高等学校必履修科目未履修問題
出典: Jinkawiki
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概要
高等学校必履修科目未履修問題とは、大学受験における進学実績を向上させることを重視した高等学校が、学習指導要領では必履修だが大学受験には関係ない教科や科目を生徒に履修させなかったため、単位不足となって卒業が危ぶまれる生徒が多数いることが判明した問題である。多くの学校は「補習を受けさせる」ことで卒業を可能にすると発表したが、受験を目前に控えた状況で受験に関係ない科目の補習を長時間にわたって受けなければならないこの措置には、生徒側から怒りの声が上がった。不足分の単位を履修するためには、本来1単位につき35単位時間の補習が必要であるが、中には4科目10単位も履修していない生徒もいたため(350単位時間の補習が必要)、卒業できない生徒が出る恐れもあった。問題発覚当初、伊吹文明文部科学大臣は救済に慎重な姿勢を示していたが、与党の救済を求める声や安倍晋三首相の指示を受け、救済措置を取ると方針転換した。この救済処置は学校教育法施行規則の学習指導要領に違反しているため、超法規的措置といえる。
問題の原因
この問題の原因には様々なものがあるがその一つに、学習指導要領の問題がある。それは、学習指導要領が現在の教育現場と乖離(かいり)してはいないかということである。 2003年実施の学習指導要領では、総合的な学習の時間や、必履修教科として情報の導入がおこなわれた。週の授業時間は最低28時間と、ますます必履修教科・必履修科目に配当する時間が削減された。夏季休業日の削減や0時間目、7時間目の導入によって学力保証を行なっていた背景から、必履修教科・必履修科目の解釈を読み換える「必履修逃れ」が慢性化した。そもそも、生徒のほぼ全員が大学を目指す進学校もあれば、小・中学校の内容さえ十分でない生徒を抱える高校もあるという義務教育でないがゆえに多様性がある高校は一律の学習指導要領で対応するには限界があるという意見もある。 また、大学側は、学生集めのために入試を少数科目に絞っている。学習指導要領で必修に指定されていても、大学側が入試でその知識を問わなければ、必然的にその科目を軽視する方向に向かうという実態もあった。
= 参考文献
「高校未履修問題・生徒最優先の対策を望む」琉球新報 社説2006年10月28日
高校「世界史履修不足問題」はなぜ起きた?[1]
救済措置だけでは済まない? 高校の「未履修」問題[2]