いじめ

出典: Jinkawiki

2010年2月5日 (金) 11:52 の版; 最新版を表示
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目次

いじめの定義

平成17年度までは、「いじめ」とは、「 自分より弱い者に対して一方的に、 身体的・心理的な攻撃を継続的に加え、 相手が深刻な苦痛を感じているもの。なお、起こった場所は学校の内外を問わない。」としていた。平成18年度からは、「いじめ」とは、「当該児童生徒が、一定の人間関係のある者から、心理的・物理的な攻撃を受けたことにより、精神的な苦痛を感じているもの。」とした。なお、起こった場所は学校の内外を問わない。

*「一定の人間関係のある者」とは、学校の内外を問わず、例えば、同じ学校・学級や部活動の者、当該児童生徒が関わっている仲間や集団(グループ)など、当該児童生徒と何らかの人間関係のある者を指す。

*「物理的な攻撃」とは、身体的な攻撃のほか、金品をたかられたり、隠されたりすることなどを意味する。

いじめの「発生件数」を「認知件数」に改めた。


子どもをいじめから守るために

1つ目は、内容を整理しながらじっくり話を聞くということだ。わが子がいじめにあっていると知ると、動揺してしまうかもしれないが、まずは親自身が落ち着いて、じっくりと話を聞くことが大切だ。「何があったの?」と質問攻めにせずに、子どもの心に寄り添って話を聞くことが求められる。話を聞きながら、いつ、どこで、誰に、何をされ、どう感じたか、誰かに相談したかなどを整理し、時系列でノートなどにまとめていくようにする。子どもの話の裏付けとなるような証拠となるものがあれば保存しておくことも大切だ。

2つ目は、子どもの安全が最優先と考えることだ。何よりも子どもの命と心を優先し、安全を第一にした選択を考えることが大切だ。心と体が深く傷つけられているなら、場合によって命をすり減らしてまで、学校に行くことがないと子どもに話すことも必要だろう。ただ、そのためには、学歴や将来、さらには世間体より、子どもの命が大切であると、親自身が覚悟を決めなければならない。いじめによって子どもの生死が分かれた例は紙一重の差でしかないという。明確な違いはないけれど、あえて1つ挙げるならば、自殺を免れた子の親は、ときに世間から批判を受けるほど、なりふり構わず必死で子どもを守っている例が多いそうだ。

3つ目は、学校や地域で見方を見つけることだ。学校の先生、保護者など学校を取り巻く人と連携をし、協力を求めていくようにする。日頃から、何かあったときに相談できる関係を地域に築いていくことも心がけておくことも大切だ。学校で協力してくれる友人や、保健の先生など子ども自身の味方になってくれる人がいたらなお良いだろう。もし、学校がことを隠したり、誠実な対応が期待できないような場合は、納得がいくまで説明を求めていく覚悟も必要だ。

4つ目は、見方がいなくても一人で悩まないことだ。学校の中に協力者がいないときや、対応に納得ができないときは、学校の外に相談をしにいく。ただし、それが学校との新たなる摩擦になることもあるので、行動は慎重に、が鉄則だ。行政の相談室やいじめ問題に取り組むNPOなど数多くあるが、相談に乗った担当者によって対応が違ったり、納得のいく答えが得られないこともあるものだ。そういったときは、複数とコンタクトを取っていくと良いだろう。

5つ目は、継続して見守っていくことだ。親や教師などの大人が介入することで、一時的にはいじめや暴力が落ち着いても、その後の状況を注意深く見守り続ける。いじめは、静まった頃に再発することが多いのも特徴なのだ。内容はもっとエスカレートし、隠そうとする行動も巧妙になり、問題がさらに深刻になっていく。また、いじめがなくなったあとでも、いじめられた子どもの心の傷は、周囲が想像する以上に大きいという。対人関係に自信がなくなったり、拒食症、不登校、引きこもり、自傷行為などに発展することもあるそうだ。いじめがなくなったからといって安心せず、子どものことを見守っていくことが大切である。


いじめ対策10カ条

①いじめは被害者の心と身体を深く傷つけ、時には命さえ奪う、重大な人権侵害であると認識する。

②対策はスピードを要する。

③常に最悪の事態に備える。被害者や告発者の安全を第一に。

④表面に見えているのはごく一部であることが多い。

⑤いじめは被害者の身になって考える。

⑥いじめ対策の基本は加害者対策。

⑦いじめは力では解決しない。子どもとの信頼関係を大切に。

⑧いじめは大人が知ってからの方がむしろ危ない。

⑨解決したからといって気を抜かない。再発しやすい。

⑩いじめは教師・生徒・保護者・地域の複数の目、連携で解決させる。


ピア・サポート活動

この活動は、不安や悩みをかかえて援助を必要としている子どもたちに対して、援助の方法を学んだ仲間の生徒が支援するというもの。カナダやアメリカなどの諸外国で生まれた活動で、対象も学校の子どもたちだけではなく、大学生や地域の人々、会社、高齢者、障害者など様々な分野で、支援の方法を学んだ人々が、困っている仲間を支援する幅広い活動を展開している。日本の学校でピア活動が注目されるようになったきっかけは、いじめの深刻化だった。平成7年、文部省は、臨床心理士等心の問題の専門家を学校に導入する新しい事業として、画期的な「スクールカウンセラー活用調査研究委託事業」を開始した。翌8年、主として学校現場で教育相談の活動に従事していた人々によって構成されている日本学校教育相談学会では、有志が先進諸国のスクールカウンセリングの実績を学ぶための海外研修を始め、今日まで6回の海外研修を行ってきた。その研修で、ニューヨーク周辺の学校訪問を行った際初めて子どもたちのピア・サポーターと交流、子どもたちの仲間を支えるという優れた活動を知り、日本の子どもたちにも十分出来る活動と判断した。日本の学校に適したピア・サポート活動の創造を目指し研修・研究に努め、各地でその取り組みが進められるようになってきた。

ピア・サポート活動は、学校をあげての新しい活動になることから、活動のねらいや意義、その効果、さらに指導にあたる担当教員の選出、サポーターをどのように選ぶかなど、学校の教育活動全般に関わるため、管理職を含めた全教員の共通理解が不可欠だ。新しい事業は先生方にとっては大変な負担になることもあり、往々にして「ピア・サポートの考え方の重要性は分かった。しかし、誰がやるのか」「「どの時間を使って子どもたちのトレーニングをやるのか」など、実際の問題になるとすんなりいかないのが学校の現状らしい。しかし、子どもたちの現状を打破し、いじめや不登校の予防も含めて、子どもたちの持つ潜在的な「人の気持ちがわかる人間になりたい」「人の役に立つ人間になりたい」「人に親切にしたい」という心を、具体的な形で実践する一つの手立てとして、ピア・サポートの活動を学校の教育活動に生かしていくことは重要なことと考えられている。

カナダやアメリカなどでは、ピア・サポーターのためのトレーニングにはかなりの時間(約40時間)を費やしている。しかしながら、日本でそんなに多くの時間をとることは難しく、とれても10~15時間程度だそうだ。トレーニングの内容としては、①リレーションづくり(お互いを知る)②自己理解・他者理解 ③かかわり技法 ④傾聴技法 ⑤質問技法 ⑥感情に反映する技法 ⑦問題解決の技法 ⑧個人プランニング ⑨守秘義務と限界 ⑩サポートチームの運営 ⑪活動の評価 である。トレーニングは楽しく行い、指導者がモデルを演じてから生徒に体験させること、演習のつど生徒の感想を聞き(振り返り)、生徒の新しい体験や感じたことを表現させることが特に大切になっている。


参考文献

文部科学省ホームページ http://www.mext.go.jp/

「学校でのピア・サポートのすべて」 森川澄男著 

「あなたは子どもの心と命を守れますか!」 武田さち子著


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