過剰適応
出典: Jinkawiki
2010年2月13日 (土) 09:15 の版; 最新版を表示
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過剰適応の例として「メランコリー親和型」を取り上げて説明する。メランコリー親和型(Typus melancholicus)というのは、うつ病に陥りやすい、すなわちうつ病に親和性をもったパーソナリティのことで、テレンバッハ(H.Tellenbach)によって呈示されたものだが、このパーソナリティの特徴は、社会的適応の良好さにある。仕事熱心で責任感が強く、着実に任務を遂行し、また義理人情にも厚く、他人へのきめ細かな気遣いも怠らない。対人関係も円滑で、人から信頼され、どこといって非難されるところのない、いわば社会的優等生といってよい人物像である。しかし、この良好な外的適応性は、内的適応性を犠牲にすることによって成り立っている。すなわち、クラウス(A.Kraus)が「役割との過剰な同一化」とよぶように、彼らは社会的役割の遂行を何よりも優先させる生き方によって、知らず知らずのうちに本来の自己を見失うという事態に至ってしまう。メランコリー親和型に見られるこの過剰なまでの現実適応のあり方を、テレンバッハは「病的正常性」という印象的な表現でよんでいる。
参考文献 入門人格心理学 加藤義明 中里至正 編著 1989