フォーカシング

出典: Jinkawiki

2010年2月12日 (金) 11:58 の版; 最新版を表示
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フォーカシングは、来談者中心療法の学派に属するジェンドリンが開発したカウンセリングの技法、自己対話法である。フォーカシングが試みようとしているのは、成功した患者のしていることを、それ以外の人にも適用しようということである。


では、成功した患者たちはいったいどんなことをしていたのか。ジェンドリンによれば、それは今ここで自分の感じ「フェルトセンス」に耳を傾け、それにぴったりくる言葉を探すことである、という。つまり、これまで頭の中で何度も繰り返してきた陳腐な言葉で自分を分析、説得するのではなく、自分の内側から生まれてきた小さな声にじっと聴き入り、言葉にする、そういう意味での、いわば「自分との対話」をやっていたのである。本当にぴったりくる言葉が見つかると「ああ、これだったんだ」という、非常にすっきりした、全身的な解放感がやってくる。ジェンドリンはこの身体的解放感とともに生まれる感覚の変化を「フェルトシフト」と呼んだ。どれだけ精密な性格の分析をカウンセラーが提供したとしても、クライアントの中でこのフェルトシフトが起こらなければパーソナリティーの変化は生まれない。


フォーカシングを支えているのが「体験過程論」である。現代のパーソナリティ理論はいずれも、パーソナリティの変化をうまく説明できないでいる。なぜならパーソナリティそのものが、変化に抵抗するものとして定義されているからである。自己理論を例に挙げれば、その鍵概念である、「自己概念」は「自己概念と一致しない経験は排除する」というメカニズムが働くことによって、自己概念それ自体の首尾一貫性を守ろうとする形で定義されている。パーソナリティの変化は定義上不可能になる。この問題を発見し、解こうとしたのがジェンドリンの体験過程論であり、その臨床応用としてのフォーカシングであった。フォーカシングは、フェルトセンス(体験過程の主観的側面)という、輪郭のはっきりしない、曖昧で漠然とした「自分」との対話であるがゆえに、論理だけではたどり着けない、新しい自分に出会うことを可能にする。


参考文献

心理学検定 基本キーワード  実務教育出版


  人間科学大事典

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