フリースクール4
出典: Jinkawiki
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日本のフリースクールとは
「フリー」は「自由」と訳し、「スクール」は「学校」と訳す。「自由学校」と訳してもいろいろな捉え方がある。日本の教育事情をあまりよく知らない場合、「スクール」を「学校」と訳すと間違ったイメージを持ってしまう場合があるだろう。日本では、学校教育法第一条で、「学校」というものが規定されており、文部科学省や地方自治体の管轄下にある学校制度上の学校を「一条校」と言っているが、英会話スクールやスイミングスクールのようにスクールと名づけられる日本の教育施設は一条校ではない。インターナショナルスクールやフリースクールは、英会話や水泳を習う内容とは異にして、ある分野の習得ではなく、学校教育のように種々の幅広い学習や体験活動を通して、人間が全般的に育つことを対象にしているが「学校」ではない。だから、日本ではスクール≠学校という考え方を持つべきである。しかし、幅広い意味では学校なのであり、フリースクールと言う場合、学校と言う意味合いを含めた、制度上の学校システムに近い場で、そこで共に成長したいと思う仲間、成長をサポートする大人がいて、何らかの教育活動が日常的に行われていることをさす。「フリー」に関しても、捉え方が多様にある。自由に作った、教育内容が自由など様々である。これらの「自由」とは、政府・行政が何らかの法制度のもとで、全部か一部かは別としても税金を財源に設置した学校に対して、自由と表現されるのが一般的である。 フリースクールは、子どもを主体とすることで、教育内容の自由を作利出すことで会う。○○を○○のために教える、活動させるのではなく、こどもの興味・関心、意欲に依拠して作っていくものである。
フリースクールの歴史
20世紀初頭から第1次世界大戦後の時期に、主にヨーロッパにいくつものフリースクールが生まれた。この時期は、欧米社会の中で、国家による学校の制度化が進行し、定着していった時期でもあり、学校で子どもの心と体の管理が進んでいた。「子ども中心」を掲げた新教育運動がヨーロッパを中心に盛んになった。1911年にポーランドで、コルチャックが、1924年にイギリスのアレキサンダーがサマーヒルスクールを始めているが、ドイツのシュタイナーらがそれぞれの学校を始めたのもこの時期である。これらの地域は第2次世界大戦の戦場となったところだが、戦争で国家主義が高揚する中で、閉校に追い込まれることも少なくなかった。その後、アメリカではスプートニクショックなどがあり、ヨーロッパでも科学技術の振興に貢献しえる理工系のエリートの養成に力を入れた教育制度が強まり、そのことへの批判、公民運動、ベトナム反戦運動などの市民運動の流れから、多くのフリースクールは生まれてきた
日本のフリースクールの背景
1960年から1970年の高度経済成長は、豊かに見える日本を作り出す。また、高学歴社会を生み出し、少しでもよい学校に進学し、給料のよい会社に就職するのが夢とされるようになった。しかし、その一方で詰め込み教育が行われ、子供たちは進学塾に通い、学校と塾での勉強ばかり生活によって遊ぶ時間が奪われ、子供たちにストレス、自己を抑圧することになった。それに伴って、登校拒否の児童が急増し始めた。これは、自分らしくいることを封じられ、苦しさ、ストレス、不信感を感じ、学校に行かれないというものだ。また、いじめや体罰の日常化が、学校への恐怖感を覚えさせ、登校拒否につながった。このような現状を抱える中で、新聞記者であった大沼安史さんがアメリカのフリースクールを取材して『教育に強制はいらない』を出版したところ、大きな反響があり日本フリースクール研究会が発足した。アメリカのフリースクールの校長先生との交流をしたり、欧米のフリースクールに見学に行ったり、ボランティアスタッフを経験したりする個人が日本で増えてきた。そしって、その人たちがその教育理念に共鳴し、日本にもとフリースクールを始める人たちが現れたのである。
新しい教育のかたち、フリースクール
日本のフリースクールは、1980年半ばから、芽を出し不登校にリアリティーをもって発展してきた。日本では、学校は政府が作ったものとの意識も強く、学校中心の価値観に国民は縛られており、教育は権利であって、市民がいろいろ作り出してよいという発想は微弱である。海外の情報が入ってきても、それが現実となったのは不登校の子どもが増加という実態が起こってからということを忘れてはいけない。また、子ども達の行動による意思表示があって日本の教育は文部省下の学校のみ、という枠組みが崩れ。新しい教育のあり方が芽を出してきたのである。 しかし、日本のフリースクールは、欧米とは違い、学校教育法第一条に規定している学校に籍をおきつつ、フリースクールに通い、進級・卒業は在籍学校で行うというように、二重に籍がある形になっている。現在の教育基本法では、学校教育以外の様々な教育は視野なく、法的にも位置づけられていない。進路については、在籍中学校を卒業しているのでその後の進学も可能である。今の社会において、大学卒業は、就職へのパスポートとは言えず、むしろ個性や創造性を持つ人材が求められている時代であり、フリースクールへの期待も高まってきているといえる。
フリースクールの運営
日本のフリースクールに、税金からの公的支出はまったくない。親達は納税の義務は果たしているが、学校教育を支える費用として全生徒分支払われている。それに対し子どもが嫌がって通学しない学校に金を払い、遠くても喜んで行っているフリースクールには1円のお金も出ないばかりか、必要経費を支払わなくてはならない。支払う額はそれぞれであるが、どこのフリースクールも経済的に困難であり、立ち上げて1年2年で姿を消すこともある。ここ最近は、NPO法人として活動していることが多い。
フリースクールの理念(NPO法人東京シュ―レ)
・ 居場所であること ・ やりたいことを大切にする ・ 自由を尊重する ・ 子供たちによる自治個の尊重
≪参考文献≫
- フリースクールとは何か、東京シューレ編、教育史料出版会
- http://www.shure.or.jp