大人ができる遊びの環境作りと援助
出典: Jinkawiki
←前の版 | 次の版→
子どもが自由に遊びを生み出し、展開していくことができるためには、温かく、受容的な保育者の存在(人的環境)が不可欠である。子どもを心から信頼して愛情深く接する保育者のいる保育集団と、威圧的で不安感に満ちた態度で子どもに接する保育者のいる保育集団とでは、物的環境が全く同じ場合でも、子どもたちの行動や態度、表情、意欲などが大きく違ってくる。温かく受容的な人的環境としての保育者であるということは、鋭い感受性を持って子どもからのメッセージを読み取り、それにこたえるということに他ならない。 子どもの欲求が理解され、自分が必要としているときに自分に対して注意を払ってくれる人の存在を知ることによって、子どもの心の内に「自分は価値のある存在である」という気持ちが育ち、子どもは自分の力を感じていく。 このような保育者であるために必要な事柄をあげてみる。
① 子どもの発達を学ぶこと
② 子どもたちの家庭での生活を知ること
③ 保育者が自分自身について、特に自分の恐れや不安、怒りの感情についての認識を高め、それに対処する力を身につけること
④ 子どもの応答的な対応と仕方を学ぶこと。そのために、子どもを観察すること、子どもに尋ねること子どもの姿や思いに応じた言動をとること
子どもの発達、興味、欲求は一人ひとり違う。大勢の子どもたちを対象とした保育においては、子どもたちの人数分、異なった環境が必要であるといってもいい。子どもは、自分の発達や趣味、欲求にあった遊びができる環境でないと、ほかの子どもたちの遊びの邪魔になるような行動を起こしたり、無為に時を過ごすことになる。子どもが望ましくない行動をするとき、その子どもの発達や趣味、欲求に合った環境が提供されているかどうかを点検することが必要だ。
保育集団が大きければ大きいほど、一人ひとりの遊びの自由を保障することが困難になる。子どもたちが自分だけでなく、ほかの人の自由をも尊重できるような遊び方を、保護者に注意されてではなく自分で気づいて遊べる環境であることが必要です。もし、そうでなければ、保育者の一日は子どもたちを注意し続けて終わることが必要である。
これらのポイントを押さえて、具体的にどのようにして環境を設定や援助をするのかを考える。
多くの子どもも立ちのひとりひとりの発達や趣味、欲求に対応し、衝突や魂胆を少なくして、子どもたちが自分のしたい遊びに集中して取り組むことができるためにはある程度遊びをそのタイプによって種類分けし空間を仕切ることが必要である。 具体例は以下の通りである。 ・遊びを種類別に分ける 積み木、ブロックなどの構成遊び・つもり、ごっこ遊び・総計遊び・身体を動かす遊び・音楽に関する遊びなどなど 保育空間を仕切るのはこれらいろいろなタイプの遊びが同時に平行してできるようにするためである。
・コーナーの配置 出入り口や水道施設、作りかけの収納庫など、こていされたものとの兼ね合いや、コーナー内やほかのコーナーとの間での人や物の動き、流れ、人数、また音の大きさなどを考えて、コーナーの配置や大きさを決める。すべての遊びが一つの部屋に設定できれば、子どもは室内を見渡して、自分がしたい遊びを見つけやすい。コーナーを上手く作って子どもたちが遊びやすいように整備していく。
・境界を分かりやすく 境界に家具を置く、床にテープを貼る、カーペットや他旅など周囲と違うタイプや色の床材を敷く、段差をつける、白線を引いたりなどなど 動線や人数、実際に子どもたちが遊ぶ様子に合わせて、コーナーの大きさや位置を考え直していく作業は年間を通じて必要である。環境を上手く作っていくことで子どもは遊ぶことが楽しいと感じるようになる。
ⅲ 遊びの指導援助
① ごっこ遊びを例に援助の在り方を考える。環境を整え準備し、子どもたちが遊び始めるのを待つ。子どもたちは思い思いに自分の好きな遊びを始めるが、保育者は成り行きを見守り、口をはさむことを極力控え、子どもたちの行動を観察する。いざこざが起こったときはすぐに介入せず、成り行きを見て、子どもたちだけで解決できるようであれば見守る。ただ子どもたちが、問題解決に困ったときは子どもたちに解決への示唆を与える。ここでは決して指示的な言葉は使わず、「~はどうかな。○○ちゃんはどう思う?」など、あくまで子どもたちが考える主体となるように問いかけて解決のための援助をする。遊びの展開も、子どもたちの中から出てくるようであったらそれを見守り、特に口をはさむことはせず、子どもの側からなにか要求があったときはそれにこたえる。
② 保育者は子どもと同じように遊び始める。「○○ちゃん、ままごとをしよう」とあたかも自分が子どもの一人のようにほかの子どもを誘って遊び始めるのも良い。参加する保育では、保育者は子どもの活動に参加するか、または保育者の活動に子どもが参加するか、保育者自身も遊び始めなければならない。保育者は一人の子どもと遊びながらも常に全体を観察し、子どもたちでだけで解決困難な問題が出てきたときは援助し、助言しなければならない。
③ 子どもたちに言葉がけをし、遊び始めるための興味を喚起する。子どもたちがめいめい遊び始めると、保育者は一人ひとりの子どもたちをよく観察し上手く行ってるか見る。子どもたちのストーリー内容からつけくわえたほうがいい役を提案したり、使える小道具やおもちゃなどを示唆して、遊びがより展開するように気を配る。
以上3つの援助方法を取り入れることが必要である。1の「導く」こと、2の「見守る」こと、3の「参加」の形態を築いていく。この三つの援助を組み合わせて、遊びを適切に発展させていきたいものである。重要なのはかかわるテクニックではなく、援助・指導などの方法の理念である。