自己知覚理論
出典: Jinkawiki
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認知的不協和を考えずに強制承諾実験の結果を説明しようとする立場である。べム(Bem,D.,1967)によれば、私たちは何かについての自分の態度がはっきりしない場合、自分自身の行動を観察して自分の態度を理解する。ある女性に「あなたの夫はサッカーが好きですか」とたずねれば、その女性は「そうですね。夫はいつもテレビでサッカーを見ていますから」とか「いいえ、夫は野球ばっかりやっています」などと答えるだろう。つまりいつもの夫の行動に基づいてその女性は夫がサッカー好きである(嫌いである)と判断するのである。べムの考えでは、私たちは自分自身についてもそれと同じ方法で判断を行うことがある。この理論の重要な点は、基本的に私たちは内的な手がかりが曖昧で明白でない場合、自分の態度に関する判断を自分自身の行動の観察に基づいて行うというものである。 べムの理論ではフェスティンガーとカールスミスの強制承諾実験の結果を以下のように説明する。20ドルを報酬としてもらった実験参加者は「20ドルもらったから実験は楽しかったと言ったのだ」と考えるが、1ドルをもらった被験者は「嘘をつくのに1ドルでは少ない、だから実験はなかなか面白かったのだ」、つまり1ドルをもらった被験者は自分の行動を実験が面白かったという態度に結びつけて考えたが、20ドルもらった被験者は自分の行動を金銭的なもので説明したのである。べムの理論がフェスティンガーの考え方と異なる基本的な違いは、不協和という考えを仮定していないことである。つまり、私たちの最初の態度は関係なくて、行動が不快を作り出すことはないと考える。また自己知覚理論によれば、以前からあることを気に入っている人にそのことを行うことに対して報酬を与えると、その人はそのことを嫌いになってしまう。この効果は過剰正当化効果と呼ばれる。
参考文献 神田信彦・金子尚弘『心を科学する心理学』河出書房新社(2007/4/30)41p
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