しんかい2000
出典: Jinkawiki
←前の版 | 次の版→
しんかい2000はおおよそ全長9.3m、幅3m、高さ2.9mの大きさの潜水船である。母船から離れて海面にいるときは推進器を持った船なので、特殊な潜水調査船とはいえ、レジャー用のヨットやモーターボートと同様に小型船舶として扱われ、「神奈川第2300号」の登録番号をもっている。潜水船の主要部は人が乗り込む耐圧殻である。これは、約3cmの厚さの超高張力鋼で作られた内径2.2mの球殻である。このなかは、上下二層に仕切られていて、上には潜水船のあらゆる状況が表示される計器が並んだコントロールコンソールがあり、それに向かってパイロットの一人が椅子に腰かける。下は上に比べて広々として空間になっていて、柔らかいマットが床に敷かれている。研究者とほかの一人のパイロットはこの床に座り込むか、寝そべって窓に向かう。窓は前方正面に一つと下向きに二つあり、パイロットと研究者が同じ対象を見ることができるように、共通の視界を持たせて並べてある。この両方の窓からの視野内は一様な明るさになるように六基の照明が配置されている。潜航中の海底の様子はテレビカメラとスティルカメラで撮影し、記録される。テレビカメラは単に撮影・記録のためだけでなく、窓の内側からは見ることのできない潜水船の側方や上方の様子を広く観察し、安全を確認できるように遠隔操作で首振りができるようになっている。つまり、動く「目」である。 一方、「手」はマニピュレータと呼ばれる遠隔操作型の機械の手が右側に一本つけられている。これでとった試料は、左側に設けられているサンプルバスケットに入れて持ち帰られる。 移動するための「足」は船尾にある主推進器である。海底観察中は、約1ノット(毎秒5cm)ほどの速さでゆっくり移動するので、普通の船のように舵で向きを変えることはできない。そのために、この主推進器を扇風機のように首を動かして向きを変えることができるようになっているほか、船体の両側面に小さな補助推進器が二基装備されていて、これらも動かすことによって方向転換は容易である。
{参照「深海底から見た地球」 堀田宏 有隣堂}