チャイルドマインダー
出典: Jinkawiki
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1、 チャイルドマインダーとは チャイルドマインダーとはイギリスにおいて百年以上の歴史をもつ家庭的保育の一形態である。アラン・ディアリングは次のように述べている。 チャイルドマインダーは地方自治体のソーシャルワーク部門で登録されねばならない。彼らが提供するケアに対しては賃金を受け取る。チャイルドマインディングは自宅にいない両親や後見人に代わって子どもたちの世話をする活動である。子どものケアのできない仕事に従事しているシングルペアレントや両親によって利用されている。今までチャイルドマインダーの制度は伝統的にととのっていなかったが八歳以下の子どもたちに一日二時間以上のケアをチャイルドマインダー自身の自宅で提供することが適用されている。
2、チャイルドマインダーの歴史
1872年→児童生命保護法…ベビーファーミングのスキャンダルに対応するもの。
1948年→保育所およびチャイルドマインダー条例…
チャイルドマインダーに登録を義務付けるもの。
1968年→改正法…チャイルドマインダーを保育所と同一の基準で管理するもの。
1989年→子ども法…
チャイルドマインダーを子ども法の一躍を担う子どもケアとして位置づけるもの。
歴史からいえること→イギリスの家庭外保育はチャイルドマインダーに依存している。 イギリスは家庭外保育を一貫してチャイルドマインダーのような家庭的保育で代替してきた。家族という私的な領域への国家の介入をよしとしない文化のため家庭内保育の中で虐待等子どもをめぐるスキャンダルでもあり、そのこともありシステムとしての評価も恵まれなかった。
3、チャイルドマインダーの問題点 ①制度を通して行われるという信念…保育学級の制度化と比べてもチャイルドマインダー は制度外の世界にあり制度化に対して盲目であった。 ②専門性の信念…保母や幼稚園教諭が専門性の獲得に2~3年の訓練コースが必要であり コストがかかるのに対してチャイルドマインダーは特に養成過程はないと専門性への関心が希薄である。 ③中流階級の価値観が反映していること…多くの中流階級の子どもたちが私的なディケアシステムのオーペアの世話を受けていた。労働者階級の母親は緊急時を除いて外で働くことは認められなかった。他にも第二次世界大戦後、保育所が減少してきたとは逆に外で働く女性の数は増大してきた。これにより保育サービスと保育需要に大きなギャップが生じてきた。そのためこのギャップを補完する役割を登録している人だけでなく未登録のチャイルドマインダーが果たしてきた。
4、1989年の子ども法以降のチャイルドマインダー 1977年には「全国チャイルドマインディング協会」(NCMA)の設立や子ども法の成立以降チャイルドマインダーはよくなっている。チャイルドマインダーとして登録するということは子ども法の枠組みの中での登録を意味し、地方自治体における資格となったため質の向上が促進された。登録にあたっては安全、遊びや学習活動の提供、体罰の禁止、子どもの親との業務の説明、子どもケアにおける機会の平等の重要性、登録申請の手続き、地方自治体における業務の支援・向上を助けるワーカーの存在などを理解しておくことが前提となった。チャイルドマインダーという仕事の特徴をNCMAは次のように説明した。 ① チャイルドマインディングはれっきとした職業である。 ② 技術と知識が必要とされ責任の重い仕事である。 ③ 計画的なアプローチが要請される。 ④ 親と子どもの保育を分担し、かつ専門的なアプローチが要請される。 ⑤ 楽しく、そしてやりがいのある仕事である。 ⑥ 自宅で仕事をすることからくる家族に与える影響を理解しておく必要がある。 チャイルドマインダーに登録するということは専門職として登録することを意味するため登録前の研修や登録後の国家職業資格への連動などがチャイルドマインダーの資質の向上を促している。イギリスにおいて家族は私的な領域として位置つけられてきたため家族に国家が介入することは控えるべきであるという考え方がある。しかし、イギリスのチャイルドマインダーの歴史でもわかるようにイギリスの家庭外保育は一貫して家庭的保育としてチャイルドマインダーを指向している。そしてこの制度は質的に向上される努力が続けられている。世界の国々で家族機能が弱くなっているなか国家がどのように家族政策を展開していくかを見ると、家族機能の外部化、社会化を施設保育によって代替・補完する国家に比べて、イギリスは「親の自己実現」と「保育者との安定した関係」を保障する子どもの視点を折り合わせることの頑なである。家庭外保育が必要とされる場合親の都合が優先される。親の利害と子どもの利害を折り合わす視点を持つことによって、ただ安全にあずかってもらえばよいという感覚からより保育の質に対する感受性を自覚していくことが重要である。
5、「エスク」の家庭保育 エスクとは「子育て」という実績を持つ母親が、仕事などの理由で子どもと一緒にいられない人に代わって自分の家庭で子育てをすると母親同士の相互協力体制が地域の中でつくられないものかと1973年に誕生したイギリスのチャイルドマインダー的な団体である。 この団体は組織の運営を公平、円滑にするために会員制をとっている。預かる側R会員、預ける側D会員、そのお世話役としてのC会員および協賛者として運営を支援してくださるS会員からなりこの4者のコーディネートを本部が担当している。1990年2月現在R会員867人、D会員7800人。預かる側3に対し、預ける側7の割合である。実際に現在子どもを預かっているのは450人である。預ける側の会員の国籍はさまざまで支部は日本の中で12箇所ある。預かる側の会員は特に資格の有無は問わないが次の4点を基本としている。①自宅を保育活動の場とする。(特例として出張保育もする)②子育ての実績がある。③健全で安定した家庭を営んでいる。④家庭ぐるみ、子どもを家庭の一員として保育できる。 人柄のよいお母さんであればだれでもできるが健全な家庭を選んでいる。会員になるとエスク独自の個別研修を受け活動を開始する。預ける側に制限はなく国籍、年齢、時間、休日、居住地、病時、障害児すべてOKである。利用の仕方は保育所のように毎日もあるが9割が不定期の保育である。費用は生活実費プラス少々の謝礼でお世話料の9割を預かると人がもらい、残り1割が会の活動資金となる。今の子育て経験のある母親が家庭で子どもを預かる民間ネットワークとして機能している。
参考文献:『現代のエスプリ401』「畠中宗一 チャイルドマインダー」 名木純子 1991 「日本のチャイルドマインダーたち 「エスク」の家庭保育」