四大公害病
出典: Jinkawiki
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四大公害病
戦後の高度経済成長期に重化学工業化が急激に進み,各地で産業公害が多発。大きな社会問題となった。公害とは,企業の生産活動や人々の生活の中で発生する有害物質,大気汚染,騒音などにより,人々の健康や生活環境が損なわれることである。なかでも,熊本・新潟の水俣病,富山のイタイイタイ病,三重県の四日市ぜんそくは,その被害の大きさから四大公害病と言われる。
・新潟水俣病(第二水俣病)
被害地域は、新潟県阿賀野川流域。原因は、アセトアルデヒド製造工程で副生された有機水銀を含む排水が,阿賀野川の水を汚染したことによる(水質汚濁)。生物濃縮を経て魚介類中に蓄積され、汚染された魚介類を摂食することにより人体へ。症状としては,しびれ・運動障害・言語障害・難聴・視野狭窄・四肢麻痺など。重症の場合には脳が冒されて死亡する。メチル水銀中毒の母親から胎盤を経由してメチル水銀が胎児へ移行し,言語知能発育障害,嚥下障害,運動機能障害を示す子どももみられた。(先天性水俣病) 原因企業は、電気化学工業企業(昭和電工鹿瀬工場(新潟県)) 最終的に認定された患者数は,700人。
・四日市ぜんそく
被害地域は、三重県四日市市。原因は,石油コンビナートの排煙に含まれた二酸化硫黄による大気汚染。症状としては,せきが出る,痰が出る,気管支炎やぜんそく,閉塞性肺疾患の症状を訴える人が多発。死亡者もでた。また,症状の辛さなどから自殺する人も出たという。昭和39年に当時の文部省(現文部科学省)は,疫学的な手法で大気汚染による呼吸器への影響調査・検証をして,結果高い有症率と大気汚染の関係を立証。1972年(昭和47)公害病に認定。 原因企業は石油化学系企業。 最終的に認定された患者数は1,700人。
・イタイイタイ病
被害地域は,富山県神通川流域。原因は,カドミウムによる水質汚濁。原因とされるカドミウムの汚染源は,神通川上流の岐阜県神岡町にある三井金属鉱業神岡鉱業所で,亜鉛を製錬した後に出るカドミウムを含んだ排水をそのまま神通川に流していたために水質と土壌の汚染を招いた。 症状としては,背骨や手足骨が痛み,骨がもろくなって容易に骨折する。(患者が「痛い、痛い」と叫ぶので「イタイイタイ病」と名付けられたという)汚染された農作物や,飲料水を長期にわたり摂取したことにより引き起こされた腎障害と骨軟化症状を主な症状とするカドミウム中毒である。 1968年(昭和43)に公害病第一号に認定された。 原因企業は,鉱石採掘企業。 最終的に認定された患者数は190人。
・水俣病(熊本)
被害地域は,熊本県水俣市。原因は、アセトアルデヒド製造工程で副生された有機水銀を含む排水が水を汚染したことによる(水質汚濁)。生物濃縮(環境中の特定の物質が生物の体内に蓄積され,濃度を増す現象。濃縮率は食物連鎖を経て,より上位の種や個体ほど高くなる。数千から数万倍になることもある)を経て魚介類中にメチル水銀が蓄積され、汚染された魚類の摂食により人体へ。1953年(昭和28)頃から,熊本県水俣湾周辺に集団的に発生し、1968年に公害病と認定される。 症状としては,しびれ・運動障害・言語障害・難聴・視野狭窄・四肢麻痺など。重症の場合には脳が冒されて死亡する。メチル水銀中毒の母親から胎盤を経由してメチル水銀が胎児へ移行し,言語知能発育障害,嚥下障害,運動機能障害を示す子どももみられた。(先天性水俣病) 原因企業は、電気化学工業企業。 最終的に認定された患者数は,2,200人にのぼる。
四大公害訴訟
・新潟水俣病
1967年(昭和42)6月に提訴。原告は水俣病患者,家族。原告数76人。被告企業は昭和電工。1971年9月に原告側(患者側)が勝訴。企業に賠償命令。
・四日市ぜんそく
1967年(昭和42)9月に提訴。原告は公害病認定患者。原告数12人。被告企業は昭和四日市石油など6社。1972年7月に原告側が勝訴。
・イタイイタイ病
1968年(昭和43)3月に提訴。原告はイタイイタイ病患者。原告数33人。原告企業は三井金属鉱業。1972年8月に原告側が勝訴。企業への賠償命令及び毎年,排水と川の水質検査を義務付け。
・水俣病(熊本)
1969年(昭和44)6月に提訴。原告は水俣病患者・家族。原告数138人。原告企業はチッソ。1973年3月に原告側が勝訴。廃液を流していた企業への賠償金支払いと,国に対しても被害者認定の遅れを認めることになった。
1960年代後半になると,公害病の被害をめぐる裁判が次々と始まった。その頃になって,政府の公害対策も始まり,1967(昭和42)年には公害対策基本法を制定。1971年に環境庁が発足。
- 参考
・「地球温暖化を阻止せよ!自由探索コース」http://rikanet2.jst.go.jp/contents/cp0220a/contents/index.html
・「EICネット」http://www.eic.or.jp/