ナショナル・カリキュラム
出典: Jinkawiki
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イギリスでは,1988年教育改革法で,教育課程の国家基準として,ナショナルカリキュラムが導入された。
教育水準の向上,達成目標,達成度評価の基本的な枠組みである。
目次 |
ナショナルカリキュラム
①すべての子どもにとって,その学ぶ権利を明確に,不足なく,法律的に規定するもの
②教える内容を示し,学習の達成目標を設定し,その実行を評価するためもの
③学校で獲得すべき技術と知識の明確な共通理解の枠組み
④個々の学習ニーズを満たし,その地域の特徴を伸ばすためのもの
⑤子どもの学習を支援する人々にとっての学習の枠組み
ナショナルカリキュラムの目的
①学ぶ権利の保障
②学びの水準の維持
③学びの連続性と共通化の促進
④学校教育に対する公的理解の促進
ナショナルカリキュラムが適用される対象
・公立の学校
(私立の学校等は独自の教育課程による各学校は,ナショナルカリキュラムを手がかりに,独自の学校の教育課程を作成することになっている。)
イングランドにおけるナショナルカリキュラムについて
イングランドにおいては,資格と教育課程局(Qualifications and Curriculum Authority: QCA)が政府の付託によって「ナショナルカリキュラム」を作成している。ナシナルカリキュラム策定の手続きは,3年間で現行のカリキュラムを評価し,2年間で改訂作業を行う5年サイクルで実施されている)。
・小中学校等の教育課程の基準
ナショナルカリキュラムは,義務教育の対象である5歳から16歳までの子どもを対象としている。そして,5歳から16歳の子どもが学習する内容を4つ段階に分けて規定している。この段階がキーステージ(KS)1,KS2,KS3,KS4の4段階である。 ステージは,学年のブロックであり,KS1は,5歳から7歳で,2年間続くブロックである。その枠組みに示されている内容から,学校は教える内容を構成できる。学校は,学期ごと,学年ごとで,その内容を構成する。また,各教科を,別々に教えなければならないわけではなく,教科を統合して教えることも可能である。 ナショナルカリキュラムの各教科ごとでその達成目標が設定されている。これらの目標がどの程で度達成されたかが評価される。子どもの進み具合の評価と個々の子どものニーズに応じた教え方の工夫が可能となる仕組みである。
・ナショナルカリキュラムのエリア
①学習のプログラム(programmes of study)と②達成目標(attainment targets)及び水準(level)から構成される。 学習のプログラム(programmes of study)とは,各KSの各教科の内容と学習の進め方のことである。また,達成目標及び水準とは,達成目標は,各KSにおいて,到達すべき目標であり,8水準で記述されるものである。つまり,英語の「読み」は,14歳まで8つの水準があり,各ステージごとにその内容に取り組み,年齢に応じてその水準に到達することが求められる。
・キーステージ(KS)について
KSという概念は,内容を規定するものでなく,大まかな生活年齢による区分である。そこで期待される学習内容もあるが,内容を習得しなければ,ステージは進まないというわけではない。生活年齢とともにステージは進み,そのステージで,必要な内容を学習するという仕組である。その学習内容の配列に類似するものが,到達目標となる。生活年齢に応じてステージは進むが,学習する内容は,その子どもの実態に合わせて,必要なものを学習することが基本となっている。 原理的には,児童生徒は,同じ生活年齢の学級において,異なるレベルの学習を行うことになる。すなわち学習の進み具合や学力等に応じて,教育課程が分化(differentiation)していることになる。
・幼児教育のカリキュラム
幼稚園で使用されるカリキュラムとして,「基礎ステージ(Foundation Stage)」と呼ばれるものがある。すべての4歳の幼児(多くの場合には,3歳から)が学校教育を受けるシステムであり,義務教育のナショナルカリキュラム前に,基礎ステージ(KS1の前に基礎ステージ)があり,3歳から5歳を対象とした内容が規定されている。このカリキュラムに従うのは,幼稚園・準備学年(レセプション)学級,プレイグループ等である。これは,教科(subjects)の枠組みでなく,領域(areas)で構成されている。6領域で示されていて,①個人的,社会的,感情の成長,②コミュニケーション,言語及び読み書き,③数概念の発達,④知識と外界の理解,⑤運動,⑥創造的発達となっている。これらの領域について,遊びを通して,その力が伸びるように計画しなければならないこととされている。 評価については,ナショナルカリキュラムの各KSの終了段階ではその評価テストがあるが,この基礎ステージでは評価テストはない。しかしながら,KS1に進む前に,基本的評価(baseline assessment)が行われ,特別な教育的ニーズの有無が確認される。この評価は,テストでなく,また検査用具を使う評価でもない。日常的な遊びなどの活動において,教師により評価されるもので,子どもも保護者も評価されていることに気づかない場合が多い。
・学習の評価について
イギリスにおける児童生徒の学習の評価については,教師による通常の評価に加えて,全国的に統一された評価が行われている。これは,ステージの4段階において,各段階の終了時に,英語,算数,科学の教科において実施されている。この4段階の終了時というのは,2学年(7歳),6学年(11歳),9学年(14歳)である。この終了時の評価はQCAが評価基準にもとづいて作成する標準評価試験によって行われ,KS4の終了時については,中等教育一般証明書(GCSE)試験の試験委員会が作成する試験要目によって示される。
参考文献
・カリキュラム・ポリティックス ~現代の教育改革とナショナルカリキュラム~ マイケル・W・アップル ジェフ・ウィッティ 長尾彰夫 共著 東信堂
・イギリスにおける特殊教育の教育課程について www.nise.go.jp/kenshuka/josa/kankobutsu/pub_c/c-44_1/c-44_1_03_1.pdf
・現代外国語:英国ナショナルカリキュラム jpf.go.jp/j/japanese/survey/country/syllabus/pdf/sy_honyaku_7UK.pdf
(投稿者:TR)