エンリケ航海王子

出典: Jinkawiki

2010年2月13日 (土) 11:05 の版; 最新版を表示
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エンリケ航海王子

ポルトガルの王子であり、自らは航海しなかったが、大航海時代の初期における重要人物の1人である。アヴィシュ王朝を開いたジョアン1世の子であり、後に初代のヴィゼウ公となる。 名は単に「エンリケ(王子)」だが、歴史史料などにおいても、「航海王子」の称とともに呼ばれていることが常である。英語圏ではPrince Henry the Navigatorと通称されており、その影響により日本においても英語風に「ヘンリー航海王子」と記述されることもある。

概要

1394年、ポルトガルのポルトにおいて、エンリケはジョアン1世と、ランカスター公ジョン・オブ・ゴーントの娘であるフィリパとの間に生まれた。ジョアン1世の子としては第5子であり三男にあたる。 その生涯において、探検事業家、パトロンとして航海者たちを援助するとともに指導し、それまで未知の領域だったアフリカ西岸を踏破させるなどしたことで、大航海時代の幕を開いた。

1420年5月25日、エンリケはテンプル騎士団の後継であるキリスト騎士団の指導者となり、その死に到るまでその地位にあるとともに、莫大な資産を保有する騎士団による援助によって、自らの探検事業の強力な資金源とした。このため、特に1440年代までにかけ、エンリケは大西洋への進出に並々ならぬ情熱を傾けると同時に、騎士団における重責についてもおろそかにはせず、以後はキリスト教を熱烈に信奉する。

略歴

セウタ遠征 1414年、21歳となったエンリケは、父ジョアン1世とともに、ジブラルタル海峡に接しイスラーム勢力が立てこもる都市、アフリカ北岸にあるセウタの攻略戦に参加する。翌年8月にはセウタの攻略が完了し、ポルトガルはアフリカ一帯への進出を始める準備が整うこととなった。同時に、この出征において武功を立てたエンリケは騎士に叙され、ジョアン1世によって新たに設けられたヴィゼウ公の位に就いた。 この間、イスラムの地にあって、プレスター・ジョン(葡:プレステ・ジョアン)の伝説を聞き、サハラ砂漠を越えるキャラバンなどイスラム貿易の実態を垣間見るなどしたことで、エンリケはイスラム商人を介することなく金と香辛料を求める活路を見出し、アフリカ西岸航路の開拓、ひいてはインド航路開拓への野望を抱くようになった、とされる。

王子の村

正確な年は定かでなく1416年であるとされているが、ポルトガルの最南西端にあるサン・ヴィセンテ岬の、今日ではサグレスと呼ばれる一帯に、「王子の村」を建設した、とされる。 この村に、造船所、気象台、航海術や地図製作術を学ぶ学校などを建設し、各種の航海術や地図製作技術に大きな発展をもたらした。しかし上記のような話が伝えられているが、この王子の村については裏付けが取れていない部分も多く、存在したこと自体は否定されていないものの、幾つかの逸話については後世の創作ではないかとの疑いもあり、特に航海学校の存在については後世の創作であるとの見方が今日では有力となっている。

アフリカ西岸の探検

1419年、前年12月にエンリケが派遣したジョアン・ゴンサルヴェス・ザルコとトリスタン・ヴァス・テイシェイラによって、マデイラ諸島が「発見」され、翌年から植民地化が始められた。これはエンリケの事業にとって、最初の成果となるものである。

1437年、周囲の反対を押し切って北アフリカのタンジールに派兵するが、イスラム勢力に完敗し、失敗に終った。この時、弟であるフェルナンド王子が捕らえられ、王子は40歳で死去するまでの6年間を捕虜としてその地で送ることとなるなどし、この失敗により、エンリケの軍事上の評価は地に落ち、これ以後、エンリケは晩年に到るまで、その身を国内政治と探検事業のみに捧げることとなる。

1444年、バルトロメウ・ディアスの父であるディニス・ディアスがセネガル川とヴェルデ岬に到達。ギニアを訪れるとともに、サハラ砂漠の南端に達した。これによりエンリケは、サハラ砂漠を通過するキャラバンに頼ることなくアフリカ南部の富を手に入れる航路を確立するという、当初の目的を達した。アフリカ南部から大量の金を得ることができるようになったことで、1452年にはポルトガルでは初となる金貨が鋳造された。 この時期になると、エンリケは国政の関与においても多忙をきわめ、後世に残るものとしては、コインブラ大学に天文学の講座を設けるなどの施策を行っている。 大航海時代の幕を開いたエンリケの名は、その死後、「航海王子」の敬称とともに呼ばれ、その名を今日に留めている。


参考文献

『エンリケ航海王子 大航海時代の先駆者とその時代』(著:金七紀男、発行:刀水書房、2004年)

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