特性論

出典: Jinkawiki

2010年8月10日 (火) 00:52 の版; 最新版を表示
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目次

概要

私たちの行動を観察すると、中にはその場限りの行動もあるが、種々の状況において一貫して現れる行動もある。種々の状況を通じて一貫して現れる一定の行動傾向を特性(trait)という。 特性論は、特性を人格の構成単位とみなし、いくつかの特性の組み合わせによって人格を記述し理解しようとする方法で、主としてイギリスやアメリカで発達した理論である。特性論は類型論より歴史も浅く、そのほとんどが20世紀になって誕生したものである。


オールポートの特性論

アメリカの心理学者であるオールポートは、性格特性は精神・身体的概念であり、その特性は「個人の内にある」と主張。類型論における分類は、それが「観察者の目」に依存しており、そのことが性格の理解を困難にしているという。つまり、観察者の判断が異なれば、同一の個人が、異なる性格を有する人間として判断されることになる。 オールポートは、辞典(ウェブスター)の中から、「親切な」「社交的」などの、性格特性に関することばを数多く選び出し、形容詞的な用語を、実際的な特性を表現する語群(Ⅰ群)、一時的な状態(態度)を表現する語群(Ⅱ群)、評価(価値判断)を表現する語群(Ⅲ群)、その他(Ⅳ群)の4群に分け、第Ⅰ群を中心に特性の分析を行った。 オールポートは、多くの人々に共通する共通特性と、ある個人に特徴的な独自の特性を区別し、さらに共通特性を表出的特性と態度的特性に分類している。 また、特性の基礎をなす心理・生理的要因(身体、知能、気質)を加え、個人の性格を表示する心誌(psychograph)を作成している。


ギルフォードの特性論

アメリカの心理学者であるギルフォードは、共同研究者マーチン(H.G.Martin)とともに因子分析的手法により、「STDCR因子目録」「GAMIN因子目録」および「ギルフォード=マーチン人事人格目録」の3種の性格目録(personality inventory)を作成している。この3つの検査において、性格特性として次の13因子が測定される。 ① S因子:社会的外向―内向 ② T因子:思考的外向―内向 ③ D因子:抑うつ性 ④ C因子:回帰性傾向 ⑤ R因子:のんきさ ⑥ G因子:一般的活動性 ⑦ A因子:社会的場面における支配性 ⑧ M因子:社会的場面における支配性 ⑨ I因子:劣等感 ⑩ N因子:神経質 ⑪ O因子:客観性 ⑫ Ag因子:愛想のよさ ⑬ Co因子:協調性 このギルフォードの人格目録は、日本でも矢田部らにより標準化され、おのおの12項目からなる13尺度が作成されている。 一方、辻岡は、矢田部が標準化した性格検査を各10項目からなる12の尺度にあらため標準化し、「矢田部=ギルフォード性格検査」を作成している。


アイゼンクの特性論

イギリスのアイゼンクは、性格研究に実験的方法を導入し、因子分析法による性格特性の分析を行っている。 アイゼンクの理論は、類型論と統計学的手法との組み合わせによる特性論である。 従来の因子分析はよって抽出された因子は、それがどのような意味を持っているかが不明な場合も少なくなかった。そこで、アイゼンクは、従来の因子分析の手法とは多少異なるクライテリオン分析という方法を通じ、性格の基本的次元を決定しようと試みている。 この分析は、抽出しようとする因子が前もって決められているが、この因子は、外向性―内向性というように両極性を持ったものであり、実験的検討に際しては、被験者もこの両極の2群が対象とされる。 アイゼンクの特性の理論の特徴は、ほかの特性論と異なり、特性のレベルよりもさらに抽象化された類型(type)の次元を設定していることである。そして、アイゼンクによれば、性格の構造は、類型―特性―習慣的反応―個別(特定)反応の4つの階層構造をなしてるという。 神経症傾向と精神異常の区別に始まったアイゼンクの研究は、その後、健常者及び神経症患者への研究へと発展し、その中からふたつの基本的因子が抽出されている。 この2つの因子が、内向性―外向性の因子、そして神経症的傾向の因子であり、わが国で今日使用されているMPI(Maudsley Personality Inventory)の基礎となっている。 さらにアイゼンクは、種々の生理心理学的実験から得られた資料をもとに、このような内向性―外向性及び神経症的傾向の背景には、脳幹網様体及び大脳辺縁系の活動の個体差、すなわち、生物学的基礎の差異が関連していると主張している。


参考文献

加藤義明 中里至正編著 1989 『入門人格心理学』 八千代出版


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