲を無くした子ども達を見て衝撃を受けた。 フレネはやる気をなくした子ども達のために、午後の時間を使って散歩教室を始め、村の小川や野原を歩いたり、畑や職人達の仕事場を見てまわったりした。 彼らは教室に戻ると、散歩から持ち帰った収穫物を見せ合ったり、見てきたことを話し合ったりした。この光景こそ子どものあるべき姿であると思うが、再び勉強の時間になるとまた元のように子ども達の好奇心も活力もそこでストップしてしまう。子ども達は再び読みやつづりの学習のために教科書を開くしかなかったためだ。 フレネは、散歩教室で発揮される子どもの活力を、どうしたら学習の中に持ち込むことができるかを考えた。

方法

教室に印刷機を備えつけ、子ども達が綴った文を印刷しそれを教科書にかえて「自由な教科書」として使うことを考えた。 やがて、理性的共同体における人格の自己形成を目的とした教育学を、学習材と教育技術の土台の上に建設することを主張。 生活を観察し、表現し批評し合うなかで生まれる興味の複合の探究のための学習文庫や協同学習カード、計算や読み書きのためのカードを協同組合方式によって開発、これらの学習材と学校文集や学校間通信などの教育技術の裏付けをともなって教科書による一斉授業の廃止を提唱し、仕事を基礎とした個性化と協同化の2大原理による実践を組織した。


世界での取り組み

子どもの生活、興味、自由な表現」から出発し、印刷機や様々な道具、手仕事を導入して芸術的表現、知的学習、個別教育、協同学習、協同的人格の育成を図る教育法は、フレネなき今も「現代学校運動」として発展を続けており、フランスの公立学校では約1割の教員が実践、スペイン、ドイツ、ブラジルなど諸外国へも広がっている。 日本の学校問題、教育問題を考えるとき、自由で幸せでしかも高度な知識、芸術的能力を身に付けたフレネ学校の子ども達は、多くの点で示唆を与えてくれる。 フレネ教育の試みは彼亡き後も、現代学校運動として今日に引き継がれ、世界29カ国以上で実践されている。


フレネ学校の様子

南フランス、コートダジュールの中心都市ニースの西方に、カーニ・シュル・メールという漁師の町があり、ここから北へなだらかな谷を20キロばかりさかのぼったところに、ヴァンスという中世の面影を残す古い町がある。 ローマ時代、キリスト教徒によって建設され、中世にはプロヴァンス伯爵の居城として栄えた町である。今も一部に城壁を残す旧市街から、東方の丘の小道を上っていくと、サンジャネの岩山やあたりの広大な山谷が展望できる高台に出ると、そこにエコール・フレネと彩色陶器をはめこんだ小さい建物がある。 学校というよりは、小さな子どもの家、おとぎ話に出てくるおうちという感じである。かつて子どもたちの寄宿舎として建てられたもので、そこから木立の間を登っていくと菜園や果樹園が見え、その向こうにテラスが広がり、庭師の家や教師用の小さな別荘がありこれまた、おとぎ話に出てくる白い小さなお城という感じの建物がある。 1935年に、フレネが子どもたちと一諸に建てた最初の校舎で、今は一部がアトリエとして使われている。 さらに奥の松林の陰に、もうひとつ同じ様な校舎が見える。このテラスの中央には、パパフレネの木と呼ばれる巨大なカシの木があり、この木を中心に小さな建物や植物が雑然と点在しながら、何か不思議に自然の調和が感じられ、どこか険しい山を登り詰めたあと自然に公園にたどりついた時のような安らぎと休息感を覚える。


参考文献

『学校にもっと自由を 手がかりとしてのフレネ教育』 村上義雄著 朝日新聞社1984

『子どものしごと』 若狭蔵之助著  青木書店1988

『フレネ教育の誕生』 エリーズ・フレネ著/名和道子訳  現代書館1985


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