フォルケホイスコーレ8

出典: Jinkawiki

2012年2月11日 (土) 12:32 の版; 最新版を表示
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フォルケホイスコーレ


 フォルケホイスコーレ(Folkehoejskole)とは語義的には「民衆の大学」を意味する。北欧全土に広がる独特の成人教育機関であり、通常の公教育から独立し影響を受けない私立学校群である。フォルケホイスコーレはデンマークの教育システムのなかでは、「成人教育」のなかに位置づけられているが、「学校を超えた学校」と指摘する人もいる。

フォルケホイスコーレの特徴


 フォルケホイスコーレは、試験もなく資格も問わないので、18歳以上の人なら誰でも学ぶことができる。国籍も問わないが、授業はデンマーク語で行われるので、日本人なら誰でもいいというわけにはいかない。

フォルケホイスコーレは全寮制で、生活や食事をみんなで共にする共生が重視される。とくに3度の食事と3度のお茶の時間は重要で、ここで生きた言葉と対話がリラックスしたかたちで可能になり、互いにうちとけていく。 期間は3ヶ月から6ヶ月というものが多く、複数の学校を渡り歩くこともできる。デンマークでは大学へ行く前や会社を中途で辞めてからここに来て、自分のモチベーションを探すという形が多くなってきている。

また、国際的には成人教育機関として受け取られ、最近は先進国でもはやりの合宿型のカルチュア・センターみたいなものだと理解されがちであるが、デンマークでは履歴書にも書ける学校であり、スウェーデンやフィンランドでは資格も取れる専門学校的扱いになっている。しかし、この学校自体の歴史が行政によらない民衆の対抗教育として続いてきたので、やむなく成人教育の範囲に入れられている。

この学校の歴史が民衆の対抗教育というものであったため、国家からの自由というものが一番大事な思想になっている。しかし代々、この学校出身者が政権を担当したので、今までは経常費の約8割を行政からの援助によりまかない、財政的には公立学校に近いものになっている。しかし、カリキュラムや人事など、学校の内容や運営にはいっさい行政は関知できないことになっており、行政から独立した私立の学校というスタイルが守られている。

フォルケホイスコーレの内容


 学校ごとに個性があり、一律に語ることはできないが、大まかには次の三つに分類できる。一方通行的な講義形式はなく、ほとんどがゼミナールかワークショップ(参加体験型学習)形式である。

・伝統的科目:デンマーク文学、歴史、自然科学、コーラス、演劇、デンマーク体操、語学などが挙げられる。これらは、昔からフォルケホイスコーレの科目として大事だったものである。

・趣味と実益をかねた実践的科目:陶芸、絵画、彫刻、写真、ビデオ制作、工芸、織物、刺繍、音楽、バンド演奏、ヨット、サーフィン、ボート、カヤック、テニス、ダンス、武道、ダイエット、ヨガ、スキーなどが挙げられる。

・現代的課題:エコロジー、国際関係論、ジャーナリズム学、開発教育、フェミニズム、自然エネルギー、有機農業、セラピーなどが挙げられる。

フォルケホイスコーレの目的


  先進国の視察団は、ただの合宿型カルチュア・センターとしてだけしか受け取らず、日本も例外ではないのだが、この学校の目的は趣味や実益を伸ばすことではない。グルントヴィの基本的な考え方、「生きた言葉」による「対話」と「共生」を通じて、民主主義社会を形成するにふさわしい判断力を身につけ、生き甲斐をもてるわきあいあいとした空間をつくり上げ、そこで自分の生きるモチベーション、他者を考慮した自己実現の道を見いだすこと、すなわち「生の自覚」がこの学校の目的になっている。もちろん全員がそれができているわけではないが、失業者がこの学校に来て生きる意欲を取り戻すということは頻繁に起きている。

デンマークでは、近代化により伝統社会が壊れ、個人主義化が進んだとき、教育ではこの学校、経済社会では協同組合組織が、人々の連帯と友愛を守るとりでになり、ほかのヨーロッパ諸国にありがちな疎外状況が起きなかったのである。今日、デンマークだけがそうした社会問題を免れるわけにはいかず、さまざまな社会問題が生じてはいるが、それでもこの学校の存在によって人々の連帯と高い民主主義の意識が育まれていることはたしかなのである。

参考HP ・http://www.asahi-net.or.jp/~pv8m-smz/society/hoeskole.html

(投稿者:EX)


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