自衛隊
出典: Jinkawiki
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自衛隊の起源
自衛隊のもととなったのは警察予備隊という組織。この警察予備隊は1950年に朝鮮戦争が勃発し、日本の防衛が手薄になるとの理由によりGHQのマッカーサーが当時の首相吉田茂に「国家警察予備隊」を創設するよう要請した事で結成された。 1952年に朝鮮戦争は停戦したが、戦争が終わったわけではないため、防衛のための戦力になる“軍隊のような組織”を保持し続けることになった。
自衛隊の役割
自衛隊の任務は防衛省設置法と自衛隊法によって定められている。その役割の代表的なものとして防衛省は、「本格的な侵略事態への備え」「国際的な安全保障環境の改善のための主体的・積極的な取組」「新たな脅威や多様な事態への実効的な対応」の3つを挙げられている。
本格的な侵略事態への備え
「本格的な侵略事態への備え」とは、「我が国の平和と独立を守り、国の安全を保つこと」(防衛省設置法第3条)「直接侵略及び間接侵略に対し我が国を防衛することを主たる任務とし、必要に応じ、公共の秩序の維持に当たる」(自衛隊法第3条)とあるように、主に他国に対する“国の防衛”を意味している。より細かなものとしては、自衛隊法第82条の3にある「弾道ミサイル等に対する破壊措置」や同法第84条の「領空侵犯に対する措置」が含まれると考えられる。
国際的な安全保障環境の改善のための主体的・積極的な取組
「国際的な安全保障環境の改善のための主体的・積極的な取組」は、自衛隊法第3条2項にて、「我が国周辺の地域における我が国の平和及び安全に重要な影響を与える事態に対応して行う我が国の平和及び安全の確保に資する活動」「国際連合を中心とした国際平和のための取組への寄与その他の国際協力の推進を通じて我が国を含む国際社会の平和及び安全の維持に資する活動」と述べられているように、海外派遣や海外への支援物資についてである。この役割は前提として、「本格的な侵略事態への備え」でも挙げた同法同条に当たる「“主たる任務”に支障を生じない限度において、かつ、武力による威嚇又は武力の行使に当たらない範囲」という条件がもうけられている。海外派遣として有名なものは2003年に行われたイラク派遣が挙げられるが、その他にも2002年に独立した東ティモールなど様々な場所で活動している。
新たな脅威や多様な事態への実効的な対応
「新たな脅威や多様な事態への実効的な対応」は、自衛隊法第83条、災害派遣について「天災地変その他の災害に際して、人命又は財産の保護のため必要があると認める場合には、部隊等の派遣」と記されているように、災害時の救援活動、救助活動を意味する。尚、あまり知られていないが災害派遣とは別に、同条にて「第83条の2」「~の3」という形で地震防災派遣、原子力災害派遣と、それぞれ別途に制定されている。 この「新たな脅威や多様な事態への実効的な対応」には他の二つとは大きく違う点がある。それは、他の二つが内閣総理大臣によって出動させられるのに対し、こちらは都道府県や市町村などから要請を受けた大臣や大臣の指名する者の命令によって出動できることである。災害時などの緊急時においては一刻を争う場合が多いためであるという。 また、上の三つ以外の役割で国民に直接かつ大きく関わるものとして自衛隊法第78条「治安出動」がある。
治安出動
治安警備の際に出動する部隊として有名なのは、警視庁や各県警察の機動隊であるが、自衛隊にも治安出動という任務が存在する。これは自衛隊法第78条と第81条において定められているが、定められてから今まで、一度も実行されたことはない。しかし、内閣総理大臣による要請は一度だけされたことがある。 第一、自衛隊における治安出動とは、第78条に「間接侵略その他の緊急事態に際して、一般の警察力をもつては、治安を維持することができないと認められる場合には、自衛隊の全部又は一部の出動」とあるように、例えば暴動などで、警視庁や各県警察の機動隊でも鎮圧できない事態に対して自衛隊がその鎮圧に当たるといったものである。自衛隊は自衛隊法に定められている権限に基づき、銃などの武器の所持、使用が認められている。つまり、本来守るべき対象である国民に対し、その銃口を向ける事態になるのである。 内閣総理大臣による要請が行われたのは1960年6月15日。当時の首相、岸信介によるものである。きっかけになったのはアメリカと結んだ日米安保条約、その内容を巡る60年安保闘争に対して行われたものである。その非常事態は首相の岸信介が暴力団にデモ隊の襲撃するほどであった。結局は当時防衛庁長官、赤城宗徳が、直接的な防衛のかなめである自衛隊の存在を守るために、要請を拒否したため、実行されることはなかった。
自衛隊の問題~日本国憲法第9条~
日本国憲法第9条
日本国憲法第9条とは「日本国民は、正義と秩序を基調とする国際平和を誠実に希求し、国権の発動たる戦争と、武力による威嚇又は武力の行使は、国際紛争を解決する手段としては、永久にこれを放棄する」というように「戦争の放棄」を説いているものである。更に、その2項において「陸海空軍その他の戦力は、これを保持しない」「国の交戦権は、これを認めない」と、「戦力の不保持」「交戦権の放棄」も明示している。
自衛隊と第9条の矛盾
日本国憲法第9条では「戦争の放棄」「戦力の不保持」「交戦権の放棄」を表している。だが、自衛隊は「自衛隊の役割」でも書いたように、自衛隊は防衛省が国の平和と独立を守るために設置した組織であり、そのために武器の所持や使用が認められ、高性能な戦闘機、空母、戦車やミサイル等所有している。防衛費も2008年時点463億ドルで世界第7位と上位にいる。 このように自衛隊は戦力を保持してならないという憲法第9条と矛盾しているため、過去に何度も違憲ではないかと、その合憲性を審議されている。
自衛隊の合憲性
自衛隊の合憲性については何度も審議されているが、自衛隊そのものについて違憲とされず、すべて合憲としている。その際の、防衛に関する政府見解は次のとおりである。
自衛権の存在(昭和29年12月22日衆議院予算委員会での鳩山内閣統一意見)
第一に、憲法は自衛権を否定していない。自衛権は国が独立国である以上、その国が当然に保有する権利である。憲法はこれを否定していない。従って現行憲法のもとで、我が国が自衛権を持っていることは極めて明白である。第二に、憲法は戦争を放棄したが、自衛のための抗争は放棄していない。1、戦争と武力の威嚇、武力の行使が放棄されるのは「国際紛争解決する手段としては」ということである。2、他国からの武力攻撃があった場合に、武力攻撃そのものを阻止することは、自己防衛そのものであって、国際紛争を解決することとは本質が違う。従って自国に対して武力攻撃が加えられた場合に、国土を防衛する手段として武力を行使することは、憲法に違反しない。
自衛隊の合憲性(昭和55年12月5日衆議院森清議員質問主意書に対する答弁)
我が国が自衛のための必要最小限度の実力を保有することは、憲法第9条の禁止するところではない。自衛隊は、我が国を防衛するための必要最小限度の実力組織であるから憲法に違反するものでないことは言うまでもない。
要するに、「自衛権の行使」「自衛のための抗争は戦争ではない」「自衛権は戦力に当たらない」。そのために合憲であるということであるが、違憲派からはそれは解釈改憲だという批判がある。
ただし、自衛権の行使に関しては根拠があり、日本国憲法第13条において「生命、自由及び幸福追求に対する国民の権利については、公共の福祉に反しない限り、立法その他の国政の上で、最大の尊重を必要とする」とあるように、国民を守るための自衛抗争の権利も放棄するのは第13条に違憲してしまうのである。
防衛費世界第7位と上位であるのにもかかわらず、自衛隊は戦力に当たらないといっていることにも理由が存在する。日本は徴兵制でないために兵一人ひとりにかかる人件費が高く、国内人口も多い。それにも関わらず、防衛費のGDP比が1%と、先進国の平均が4%前後であることに比べるとかなり低いのである。中にはもっと防衛費を増やすべきだと言う人もいるほどである。
しかし、これらの合憲性に関しても実際には不明瞭であり、2012年2月2日での国会において防衛大臣である田中直木は自衛隊の合憲根拠について答えられないといった事態が起きた。
「自衛隊完全読本」著・後藤一信 河出書房新社
「防衛省・陸上自衛隊」http://www.mod.go.jp/gsdf/index.html
「自衛隊法」http://law.e-gov.go.jp/htmldata/S29/S29HO165.html
「日本国憲法」http://www.houko.com/00/01/S21/000.HTM#s2