ラムサール条約2

出典: Jinkawiki

2010年2月6日 (土) 09:41 の版; 最新版を表示
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1971年にイランのラムサールという小さな町に18カ国が参加して開かれた国際会議で採択されたことから、町の名前をとって「ラムサール条約」と通称されている、世界で初めての地球環境保護条約。正式には、「特に水鳥の生息地として重要な湿地に関する条約」という。広範な湿地の国際的保護を目的としている。

発端

 条約成立のきっかけは、ヨーロッパの野鳥保護グループの水鳥保護のネットワークづくりの提案から発展したものと言われている。ヨーロッパは日本と違い陸続きであり、川や湖沼が多くの国で国境線になっているところが多いため、渡り鳥の保護のためにはどうしても国際条約が必要だった。条約の前文には、湿地が水の循環を調整するものであること、湿地特有の動植物、特に水鳥の生息地として生態学的な機能を有すること、経済上・文化上・科学上・及びレクレーション上大きな価値を有すること、湿地の喪失が取り返しのつかないものであることなどが確認され、国際的な保護の必要性が強調されている。こうした目的や必要性に合致する限り、広範な湿地が保護の対象となる。 定義

 条約で保護しようとする湿地は幅広い定義を持っており、具体的には、沼沢地、湿原、泥炭地、水域、低潮時における水深が6mを超えない海域などのことであり、天然のものであるか人工のものであるか、永続的なものであるか一時的なものであるか、水が滞っているか流れているか、淡水であるか汽水であるかなどは問わないとされている。干潟・水田・マングローブ・サンゴ礁なども含まれる。 日本とラムサール条約

  日本は1980年6月17日に加入書を寄託機関たるユネスコに寄託し、同年10月17日に日本について効力発生。条約加入の際に「釧路湿原」を登録して以降、締約国会議が開催されるごとに、国内の湿地を条約湿地として指定し、登録湿地数を着実に伸ばしてきた。2002年の第8回締約国会議の時点で、日本の条約湿地は13か所となった。その後、日本は条約湿地登録に向けた動きを大きく加速させた。きっかけとなったのは、2005年までに条約湿地数を少なくとも2,000か所にするという第7回締約国会議(1999年)決議である。この決議を受けて、環境省が中心となり、日本の重要な湿地のリストである「日本の重要湿地500」の中から専門家による検討を経て候補地を選定し、自治体等との調整を行った結果、2005年10月に新たに20湿地が条約湿地として指定され、同年11月8日にその全てが同条約の登録簿に掲載された。2008年には新たに4湿地を登録したことにより、日本の条約湿地数は合計で37か所となった。  日本は、従来は水鳥の生息地を主な対象として登録を行ってきたが、今回の登録に際しては日本を代表する多様なタイプの湿地を登録するとの方針のもと、マングローブ林、サンゴ礁、地下水系、さらには水田を含む沼地、アカウミガメの産卵地などこれまであまり登録されてこなかった形態の湿地を条約湿地に指定した。このような日本の取組に対する条約事務局及び他の締約国からの評価は高い。 締約国会議で議論されるテーマの範囲は近年特に拡大している。2002年の第8回締約国会議では、生物多様性条約や気候変動枠組条約等の多国間環境条約、環境と貿易、文化など幅広いテーマに及ぶ議論が行われ、過去最多となる46本に上る決議が採択された。また、2005年11月に開催された第9回締約国会議では、2004年末から2005年を象徴する自然災害、貧困削減、鳥インフルエンザなどに関する議論が行われ、25本の決議が採択され、2008年10月から11月にかけて開催された第10回締約国会議では、気候変動、水問題等も含む、合計32本の決議が採択された。 一方で、議論の対象となるテーマの拡大に伴い、締約国の利害が対立し、合意形成に大幅な時間を要したり、決議の採択時に締約国が留保を付する事態が生じている。これを受けて、決議の起草過程の効率化や透明化、決議の実効性の確保、締約国会議の効率的運営等が新たな課題として認識されてきている。第8回締約国会議の決議を受けて、第9回締約国会議においては一定の改善が見られ、第10回締約国会議では日本より引き続き改善を進めるよう求めた。また、このような課題に対する取組をさらに進めていくため、過去の決議を整理していくことが確認された。 第9回締約国会議において、わが国より提案した「ラムサール条約の効果的な履行に地域フォーラムが果たす重要性」に関する決議が採択された。また、わが国が豪州と共同で提案した「東アジア・東南アジア・オーストラリア地域における渡り性水鳥の生息地の保全と持続的な利用に関するWSSDタイプ2パートナーシップ」を含む、「ラムサール条約の枠組みにおける地域イニシアティブ」に関する決議が採択された。 第10回締約国会議において、日本と韓国が共同提案した「湿地システムとしての水田における生物多様性の向上」に関する決議が採択された。

現在 2009年4月時点で締約国数159カ国、登録湿地数1838か所、登録湿地総面積173,359,584ヘクタールとなっている この条約の実施について検討し及びこの条約の実施を促進するため締約国会議を行うことが定められている。具体的には、提出された様々な決議案をもとに、条約事務局や締約国などが同条約の枠組の中で何をすることができ、また何をすべきかを議論し、決議や勧告を採択している。

参考文献 ・ラムサール条約と日本の湿地 山下弘文 大学図書 ・外務省 http://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/kankyo/jyoyaku/rmsl.html


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