DV(在日外国人)

出典: Jinkawiki

2013年8月5日 (月) 22:25 の版; 最新版を表示
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DVは、英語の‟Domestic Violence”(ドメスティック・バイオレンス)の頭文字をとったことば。一般に夫婦や恋人など親密な関係の間で起こる暴力をさす。この問題に日本社会で名前が与えられたのは、1995年に北京で開かれた国連の第四回女性会議を契機とする国際的世論を受けてからである。ただ国連で打ち出された概念は「女性に対する暴力」というものでありDV以外の行為も含まれる。本項では、在日外国人に関するDVに焦点を合わせることとする。 1980年代から就労などを目的として外国人が数多く来日し、国際結婚や家族呼び寄せなどを通して定住化するニューカマーが増加した。日本人の国際結婚の割合は約14組に1組であり、日本人男性と外国人女性との結婚がその8割を占める(2006年度、厚生労働省統計)。そうした社会状況の中で外国人のDV被害はこれまで潜在化する傾向にあった。法律や相談機関に関する情報が十分に伝わっていないことや、外国人特有のDVの形態や在留資格など固有の事情を理解し、多言語で対応できる相談機関が少なかったことがその背景にある。

暴力の形態

DVに当たる行為には次の形態が含まれる。 ・身体的暴力(殴る、蹴る、物を投げるなど) ・精神的暴力(罵る、脅す、外出や友人関係を制限・監視、服従を要求するなど) ・性的暴力(性交を強要する、避妊に協力しない、いやなことを強制するなど) ・経済的暴力(生活費を出さない、お金を自由にさせないなど) このような「虐待」「尊厳を踏みにじるむごい行い」というべきものである。外国人特有のDV形態として、文化的な暴力(「出身国の言葉を話すな」「食べ物を食べるな」「同国出身の人と付き合うな」など、相手の文化や宗教を否定し人格を傷つける)や、在留資格を利用した暴力(「離婚したら日本にいられなくなる」と脅したり、パスポートを取り上げるなど、外国人の法的社会的立場を利用してコントロールしようとする)がある。 DV加害者は多岐にわたっており、国籍、社会的な地位、収入や教育レベルとは関係がないことが指摘されている。

支援・解決の壁

言葉の壁、制度の壁、心の壁が外国人のDV問題を深刻化、複雑化させている。日本語が話せないことで、意思疎通が難しいことや、制度や法律、支援団体に関する情報が得にくいことがある。制度面では、在留資格の有無や種類により受けられる公的支援に違いが生まれたり、利用できる制度について十分知らされていないことが問題となる。また超過滞在の場合、入国管理局への通報を恐れて被害者が行政サービスを利用しないことがある。心の問題では、被害者が親族や周囲からのサポートを得られず孤立することや、自分の文化を尊重されないために心に深い傷を負うことがある。

取り組みと現状

法的支援として、DV防止法(配偶者からの暴力の防止及び被害者の保護に関する法律)が2001年に施行された。2007年の第二次改正では、被害者の実情に見合った保護・救済措置がとられるようになってきた。これまでは、都道府県単位での取り組みが中心だった配偶者暴力支援センター等の整備を市町村の努力義務とし、市町村単位のきめ細かい支援体制に道が開かれたこと、被害者を加害者から守る保護命令制度の適用基準を拡充するなど、より被害者の立場に立った運用が可能になったことなどが挙げられる。しかし、日本のDVに対する支援体制は、欧米諸国や、アジア各国と見比べても、まだまだ十分でない状況にある。1990年代以降、各地域の草の根女性グループがシェルターを開設し、支援・啓発活動を行ってきた。現在約100の民間シェルターがあり、外国人のDV被害者支援団体も活動をしているが、ほとんどが予算などの関係上、通訳確保が難しい(特に少数言語)ため意思疎通がうまくいかないことが現状だ。


参考文献

「移住(外国人)女性DV施策に関する自治体調査と提言」移住労働者と連帯する全国ネットワーク・女性プロジェクト

北中千里「あらゆる性別を包括するドメスティック・バイオレンス政策への課題」Gender and sexuality:journal of Center for Gender Studies ICU05

多文化共生キーワード事典編集委員会「多文化共生キーワード事典」明石書店、2004(T.I)


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