学校選択
出典: Jinkawiki
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学校選択性
市町村教育委員会は、設置する小学校又は中学校が2校以上ある場合、就学予定者が就学すべき小学校又は中学校を指定することとされている。その際、あらかじめ、各学校に通学区域を設定し、これに基づいて就学すべき学校が指定されることが一般的である。
しかし近年、地域の実情に応じて「学校選択制」を導入する市町村もみられる。「学校選択制」は、就学校を指定する際に、あらかじめ保護者の意見を聴取して指定を行うものである。
1日本における展開
日本においては従来、学校教育法施行令第5条により、子供は教育委員会が指定する学校に通学することが定められていた。しかし、1997年に文部省が「通学区域制度の弾力的運用について」という通知を出したことで、この枠組みが有名無実化した。
最初に学校選択制を導入したのは三重県の紀宝町で、1998年度からである。2000年には東京都品川区がこの制度を導入。2002年には「規制改革推進3か年計画」が閣議決定されたが、その中にも学校選択制の推進を促す文言が含まれており、これを受けて、2003年には前述の学校教育法施行令が改正され、市区町村の教育委員会の判断によって学校選択制を導入出来ることが明記されるに至った。
現在では東京の区部など、この制度を採用する地域は拡大しており、内閣府が2006年に行った調査では小学校の14.9%、中学校の15.6%が導入しているとされる。
教育学者の藤田英典によると、このような学校選択制の導入は教育委員会や現場の教職員ではなく、首長や教育長の強い意向であることが多いという。
しかし、こうした学校選択制の広がりを疑問視する見方も市町村レベルで新たに生まれつつあり、2008年9月には江東区教育委員会が、学校選択制による地域コミュニティーの崩壊を防止するという観点から、小学校における学校選択制を2009年度より選択範囲を「徒歩圏に限る」と変更した(中学は従来どおり)。また、前橋市も2011年度から小中学校の学校選択制を廃止することとなった。
2 学校選択性の種類
現在行われている学校選択制度には以下の種類が存在する。なお実際に多く行われているのは(1)である。
(1)自由選択制
市区町村のすべての学校のうち、希望する学校に就学できる。
(2)ブロック選択制
市区町村をブロックに分け、そのブロック内で自由に選べる。
(3)隣接区域選択制
隣接する区域内の希望する学校に就学できる。
(4)特認校制
特定の学校について、通学区域に関係なく就学できる
(5)特定地域選択制
特定地域に居住するものについて、学校選択を認められる
(6)その他
3 学校選択制のまつわる是非
学校選択制の是非については、さまざまなところで議論されている。そこでの論点の多くは行政や学校の側から見たときの問題である。
メリット
・学校どとの特色を活かせる
・学校焼き教師の質が高まる要因になる
・子ども自身の意欲が高まる
・学校に対する親の関心が高まる
デメリット
・通学距離が長くなることによる安全面や経済面のリスク
・地域との関係の希薄化
・受け入れ定数の問題
・公立学校に競争原理を導入することの是非
日本の学校選択制の今後
全体としては、時代の趨勢として、今後も進むだろうと考えられ、特に保護者では肯定的な意見が目立つ。
教育関係者の意見としては、「今後も進むと思うが手放しで賛成というわけではなく、過疎地では『選択制』など到底不可能であり、慎重に取り組まなければ教育の地域間格差が増大することは明白である。また統廃合の方便として選択制を導入するのではなくあくまでも健全な競争を喚起することに主眼を置くべきである」教育関係者の意見を見ると、今後も進むと思うが手放しで賛成というわけではなく、「過疎地では『選択制』など到底不可能であり、慎重に取り組まなければ教育の地域間格差が増大することは明白」。 また「統廃合の方便として選択制を導入するのではなくあくまでも健全な競争を喚起することに主眼を置くべきである」、「地区の行事などを考えると、近所の子供同士が違う学校だと、地域の結びつきの上で不都合が出てくる」、「会社が競争することにより、より良い財やサービスを提供するようになるのは、審判である消費者がしっかりしているから。だから、学校間の競争においても、審判が重要。」などといった意見があり、保護者よりもこの制度に対して慎重な姿勢を示している。
アメリカにおける展開
アメリカではチャーター・スクールという形で、従来の公立学校に加えて、別の選択肢を地域住民が用意することもある。ただし、こうしたチャーター・スクールが必ず優れた教育実践を行っているわけではなく、衆目の一致する教育困難校と化す場合もある