言語障害

出典: Jinkawiki

2010年2月8日 (月) 17:10 の版; 最新版を表示
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目次

言語障害とは

言語情報の伝達及び処理過程における様々な障害を包括する広範な概念である。一般的には、言語の受容から表出に至るまでのいずれかのレベルにおいて障害がある状態であり、その実態は複雑多岐にわたっている。言語機能の成立にかかわる要素は広範で、運動機能や思考、社会性の発達などとのかかわりも深く、言語障害を単一の機能の障害として定義することは困難である。

言語障害の種類

(1) 構音障害

発音は口唇や舌を適切なタイミングで動かすことにより発音されるが、その部位やタイミングがずれていたり、構音器官の形態に異常がある、脳からの正しい運動の指令が伝達されない場合などに発音の誤りが生じる。このように主な構音障害には、3つの種類がある。

機能性構音障害

構音器官の形態上の問題がなく、神経学的な原因も認められない構音障害を機能性構音障害という。「先生」を「チェンチェイ」、「自動車」を「ドーシャ」、「時計」を「トテー」と発音するのが例である。

器質性構音障害

発語器官の構造上の問題に起因する構音障害を器質性構音障害と呼び、典型的には口蓋裂、口唇裂がある。裂は胎生期初期に起こり、500から750人の乳児に一人の割合で発生する。口蓋裂の場合、呼気が鼻腔に漏れることから、母音が鼻音化し、子音も不明瞭になるなど、発話が全体的に不明瞭になる。

運動障害性構音障害

発語器官の麻痺など、神経学的な原因による運動性の障害がある場合、運動障害性構音障害という。脳性マヒの発話の不明瞭さはこれにあたる。

(2) 吃音

吃音は流暢性の障害といわれ、吃音の言語症状として、

・音節の繰り返し(「く、く、くるま」)

・音節の引きのばし(「くーるま」)

・音がつまるブロック(「これ、k・・・くるま」)

などが主なものであり、話し始めの音や単語の語頭音が影響を受けやすい。また、初期の音節の単純な繰り返しから、引きのばしやブロックへと進展するというように、発語の困難が増す場合も少なくない。

(3) 言語発達遅滞

通常の言語発達の道筋から逸脱したり発達の速度が遅い場合、言語発達遅滞という。どの程度の遅れがあれば言語発達遅滞とするかについては明確な基準が存在するわけではない。一口にことばの遅れといっても、理解語彙や表出語彙が少ないといった語彙面の課題、二語文や三語文などの語連鎖を形成することが難しい、「が」「を」などの格助詞を正しく使うことができないといった統語(文法)面の課題など、子どもによってさまざまな困難のタイプがある。あるいは、語彙や統語面での遅れは顕著でなくても、出来事を順序立てて話したり、相手に伝わるように論理的に説明することが苦手であることも多い。このような困難から、学校場面で口頭での発表や作文を不得意とすることにもつながる。

言語障害の心理・行動特性

構音障害は発音の明瞭度に影響を与えるため、コミュニケーションに支障を来すことがある。しかし、構音の誤りがもたらすものは意志疎通の問題だけではない。他児からの指摘やからかいを受けて自分の誤構音を意識するようになると発話の意欲を失ったり、あるいは通常と異なる発音がいじめなどのきっかけになる場合もある。 吃音は言語的症状であるが、多くの場合、心理面や身体面にも問題が見られるのが特徴である。心理面については、幼児の初期の吃音では自分の発音に対して意識しておらず、心理的には安定している。しかし、次第にうまく話せないと意識化されるようになり、発語の困難が増すに従って、話をすることへの不安が生じるようにもなってくる。構音障害のように、どのように工夫しても正しく言えない障害と異なり、予期せず非流暢に見舞われる吃音では常に不安を抱えながら話すことになる。2次的な身体的症状としては、ことばを無理に出そうと努力するときに身体の緊張や、顔をこわばらせたり首を振るなど吃音に随伴的な運動が生じることがある。なんとか非流暢さから抜け出そうとさまざまな努力や工夫を凝らす結果として、身体の緊張や顔をしかめるなどの症状に至ると考えられる。これも吃音が進展するにともなって変化していく。このように、吃音には発話の流暢さの形成だけでなく、心理面のサポートが不可欠である。 言語発達遅滞は幼児期に気づかれることが多く、保護者による主訴としては「言いたいことがことばで表現できない」「会話のキャッチボールになりにくい」などが一般的である。特異的言語発達障害のように非言語的認知が比較的良好な場合もあるが、全般的な知的発達の遅れを伴うことも多い。同年齢の子どもと友達関係を築きにくいという課題を抱えたり、学齢期になっても十分な理解・表現力が育たない場合、学習面での遅れも生じやすい。単に教科としての国語だけでなく、言語的なやりとりや他教科にも困難を生じることが多く、学校適応に向けたサポートが必要である。er

参考文献

特別支援教育の基礎知識 橋本創一 霜田浩信 林安紀子 池田一成 小林巌 大伴潔 菅野敦 明治図書 2006年

言語発達とその支援 岩立志津夫 小椋たみ子 ミネルヴァ書房 2002年


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