複数言語教育

出典: Jinkawiki

2013年7月20日 (土) 00:36 の版; 最新版を表示
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 まず、複数言語を使用する青少年が居住する地域にある学校教育における複数言語使用生徒に対する複数言語教育と、周囲の生徒に対する外国語=第二言語教育について述べたい。「グローバル」と「ローカル」とを合わせた「グローカル」という造語が生まれる今日、このような「グローカルな」地域は確実に増加しつつある。

 海外帰国生の母語=第一言語は基本的に日本語である。そして海外滞在経験の中で、何がしかの第二言語を習得してきている。海外帰国生で第二言語として英語を身につけているものは、本人も保護者も英語の運用能力維持・発達に熱心であり、その修得レベルはおおむね非常に高い。しかし一方で、母語=第一言語であり国語である日本語の修得レベルは、漢字の数と年齢に見合った構文力という点で同年代の生徒と比べると見劣りがする者が多いのも事実である。したがって、海外帰国生の場合、第二言語運用能力の更なる向上と第一言語である日本語運用能力のキャッチアップが課題となる。そうすることによって、職業生活での使用までをも視野に入れて、海外帰国生の複数言語使用能力の発達を保障することができる。

 中国帰国生の場合、彼らの母語であり継承語たるべき言語は中国語であり、出身地域がほとんど中国東北部であることから、基本的にはいわゆる普通話(標準語)である。彼らは日本に同化することを求められており、また多くの場合それを望んでいる。一般に彼らに対する日本語指導には一定の援助がなされるものの、継承語=中国語の維持・発達には公式の援助はない。ところが一方で、大学の帰国生枠入学試験では中国語の試験が課されることも多い。日本社会は彼らに継承語=中国語能力の維持・発達を求めているのであろうか、求めていないのであろうか。社会から相異なるメッセージが発せられる中で、彼らは自己責任において継承語=中国語に対するスタンスを決定することが求められている。

 英語を身につけている海外帰国生徒との対比で言えば、中国帰国生は中国語が母語=第一言語であるにもかかわらず、中国語の維持・発達に後ろ向きな場合も少なからず見られる。日本社会におけるそれぞれの言語のステータスが大きく影を落としているのであろう。世界の第一経済言語が英語であり、日本における第一経済言語が日本語であるとき、複数言語使用生徒が語学学習にどのようなポートフォリオを組むか、中期的には現実社会における各言語のステータスが与える影響は大きい。一方で、社会における各言語に対する需要を正確に評価・予想することは語学教育・言語政策の専門家にとっても難しいのであるから、短期的には良くも悪くも仮想現実的社会とでもいうべき学校社会における各言語のステータス演出が大きく影響を与えるであろう。

参考資料 西村俊一編集、『国際的学力の探求』、1989年、創友社 エレン・ビアリストク、ケンジ・ハクタ、『外国語はなぜなかなか身につかないか 第二言語学習の謎を解く』、2000年、新曜社 レスリー・M・ビービ、「第2章 社会言語学的視点 第二言語習得への5つの社会言語学的アプローチ」、『第二言語習得の研究』、1998年、大修館 平岡さつき、『国際的学力の探求』西村俊一編集、1989年、創友社


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