食糧問題2
出典: Jinkawiki
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飢餓の現状
すでに慢性的な食糧不足に陥っている人々の数は10億人を突破した。その数は毎年増加傾向にある。国連の食糧農業機関(FAO)によれば、飢餓が原因で一日に4~5万人の人が亡くなっており(一年で1500万人以上)、そのうち七割以上が子供だという。また、国連の推進するミレニアム開発計画では、「2015年までに世界の食糧不足に苦しむ人々の数を半分に減らし、2025年までには地球上から飢餓の問題を消滅させる」ことが目標として掲げられているが、この目標は達成がますます困難になりつつある。
原因
環境問題
国際NGOオックスファムは気候変動と干ばつやハリケーンなどの異常気象により、食糧価格が今後20年で二倍に高騰する可能性があると述べている。中国では、100年に一度の大雪が降った年に50年に一度の大干ばつに見舞われ、干ばつ状況は中国北部から中部へ拡大しているようだ。こうした異常な干ばつにより、中国産の穀物は生産量が大幅に減るとともに、その価格は異常な値上がり傾向を見せている。また、オーストラリアにおいても似たような異常気象による食糧生産の落ち込みが目立っている。2004年以降毎年のように干ばつに見舞われるオーストラリアでは国内の41%の農地が過去117年間において最も深刻といわれるほどの水不足に追い込まれている。さらに、異常気象はアメリカにおいても猛威を振るい続けている。中でもカリフォルニア州は歴史上かつてない規模で干ばつが農地を襲うようになった。他にも、南アフリカ、中東、中央アジアなど全世界で異常気象により、穀物生産や牧畜業で深刻な被害が生じている。
人口問題
現在、世界の人口は急増している。人口の増減は食糧自給率に最も大きな影響をもたらす。世界の人口は1953年の時点で25億人程度であったが、現在は70億人を超え、2050年には90億人を突破することは確実とみなされている。1950年代から比べれば、世界人口は3倍以上に膨れ上がろうとしている。人口抑制策として「一人っ子政策」を導入してきた中国でさえ、人口は増え続けている。しかも農村部から都市部へ移動する人口が急増している。その結果、2050年代には世界の人口の60%以上は都市住民になるとの予測もなされている。途上国における人口や所得の増加に加え、都市部へ人口が集中する結果、食糧に対する需要も大きく変化することが考えられる。
経済問題
世界的にみると食糧が足りないのではなく、経済格差により先進国が世界の穀物の半分以上を消費している。つまり、食糧不足で飢餓になるのは食糧が足りないからではなく、分配されないからだと考えられる。穀物は世界中の人が生きていくのに必要な量のおよそ二倍である23億トンが生産されている。しかし、世界の二割足らずの先進国では、穀物は人間が食べるだけでなく、その6割が家畜のえさになっている。その原因としては食生活の変化があり、日本では戦前に比べて肉や卵を食べる量は10倍になり、えさとして使う穀物の量も急増したことが考えられる。こうした穀物の消費の増加だけでなく、砂糖や植物油などのプランテーション作物を大量に輸入することで途上国の生活に大きくダメージを与えている。
参考文献
浜田和幸「食糧争奪戦争」学習研究所、2009
ヴァンダナ・シヴァ「食糧テロリズム」明石書店、2006 (T.I)