ハムレット2
出典: Jinkawiki
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『ハムレット』(Hamlet)は、イギリスの劇作家ウィリアム・シェイクスピア(William Shakespeare)による戯曲である。
『オセロー』、『リア王』、『マクベス』と並ぶシェイクスピア四大悲劇の一つ。1601、1602年頃に初演。シェイクスピアの戯曲の中で最も長い。
登場人物
- ハムレット:デンマーク王国の王子、先王の息子にして現王の甥
- クローディアス:デンマーク国王、ハムレットの叔父
- ガートルード:デンマーク王妃、ハムレットの母
- ボローニアス:内大臣
- レアティーズ:ボローニアスの息子
- オフィーリア:ボローニアスの娘
- ホレーシオ:ハムレットの友人
- ハムレットの父の亡霊:先代のデンマーク王、クローディアスの兄の亡霊
- ローゼンクランツ:ハムレットの学友
- ギルデンスターン:ハムレットの学友
- フォーティンブラス:ノルウェー王子
- マーセラス:将校
- バナードー:将校
- フランシスコー:兵士
(注意:以降の記述で物語・作品・登場人物に関する核心部分が明かされています。)
あらすじ
デンマークの王であった父の葬儀に出席するため、留学先から帰国した王子ハムレットには、母親と叔父クローディアスの婚礼が待っていた。時を同じくして、デンマークでは夜ごと亡霊が出現していた。ハムレットの父の霊である。それを目撃した友人たちに請われ、ハムレットは父王の亡霊と対峙する。亡霊は彼に自分の死の真相を告げると、クローディアスへの復習を命ずる。狂人のふりをして叔父の疑惑をかわし、逆に叔父を動揺させるハムレットであるが、母親と叔父との仲を裂く一方、誤って内大臣のボローニアスを殺害、国外追放となる。陰謀の裏をかき帰国するハムレットであったが、留守中に恋人のオフィーリアが父を失ったかなしみから発狂し死んでいた。彼女の兄レアティーズはハムレットに復讐すべく、ハムレット殺害の陰謀を企てるクローディアスに加担する。彼らが計画した剣術試合において、最後にハムレットは叔父への復讐に成功するものの、レアティーズ、さらに母ガートルードまでもが手違いによって死んでしまう。自身も傷を負ったハムレットは、友人ホレイショーにことの真相を告げるように頼むと、息を引き取る。
作品の一考察~“to be, or not to be: that is the question”から~
“to be, or not to be: that is the question”、一般的には「生きるべきか、死ぬべきか、それが問題だ」の訳で知られる、ハムレットの独白の台詞である。しかし、小田島(1983)はこう訳す。「このままでいいのか、いけないのか、それが問題だ」(p.110)と。この点に関して小田島(2007)は、ハムレットの葛藤は、「生か死か、復讐すべきかすべきでないか、でもない。このつらい状況を現状維持か、打破か、というところの迷い」(p.36)なのだと指摘する。自問自答を繰り返した挙句、結局明確な答えを自分で出すことができない。小田島(2007)は、それは「価値基準を失っているから」(p.37)だとし、そういった状態を「内的カオス」(1991、2007、2010)とよんでいる。現代社会には多くの情報、また多様な価値観が存在する。そういった中で、自分は何を信じたらよいのか、自分はどうしたいのかといったことを頭で考えあぐねるものの、なかなか行動に移すことができない。今日、そんな「内的カオス」状態を経験し得る者は少なくないのではないか。『ハムレット』が世代をこえて我々を魅せる理由の一端は、人間がいかに迷い、悩み、そして簡単に割り切って生きていくことはできない存在であるかを教えてくれるからだといえるかもしれない。
〈引用・参考文献〉
・ウィリアム・シェイクスピア 小田島雄志訳 『シェイクスピア全集 ハムレット』 1983 白水社
・小田島雄志 1991 『小田島雄志のシェイクスピア遊学』 白水社
・小田島雄志 2007 『シェイクスピアの人間学』 新日本出版社
・小田島雄志 2010 『シェイクスピアの恋愛学』 新日本出版社
(HN:LUPIN)