感覚運動期
出典: Jinkawiki
主に感覚と運動器官の発達を通して外界を理解し、また適応的な行動をとる働きのことで、およそ生後2年までの子どもにみられるものである。
ポルトマンは、ヒトの新生児を評価して次のように述べた。 「ヒトは動物界で最も進化した種でありながら近縁のサルとは大きく異なり、出生直後は無防備、無能力で感覚運動能力も貧困である。」
ピアジェは、「この重要な最初の時期の間に、乳幼児の動作は、完全に自他未分化な生まれたばかりの反射水準から、彼の直接の環境に相応した比較的すじの通った感覚運動的行為の組織化へと進んでいく。この組織はしかし、事物の象徴的操作よりむしろ事物への単純な知的運動的調整を意味するという点で、完全に実物的なものである。」と述べている。
前者に関しては、確かに自力で移動するには何ヶ月も要する手のかかる存在であり、生まれた瞬間から社会的な援助の不可欠な生物である。しかし、近年、その乳児が社会とかかわるために生まれて間もなく感覚運動機能を働かせ、一般に考えられていた以上に自らコミュニケーションして注意をひきつけている事実をさまざまな研究が証明している。
ピアジェの発達段階における感覚運動期
0~2歳の感覚運動期は乳児期に相当する。感覚と運動の関係を学び、反射的な行動や探索活動が盛ん。
生後1ヶ月頃までの新生児の行動は、その大半が反射的な感覚支配的行動によって占められているが、刺激や変化を求めて積極的に外界に働きかけを行う。そうした周囲の環境との関わりの中で、外界の事物についての知識を獲得し、それらに対して簡単な予測的行動がとれるようになり、感覚支配的な行動から新しい行動へと移行していく。この時期に獲得される認知機能として、おもに循環反応、対象物の永続性、シンボル機能があげられる。
・循環反応…ある環境への働きかけを繰り返し行うことをいう。「吸う」「たたく」といった感覚運動的活動の反復を表すもので、ある欲求のもとに既存のシェマを修正・調節する働きを持つものである。第1次循環反応は、生後3、4ヶ月までで、「指吸い」のように自分の身体に限定されたものであり、第2次循環反応は、シーツを引っ張るというように、物との関係において目と手の協応が成立するようになる。生後1歳頃からの第3次循環反応は、物を落とす場合でも、試行錯誤的に、音の響きを楽しむというように、能動的・実験的関わりを見せるようになる。
・対象物の永続性…生後1ヶ月頃は、事物が物の陰に隠れるとそれがもはやそこには存在しないととらえてしまうが、感覚運動期の終わり頃には、物に隠れても事物はその陰に存在するということがわかるようになる。
・シンボル機能…目の前に存在しない物を思い浮かべることができるようになる働きのこと。
このような認知の発達は、乳児と環境の事物との相互作用だけによって促されるわけではなく、乳児と養育者あるいは周囲の人々との相互作用を通して得る経験と学習によっても支えられている。