フィンランドの教育5
出典: Jinkawiki
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PISAの調査は、義務教育の終了段階を迎えた15歳児の思考力や日常生活での問題解決能力を評価するもので、日本式○×テストに象徴されるような、どれだけの知識や技能を得ているかを計るものではない。与えられた情報から何を読み取り、どういう対応をしていくかという応用力や想像力、実行力などこそが社会生活には必要とされるとしての設問である。この調査で総合的に1位になったのがフィンランドであった。
・フィンランドの学校の特徴
フィンランドの学校には「スムーズ・スタート」と呼ばれる習慣がある。これは個々の子供たちのレベルを見極め、それによってグループ分けをして授業をする方式である。新入生の個性や、得手不得手、フィンランド教育の基本である母語の読み書きの理解度を知るために行う。通常のカリキュラムでも、低学年の場合は特にグループ分けで授業を行う。 フィンランドの教育の基本はオープンであることである。フィンランドの学校に入学式はない。新学期は8月末から始まり、新入生の両親たちは5月のある日に学校に招かれ子供が学校でどんな授業を受けるのかの説明を受ける。これは単なる説明会でありカジュアルな格好で来る親も多い。この説明会以降親たちはいつでも好きな時に学校を訪問することができる。フィンランドでは夏休みにまったく宿題を出さない。夏休みはとにかく生徒も教師も学校から解放されて、自分の時間を過ごすということだ。基礎学校の9年間は、教材はもちろん給食も含めてすべて無料である。また学校には予算があるのでその予算で購入した教科書のほかにノートや鉛筆、消しゴムなどといった文房具を支給する。教科書は直接答えを書き込むものはできないがそれ以外の教科書は使いまわしをする。フィンランド人は、自分のことに集中してあまり他者に関心を持たない。他人に迷惑をかけることを嫌い、他者のペースを尊重する。そういう国民性が移民を孤立させている面もある。そのため週に2時間宗教の時間があるが、キリスト教以外の生徒は宗教の時間、クラスを離れて別の先生から倫理や道徳を学ぶ。
フィンランドの子供たちが優秀な成績を上げたのは、フィンランドが行ってきた教育改革がもたらしたものと言ってよいだろう。修士号の取得を義務づけられている教師のレベルの高さ、教育現場が自治権を持ったことで実現した地域に融合した柔軟な教育方針と実践力、子供たちの問題をさまざまな側面から支えるサポートシステムなど、ひとつではくくれない要因が重なって達成されたものである。
(参考文献:「フィンランドの教育力」リッカ・パッカラ)