色彩
出典: Jinkawiki
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「色」。この文字は、うずくまる女性に男性がおおいかぶさる形をあらわしたものだ。つまり男女和合の様子をあらわしており、そのまま性的なことを意味するときに用いられている。やがて「色」という言葉の範囲は広がり、「色に出る」というように、人の内面が顔に出た状態や、目に入ると心を動かされるさまざまな彩りも、その中に含まれるようになった。色には、良くも悪くも人の気持ちを揺さぶる力があるということである。人の生もさまざまに彩られている。「赤子」「緑児」「青年」「青二才」などは普通に使われている言葉である。異なる文化においても、人間の本能的・心理的な面で、赤が地に結び付き、危険を予知させる色であることや、黒が暗闇につながり、死や恐怖など負のイメージを持つことは、ほぼ共通している。日本では、欧米の影響による近代化、科学技術の発展によって、色が伝統的に持っていた象徴性は失われてきているという。しかし世界には、今もしっかりとした仕切りのあるパレットを持っている国もあるのだ。
陰陽五行説は、紀元前一世紀ごろ、中国の前漢の時代に成立したとされている。この世のすべてのものは陰と陽という二種類の「気」によって生じたとし、陰陽いずれかの気を帯びた地球上の基本的な構成要素である木(陽)、火(陽)、土(陽と陰の中間)、金(陰)、水(陰)「五元素」の相互作用で、自然から人間関係まで説明しようとするものである。そして五行とは、常に流動しているこれらの五元素が、お互いにどのように作用するかをいうものである。五行はサイクルの相関係数のすべてを言い、そのバランスが崩れれば、世の中も人間の身体もおかしくなるとされている。またこれらに方角や色、季節、そして人体の中でも重要な臓器とされる五臓(肝臓、心臓、脾蔵、肺臓、腎臓)が規則的に関係しあっていると考えられ、五行配当表が作られた。木が青というのは植物の色、火が赤というのは炎の色、金が白というのは金属の輝きということで、水が黒というのは青い海より川や湖沼の鈍い水色というイメージが強かったためであろう。
方角と色の関係についていうと、東は太陽の昇る方角で、生命の息吹きを想像させるため植物の色であるにふさわしい。また南は、北半球の中国では日当たりのよい暖かい場所だから、火というわけだ。西は金(属)に通じるという。金属(白)は、もっとも身体を冷やす水よりはまだ暖かみがあるので、太陽が沈んで冷え込む西と結び付けられたのである。そして北は水で黒。水は身体を冷やす、冷たいというイメージがあったのであろう。ただ、五行の中で「土」は方位に入っていない。また土の色は黄となっている。私たちにとって土は茶色であり、古代エジプトでは黒とされたが、中国は黄河、黄砂という世界だったために土は黄色となった。そして東西南北の中央に位置する、つまり世界の中心にある色ということから黄色は皇帝の色とされた。この色は黄金、太陽に通じる色でもあった。
(参考文献:「色彩の世界地図」21世紀研究会)