尊属殺人重罰刑規定違憲判決
出典: Jinkawiki
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尊属殺人重罰刑規定違憲判決 尊属(親等上、父母と同列以上にある血族)殺人を一般の殺人よりも重く処罰する刑法の規定が、法の下の平等を保障した憲法第14条に違反するかが争点になった事件及びその事件の裁判判決。
事件概要
本事件の被告人であったYは中学二年生14歳のころから実の父に性的虐待をうけ、以後10年以上夫婦同様の生活強いられ、実父との間に5人の子どもを産むという異常な境遇にあった。その後Yが29歳の時、勤め先の同僚と結婚の機会があったが、実父はYを自分の支配下に置こうとし、10日余りにわたって、脅迫・虐待を加えた。このため心身ともに疲労したYは実父のいわれのない暴言に触発され、このような境遇から逃れるため実父を絞殺するに至った。そこで、Yは自首し、尊属殺人(刑法200条)で起訴された。
その後の経緯
第一審において、「刑法第200条は憲法14条に1項に違反するとし、その適応を排除すべき」とした。また、一方で、刑法第199条を適応し、実父を殺害してしまったことに対しては、過剰防衛の成立を認め、(つまり、実父の所業に対して、Yの殺害の行為を容認すること)さらに、心神耗弱を認めて刑を免除した。 しかし、第二審は、防衛行為を否定し、刑法200条により、尊属殺人に付き有罪としたが、心神耗弱と被告人が置かれていた状況を考慮し、情状酌量の余地を認め、刑を減軽し、当時の現行の法上最低限の宣告刑として、懲役3年6か月の実刑判決を下したが、これに被告人弁護士は、刑法200条は憲法第14条1項に違憲であるとして上告した。 当時の刑法200条は自己または、配偶者、直系の尊属を殺した場合、被告人は死刑または、無期懲役に処することを規定していた。一方で、刑法199条にては人を殺した者は死刑または無期懲役もしくは、5年以上の懲役に処することを規定している。 199条のほかに、200条を設け、差別することが合理的な根拠に基づくものではないと判断され、1973年(昭和48年)に最高裁判所は、尊属殺人罪を定めた刑法200条を違憲と判断した。また、現行在施行中の法律を違憲と判断したのはこれが最初であり、この裁判事例は以後リーディングケースとして重要な裁判事例とされている。そして、1995年(平成7年)の刑法改正で刑法200条の条項は削除された。また、その時に、刑法200条だけでなく、尊属に対する犯罪の刑罰規定(尊属傷害致死・尊属遺棄・尊属監禁逮捕)も同年の刑法改正においてすべて削除された。
≪参考文献≫ 六法全書 平成22年度版 刑法第199条 教材 憲法判例 第4版 編集:中村睦男、秋山義昭、千葉卓、常本照樹、斉藤正彰 北海道大学図書刊行会 (2000) 伊藤真の判例シリーズ1 憲法 監修:伊藤真 著:伊藤塾 弘文堂 (2005)