シンガポールの教育
出典: Jinkawiki
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シンガポールの教育
シンガポール政府は、教育の目的を、「子供が生活していく上で必要となる技量を習得させるとともに、子供が、責任感ある大人、忠誠心ある市民、勤勉な個人となるように、健全な道徳的価値観を教え込むことにある」として、読み書き、計算能力、二言語主義、体育および道徳教育を教育における5つの柱としている。 このうち、二言語主義は、イギリス植民地下の国際貿易都市として発達してきた歴史的条件および多民族国家という社会的条件を反映している。二言語主義は、法律、行政、商業、技術の言語である英語のほかに、各民族の母語である。北京)、マレー語またはタミール語を習得させて、文化的伝統を継承させようという理由に基づくものである。 シンガポールの教育体系は基本的な進路は、小学校(Primary School=6年間)、中学校(Secondary School=4年間)、ジュニア・カレッジ(Junior College=2年間)から大学(University=3~4年間)というコースである。
小学校で教育レベルが二つに分けられる。1~4年生の基礎段階、5~6年生のオリエンテーション段階である。4年生修了時に学習能力に応じて、オリエンテーション段階の振り分けが行われる。6年生修了時に、初等教育修了試験が国家によって実施され、生徒の能力を見定めた上で、学習のペースと才能に最も適した、中学校でのコースが決定する。
中学校でも3つのコースが設けられている。スペシャル・コース、エクスプレス・コース、ノーマル・コースである。ノーマル・コースは、さらに学術コースおよび技術コースに分かれる。コースにより4年生終了時に受けるテストが異なる。スペシャル・コースおよびエクスプレス・コースの生徒は、シンガポール・ケンブリッジ「普通」教育認定レベルの試験を受ける。この試験の成績により、中等後の教育における進路が定まる。 また、ノーマル・コースの生徒は、「標準」教育認定レベルの試験を受ける。なお、いずれのコースも4年間であるが、ノーマル・コースの中で成績優秀な生徒には、もう1年勉強する資格が与えられ「普通」教育認定レベルの試験を受ける準備をする。
このような小学校から厳しい選別が行われる制度であるため、高いレベルの人材が多く生まれ、シンガポールの成長と発達を支える人材を次々と排出していっただろう。しかし、コースを小学校から分けてしまうことは、格差社会の問題をより大きくしてしまうことは必然である。 また、シンガポールには、大学が「シンガポール国立大学」、および「ナンヤン工科大学」の2つしかない。両校とも、入学するには、試験で一定の成績を修める必要がある。厳しいコース制度を小学校から行っていながら、その先の学習の場が少ないのである。たとえば日本のように多くの大学があれば、学部を選ぶ視野が広がり、より自分のやりたいこと、能力向上につなげることができる。大学が少ないということは、どんなに成績優秀になっても、結局は同じような道にしか進めないのである。他の国の大学へ行く、という選択肢はあるが、小学校から高いレベルで教育を行っているシンガポールであるのだから、国内で大学を増やしていきたい。この教育システムによって優秀な人材を増やしていったことは事実であるが、問題点もあるのである。
参考文献
池田 充裕『世界の教育事情 徹底研究・学力向上施策の各国事情(14)シンガポール編(下)「考える学校、学ぶ国家」。効率志向型教育からの決別』
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