大日本帝国憲法2

出典: Jinkawiki

2011年2月4日 (金) 12:24 の版; 最新版を表示
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目次

制定の経緯

 近代国家の樹立をめざす明治政府は、1873(明治6)年に左院に憲法草案の起草を委ねた。1875(明治8)年に元老院と大審院が設置され、右院とともに左院が廃止された後は元老院で「日本国憲法按」、のちに「国憲」と題する草案が起草された。その内容は、民主的な色彩が強すぎるなどの理由で政府内部から反対を受け、結局、採用されずに終わった。 この間、在野(民間)においても私人、政党、その他の結社によるさまざまな私擬憲法(私的草案)が作られた。その中には植木枝盛らの急進自由主義者の私案(東洋大日本国憲按)のように、天賦人権思想を主張した上で、政府に対して不服従権(消極的抵抗権)と新政府建設権(積極的抵抗権)を認めたものまであった。 このような自由主義的な動きは、天皇主権体制の中央集権国家をめざしていた当時の権力者に危機意識を持たせ、それは讒謗律や新聞紙条例、及び集会条例のような自由に対する弾圧法を誕生させる契機となった。同時にそれは、天皇主権国家を根幹原則とする憲法の制定を加速させた。伊藤博文は1881(明治14)年10月12日に、1890(明治23)年を期して国会を開設するとの勅諭を発し、それまでに憲法制定を宣言するのであった。 憲法調査の勅命をうけた伊藤博文は1882(明治15)年3月、調査のためヨーロッパに出向く。君主の力が強くて議会の力が弱い、つまり国民から選ばれた(民選)議会を認めながらも、その権限を大幅に制約した上で、強大な中央集権政府と天皇の権力を最大限に温存・確立しようとする当時の日本政府の支配的考え方に最も適したドイツ系の憲法を学んで帰国する。帰国後、伊藤博文は井上馨・伊東巳代治・金子堅太郎らとともに、ドイツ人顧問ロエスレルらの助言をえて、憲法の草案づくりにとりかかった。憲法草案は、1888(明治21)年に新設された枢密院(伊藤博文議長)で審議されたのち、1889(明治22)年2月11日発布され、はじめて国民のまえに明らかにされた。1890(明治23)年11月29日に施行される。全文7章76条。これが大日本帝国憲法(明治憲法)である。 しかし、三権分立の原則、臣民の権利・自由の保障を一応とり入れたが、万世一系・神聖不可侵の天皇が統治権を掌握する天皇主権を原則とした。天皇が帝国議会の関与なしに行える大権事項は緊急勅令の発布、大臣の任命その他広範に及び、枢密院の設置等と相まって議会の地位を弱めた。臣民の権利も法律により制限できた。また軍の統帥権は天皇に直属し、これには政府も関与できなかった。1947年5月3日、日本国憲法の施行により廃止。 


欽定憲法

この憲法は、天皇がつくって国民に下賜するという形式の欽定憲法であった。天皇は国の元首として国家を統治し、軍隊の統帥、宣戦・講和、条約の締結、官吏の任免、緊急勅令の発布など広汎な大権をもったが、同時にそれが憲法の条規にしたがって行使されるという立憲君主制の基本原則も明記された。また国務大臣は天皇を補佐し、天皇に対して責任を負うこととされたが、議会に対する責任は明確ではなかった。  

二院制

帝国議会は貴族院と衆議院の二院制で、貴族院は皇族・華族や多額納税者と、国家の功労者のなかから選ばれた議員(勅選議員)からなり、衆議院は国民から公選された議員で構成された。両議院はほぼ対等とされ、立法や予算審議についての権限をもっていたが、その権限は現在の国会とくらべれば大きなものとはいえなかった。また国民は兵役や納税の義務を負うとともに、法律などによる制約はあるものの、言論・出版・集会・結社・信教・請願・官吏任用などの自由と権利をみとめられた。また、所有権・信書の秘密の不可侵も定められた。さらに憲法とともに制定された皇室典範では、皇位の継承・天皇の即位式などが規定された。


憲法制定後

 憲法の発布により、天皇中心の国家体制が確立されるとともに、国民の権利と自由がみとめられ、国政参加の道がひらかれた。これは今日の民主主義の観点からすれば不十分であったとはいえ、当時、日本はアジアの諸国にさきがけて、憲法と議会をもつ近代国家の道を歩みはじめたのである。  憲法制定につづいて、民法・商法などの諸法典もつくられた。民法ははじめ法学者ボアソナードの助言のもとに、フランスの影響をうけたものであったが、日本の伝統的な国民生活の美風にそむくとして非難がおこり、実施が一時延期された(民法典論争)。修正された民法(明治民法)では家が重んじられ、戸主権が強く、女性の地位は低かった。また、市制・町村制、府県制・郡制が制定されて、地方自治の制度が整備されたが、府県知事は政府によって任命された。


参考

http://tamutamu2011.kuronowish.com/dainihonnkokukennpou.htm 『もういちど読む山川日本史』 五味文彦 鳥海靖 山川出版社


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