デンマークの教育2
出典: Jinkawiki
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デンマークの教育制度
デンマークでは、7歳から16歳の児童の就学が義務づけられており、約9割の児童が、初等教育と下級中等教育を一緒にした公的教育システム「フォルクスコール」に進む。9年間の教育の後、半数以上は卒業するが、残りの生徒は、任意で第10学年へ進級する。卒業後は約半数が職業校(工業か商業)、45%が大学進学を目的とした一般的な上級中等教育へ進み、約5%は進学をせずに就職する。 一般的な上級中等教育の中で、日本の普通科高校に当たるのが「ギムナシウム」である。「ギムナシウム」は3年間の課程であり、「フォルクスコール」での9年間または10年間の教育の終了直後進学する。カリキュラムは、語学コースと数学コースの2つに分けられる。大学進学準備をする学生と同様の一般教養が受けられることを目的に設置された。 デンマークには、約150の「ギムナシウム」があるが、その大多数は県によって運営されている。また私立学校はそのうち約20校で、これには国が予算の80~85%を供出している。 もう1つの一般的な上級中等教育である「HF」は、一度は就職などで一般的な進学コースから外れたものの、再度大学等で高等教育を受けようとする成人および若者のために、1960年代半ばに誕生したシステムである。もちろん、希望すれば「フォルクスコール」の第10学年終了直後に、進学することもできる。「HF」は、全日制であれば2年間で終了できるが、働きながら学ぶ場合などは、長い年月を単位を取得していくこともできる。
外国語教育
デンマークでは、外国語教育が初等教育段階から始まる。「フォルクスコール」において第4学年から第1外国語として英語の授業が始まり、第7学年より第2外国語として、ドイツ語またはフランス語を受講する。 「ギムナシウム」では、それを基礎として、外国語教育が継続され、「フォルクスコール」で履修してきた英語および第2外国語を履修し、その上で第3外国語を履修することとなる。言語としては、第2外国語で選択しなかったドイツ語かフランス語、あるいはイタリア語、日本語、スペイン語、ロシア語(数学コースは日本語を除く)の中から学校が定めたものである。各外国語の教育方法は、教育省によって定められており、例えば日本語の初級レベルでは、かなおよび250程度の漢字の取得を目標としている。
学校評議会
公立のすべての「ギムナシウム」や「HF」では、学校理事(School Governor)を選出し、その理事が学校評議会(School Board)を組織している。 学校評議会では、学校の運営に係る様々な事項の決定・承認を行う機能がある。これにより、教育行政に関わる教育省や県の事務当局、またその学校の教員だけではなく、実際に学校を利用している生徒や財政拠出する納税者、また知識人などが政策を検討し、その学校独自の教育施設を策定できる。 学校理事には、まずその学校代表として教員の代表2名、生徒の代表2名、そして事務担当者1名が選出される。この中で、教員の代表にその学校の学校長が選出される必要はなく、各組織の中の互選で決定される。次に、納税者代表として、その学校の属する県および市の議会の代表各2名が選出される。このほか「ギムナシウム」においては、生徒の保護者の代表3名が加わる。そのほかに、前述の学校理事が選出した、文化人代表および産業界代表を各1名、理事として迎え入れることもできる。 評議会の決定事項としては、学校定員、科目および学校休日・長期休業の設定がある。前に紹介した第3外国語選択科目への日本語の組み込みも、この評議会で決定されたものである。評議会の承認事項としては、学校運営に係る予算、規則の設定、外部団体と共同の事業実施や、営利活動の実施がある。予算については主要会計に限られるが、その中には、教員の給与も含まれており、評議会の承認なしに実施することはできない。
参考文献・参照文献
小島ブンゴード孝子著 『福祉の国は教育大国』 丸善ブックス