ウィキリークス4
出典: Jinkawiki
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メディアとの提携
ウィキリークスが最もこだわることの一つは、情報公開の方法にあります。リークされた情報を精査して、完全な形で世間に公表するだけでなく、アサンジ氏が頑なにこだわっている部分が、まさにその「公開方法」なのです。 アサンジ氏は、自分たちのサイト「wikileaks.org」に情報を載せるだけでは満足ができませんでした。どのような方法をとればセンセーションを巻き起こすかを常に考え、その結果、自分たちには、然るべきメディアと提携すべきだという考えに至りました。そこで名乗りを挙げたのが、ニューヨークタイムズ紙(米)、ガーディアン紙(英)、そしてシュピーゲル誌(独)です。ウィキリークスにとって過去最大規模の、「コラテラル・マーダー」(後述)の公開は、この三社との共同作業によるところが大変大きなものでした。その後の情報公開では、フランスとスペインのメディアの協力も得ています。 膨大な資料の精査、それらの再構築、そして、世界各国への公開日程など、綿密な打ち合わせを重ねたことで、情報発信の強度は完璧なものとなりました。 更に、アサンジ氏がワシントンDCのプレスクラブで記者会見をし、世界中の注目の中、自ら「コラテラルマーダー」の詳細を報告、このようなメディアに情報を発信する手段をより凝ったパフォーマンスのもとで行うことで、世間からの注目を引きつけることに、常に成功しているのです。
完璧なセキュリティシステム
ウィキリークスに何故情報が集まるのか?ウィキリークスに寄せられる情報の多くは、実は、郵送によるものです。郵送であれば、デジタル特有の痕跡が残ることなく、安全に情報提供ができるという内部告発者の考えもあることでしょう。では、デジタル、つまりインターネットでの告発の場合はどうなのでしょうか?ウィキリークスは、匿名性の維持には絶対的な自信を持っています。具体的に言うと、情報提供者にとって、ウィキリークスサイトにある「SUBMIT(提出)」のボタンから最初のアクセスが始まるわけですが、誰がどんなに調べてもその出所がわからないように情報提供者とウィキリークスの間には、複数の経由地点を設け、内容も暗号化されます。情報伝達の経由地点は、ウィキリークス協力者となっている世界各地のエンジニアが所有するコンピュータです。その幾つかの経由地点のどこかで、情報提供元に関する情報は破壊されます。ウィキリークスには、暗号化された情報のみが入ってきて、更に暗号を解いて、初めて元の文書が出現するのです。情報入手経路を複雑化し、なお且つ入手元の情報を破壊すれば、リークに関するリスクは0に近い状態になるというわけです。この方法が浸透するにつれて、ウィキリークスには多くの情報が集まるようになり、ウィキリークス側では、徐々に「情報が勝手に入ってくる」状態が確立されていきました。
情報解読と精査
ウィキリークスには、政治・経済・諜報機関・科学関係などジャンルを問わず、沢山の情報が寄せられます。そこで出てくる問題が、「言語」そして「専門知識」の壁です。ウィキリークススタッフがその高い知能を駆使しても、こればかりはどうにもできないことです。そこで、寄せられた情報の翻訳や、専門的見解に関しては、ボランティアの専門家や翻訳家に委託します。ウィキリークスには既に各方面の専門家、学者や政治家など、多くの支持者がいます。その支持者であり、ボランティアでもある人々の強力な援助を得てウィキリークスの情報公開へのステップは進んでいきます。更に、ウィキリークス創設後、前述通りジャーナリストの協力を煽るようにもなりました。理由は至って明確なものです。ウィキリークスが公開する情報は、人々がその真偽を確認するには及ばない内容だからです。ウィキリークスによって初めて世間にお目見えする情報を、人々が疑うことなくそのままを受け入れることは皆無といえます。例えば、後述するイラク戦争関連のビデオに関しても、現地に調査員を派遣して、裏付け調査を行っています。このように、ウィキリークスでは、情報をボランティアの翻訳家とその道の専門家が解読し、更にジャーナリストによる裏付け調査で、公開するに相応しい完璧な形にしていくのです。
PR活動
ウィキリークスがこれだけ有名になったのは、そのシステム力や組織力のおかげ、というだけではありません。ウィキリークスが一般の人々に知られる前に、既に世界中の政治家や活動家に知られた存在になっていたのは、ほかならぬアサンジ氏自らが手がけた「PR活動」もしくは「外交」によるものだと言えるでしょう。 アサンジ氏は、自ら組織のスポークスマンになり、ウィキリークスの活動について説明してきました。時にはテレビ出演も多くこなし、人権団体のフォーラム、コンピュータクラブの年次総会などにも積極的に出演してきました。 アイスランドが情報公開に後進的であったために国営危機に陥った時には、自らの「情報公開促進」の哲学をテレビ出演して披露し、アイスランド国民の心を完璧に掴みました。アサンジ氏が現れ、自らがリーダーシップを取ると確約してくれたことで、国民は立ち上がることができたのです。アサンジ氏は、人間関係は下手だといわれていますが、戦略的に人と接することには長けていました。国際フォーラムに出席するたびに確実に人脈を広げ、相手の心に訴えかける最高のスピーチをし、自分が持つ魅力とカリスマ性を存分に発揮することで支持者の数を広げていったのです。アサンジ氏がこれほどまでに表舞台で活動しなければ、今のウィキリークスの組織力はなかったといっても過言ではないでしょう。
アイスランドでの活動
ウィキリークスは、2009年8月1日に、アイスランド最大の銀行、カウプシング銀行の不正融資事件に関する文書を公開しました。この不正融資が、後にアイスランドという国家の経済を破綻させる引き金となり、債権者を多く抱えるイギリスやオランダでは大規模な抗議活動が連日行われました。この文書のリークがきっかけで、アサンジ氏と、ウィキリークスのNo.2であるD・ベルク氏がアイスランド国民から賞賛を浴びることになりました。このとき、二人には、ある構想が芽生えます。それが、「ジャーナリズム・ヘイブン(ジャーナリズムの天国)」という 構想です。二人はアイスランドに招待され、学生の活動家、スマリ・マッカーシーやヘルベルト・スノラッソンらと、アイスランドをジャーナリズム・ヘイブンにする構想について有意義なディスカッションを交わしました。更に、テレビ出演のオファーを受けた二人は、公の場でジャーナリズム・ヘイブンの構想を強く訴えかけました。このことで翌日から、アサンジ氏とベルク氏は、国民的英雄の扱いを受けるようになります。国民はウィキリークスの方針に賛同し、ウィキリークスの活動に協力的な政治家も出てきました。後述する、女性活動家の、ビルギッタ・ヨンスドティル氏もその一人です。国家レベルでウィキリークス支持を表明した国は、アイスランドが初めてでした。以後、アイスランドは、ウィキリークスにとって、大事な活動拠点のひとつになります。
スウェーデン
スウェーデンには、ウィキリークスのメインサーバが設置されており、ウィキリークスにとっては大切な拠点になっています。ウィキリークスは、プロジェクトによって、レイキャビック(アイスランド)やロンドンでも集中的に仕事をしてきましたが、元核シェルターだったところにサーバを設置したことには、大きな意味があると思います。スウェーデンは、情報保護先進国です。そのセキュリティは世界でも類を見ないほど強固なもので、ウィキリークスは絶対的な信頼を寄せています。また、スウェーデンでは、徹底的に匿名性も保障されています。捜査の対象になった人物や容疑をかけられた人物は、逮捕に至るまで、名前も年齢も明かされることは決してありません。人も物事も善悪で見るのではなく、いかなる例外も許すことなくその情報は保護されることになっているのです。アサンジ氏は、スウェーデンへの政治亡命も考えていました。もっとも、よりによって、そのスウェーデン当局に、婦女暴行事件(後述)で逮捕されるに至るとは、本人も思ってもみなかったことでしょう。 入手した情報の出所に対してはその匿名性の保護を何よりも重視し、悪事は徹底的に暴いていくというウィキリークスのやり方は、スウェーデン国民の多くが支持するところです。アサンジ氏とウィキリークスは、これからもスウェーデンという国と深く関わっていくことになると思います。
参考文献
ウィキリークスとは何? (読売新聞) http://www.yomiuri.co.jp/net/security/goshinjyutsu/20101203-OYT8T00730.htm
ウィキリークス(Wikileaks)を7分で理解する方法 http://nanapi.jp/10765/