1984年

出典: Jinkawiki

2011年8月29日 (月) 12:39 の版; 最新版を表示
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「1984年」(Nineteen Eighty-Four)は英国作家ジョージ・オーウェル(George Orwell)の小説。 1949年刊行。1950年にオーウェルは病没したため、最後の著作である。


目次

背景

本作執筆以前の1946年に著したエッセイ「なぜ書くか」の中でオーウェルは以下のことを述べていた。

「『動物農場』は、自分が何を書いているかをはっきりと意識しながら、政治的意図と芸術的意図を融合してひとつの統一感を作ろうと試みた最初の本だった。7年間のブランクを経て書き上げた小説だったが、近いうち新たな小説に取り組みたい。それはきっと失敗作になる。あらゆる本は失敗作なのだ。だが、自分がどのような本を書きたいのかだけは、ある程度明確に分かっている」

「1936年から37年に起こったスペイン内戦とその他の出来事が決定的な契機となり、以後、私は自らの立ち位置を理解した。36年以降に真剣に執筆した作品はどの一行をとっても、直接間接に、全体主義に反対し、私の理解する民主主義を擁護するものである」


あらすじ

<ビッグ・ブラザー>率いる党が支配する全体主義的近未来。ウィンストン・スミスは真理省記録局に勤務する党員で、歴史の改竄が仕事だった。彼は、完璧な屈従を強いる体制に以前より不満を抱いていた。
ある時、奔放な美女ジュリアと恋に落ちたことを契機に、彼は伝説的な裏切り者が組織したと噂される反政府地下活動に魅かれるようになるが・・・


登場人物

ウィンストン・スミス
真理省記録局職員。キャサリンという妻がいるが、一緒にいたのは15カ月ほど(党が離婚を許さないため、別居中)。
テレスクリーンの死角にて、貧民街の古道具屋で手に入れた本に日記を始めるようになる。ネズミが苦手。


ジュリア
虚構局で小説執筆機の運転操作に関わる仕事に従事している。目鼻立ちがくっきりとした黒髪の女性。 反セックス青年同盟の象徴である深紅の飾り帯を作業着の上にしており、立派な党員のように振舞っているが党中枢に対して疑問を抱いている。
監視網をかいくぐり、ウィンストンに手紙で告白し、逢瀬を重ねていた。


オブライエン
党中枢の一員。ウィンストンの夢にたびたび登場し、夢で「きっと闇の存在しないところで会うことになるだろう」と発するのを聞くなどしたため、ウィンストンはオブライエンが自分と同じ考えであると期待していた。
しかし実際は党に絶対服従しており、「二重思考」を使いこなしウインストンに接近していたのであった。ゴールドスタインの本の共同執筆者の一人でもある。


トム・パーソンズ
ウィンストンの隣人で真理省に勤めている。寝言で「ビッグ・ブラザーをやっつけろ」と口走ったのを娘に告発され蒸発させられた。


ミセス・パーソンズ
トム・パーソンズの妻。親ですら密告する気の子どもたちにおびえている。


サイム
ウィンストンの友人で真理省調査局勤務。歴史言語学者でニュースピークの研究者。小柄で黒髪。
知性が勝ちすぎており、ウィンストンの予想通り蒸発させられた。


チャリントン
古道具屋の主人。体つきは華奢で腰は曲がっており、髪はほぼ白い。
ウィンストンとジュリアが密会する場所を提供するも、その正体は<思考警察>の一員であった。頭髪は黒く、眼鏡も掛けておらず恐らく35歳くらい。

ビッグ・ブラザー
オセアニアの指導者。黒髪で口ひげを蓄えた姿で描かれるも、実在するかどうかも分からない。

エマニュエル・ゴールドスタイン
人民の敵。かつては党の指導者の一人で、ビッグ・ブラザーと並ぶ地位にあったが、その後反革命運動に加わり、死刑宣告されたものの脱出し姿をくらましたとされる。国家転覆を企む地下組織<ブラザー同盟>を率いるとされる。


用語集

党のスローガン
 「戦争は平和なり」
 「自由は隷従なり」
 「無知は力なり」

ニュースピーク
オセアニアの公用語であり、イギリス社会主義の奉ずるイデオロギー上の要請に応えるために考案された。
思考の範囲を狭めることを目的とし、最終的には思考犯罪が文字通り不可能になるとされる。

真理省
報道、娯楽、教育及び芸術をつかさどる。

平和省
戦争を管掌する。

愛情省
法と秩序の維持を担当。建物には一切の窓がない。

潤沢省
経済問題を管理する。

二重思考
ふたつの相矛盾する信念を心に同時に抱き、その両方を受け入れる能力。
ゴールドスタイン著とされる本の中で「党にとって最も重要な行動は、意識的な欺瞞を働きながら、完全な誠実さを伴う目的意識の強固さを保持することである。」と述べられ、「二重思考という手段を用いたからこそ、党は歴史の進行を阻止できたのである。そしておそらく今後何千年もの間、阻止し続けることができるかもしれない。」とも述べられている。


参照元

高橋和久訳 『一九八四年 [新訳版]』 早川書房、2009年
Wikipedia


HN:M.Y


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