核兵器開発
出典: Jinkawiki
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核による被害
広島・長崎への原爆投下以後、核兵器が実戦で使用されたことはなかったが、放射能による被害は、開発・製造・実験・配備などの過程でも発生し、世界各地のたくさんの人々を犠牲にし、今なお後障害で苦しめている。かつては豊かな自然の中で人々が自給自足の暮らしをしていた太平洋マーシャル諸島では、たび重なる核実験により美しい自然が破壊され、島から移された島民は、残留放射能によりいつ故郷に戻れるか全くわからない状況にある。また、核実験場周辺の住民や核実験に投入された兵士(アトミック・ソルジャー)、核開発の最前線だった核兵器製造工場やウラン鉱脈地帯の精錬所の従業員、その周辺住民なども核実験の放射能による後障害に苦しんでいる。
主な核兵器・原子力発電所をめぐる事故
1950年 8.05. 米国で核兵器搭載のB29墜落。火薬が爆発。19人死亡。 1957年 9.29. 旧ソ連ウラル地方の核廃棄物場で爆発。広範囲に放射能汚染。 10.10. 英国のプルトニウム生産炉が火災。環境汚染広がる。 1958年 2.05. 米国のB47が核兵器落下。未回収。 1961年 1.24. 米国ノースカロライナでB52が火災により水爆2発落下。 1963年 4.10. ボストン沖で米国原潜スレッシャー号沈没。129人死亡。 1965年 8.19. 米国でタイタン・ミサイル炎上。53人死亡。 12.05. 沖縄近海で米国の空母から核兵器搭載のA4E機落下・水没。 1966年 1.17. スペイン上空で水爆搭載の米国B52墜落。放射能汚染。 1968年 1.21. グリーンランドで水爆搭載の米国B52墜落。放射能汚染。 5.21. アゾレス群島沖で米国の原潜スコーピオン号沈没。99人死亡。 1969年 中国の原爆工場で事故。放射能汚染のため一時閉鎖。 1970年 2.00. 旧ソ連ゴーリキ市西の原潜建造所で爆発。数人死亡。放射能汚染。 1973年 6.08. 米国のハンフォード核工場で大量の放射能漏れ。 1976年 10.25. 旧ソ連バルト海海軍基地で地下核爆発。40人以上死亡? 10.27. 米国オークリッジ核工場で火災。200人以上が避難。 1978年 1.24. 旧ソ連原子炉衛星、カナダ北西部の湖に墜落。放射能汚染。 1979年 3.28. 米国ペンシルバニア州のスリーマイルアイランド原子力発電所事故。 7.06. ムルロアのフランス核実験場で爆発事故。2人死亡。 1980年 8.21. 旧ソ連原子力潜水艦(E1型)K-66、沖縄近海で火災事故。9人死亡。 1986年 4.26. 旧ソ連(現ウクライナ共和国)のチェルノブイリ発電所爆発事故。31人死亡。「死の灰」がヨーロッパ全域にわたり、地球的規模の放射能汚染を引き起こした。 9.11. 旧ソ連の原子力潜水艦がミサイル誤射。中国領に着弾。 10.03. 旧ソ連原子力潜水艦K-219、西大西洋で原子炉の一部が爆発、その後沈没。乗員4人死亡、116人は米艦に救助される。 1988年 9.30. 米国サバンナリバー核工場で28年間に30件の重大事故。 1989年 4.09. 旧ソ連原潜ノルウェー沖で火災・沈没。42人死亡。 11.02. 旧ソ連核実験場セミパラチンスク等が高度の放射能汚染と報道。 1993年 4.00. ロシア・トムスク核施設・プルトニウム再処理工場で爆発事故。 1995年 12.00. 福井県、動燃の高速増殖原型炉「もんじゅ」ナトリウム漏れ事故。 1996年 1.00. フランスが核実験をおこなってきた南太平洋のムルロア環礁から、放射能漏れを確認。 1999年 9.30. 茨城県東海村のウラン加工施設で国内初の臨界事故が発生し、放射線被曝により、2000年4月までに2名が死亡 2000年 8.00. ロシア北方艦隊の原子力潜水艦「クルスク」がバレンツ海で沈没。118人死亡。 2003年 4.00. イラク中部にある原子力関連施設で「イエローケーキ」と呼ばれる精錬ウランの貯蔵庫が略奪を受け、精錬ウラン容器のドラム缶を持ち出された。施設周辺住民が被曝した可能性が高い。
核兵器の進化
東西冷戦体制のもと、各国の核開発競争はとどまるところを知らず、1985年ころまでに核保有5か国によって蓄積された核兵器の総量は、爆発威力にしてTNT火薬22,000メガトン(220億トン)分と推定され、これは、広島型原爆の147万発に相当するものであった。単純計算すると、約2千億人の死者をもたらし、地球上の人類を35回以上殺せることになる。 また、技術的にも飛躍的な進歩を遂げ、特にミサイル誘導技術が改良されて命中精度が上がり、核兵器の威力は著しく増大している。1991年1〜3月、中東のペルシャ湾周辺における湾岸戦争で使われた巡航ミサイル(CM)トマホークは、核弾頭を搭載できるとともに、コンピュータに目標地点までの飛行経路が記憶されており、自動的に進路を修正しながら飛び、ほとんど正確に着弾する。核兵器運搬手段としても、敵のレーダー電波を反射しないように特殊加工を表面に施した「ステルス(stealth)」爆撃機や、密かに海中から弾道ミサイルを発射できる潜水艦などが開発されている。50年に及ぶ核兵器開発競争は、小型化、運搬手段の長射程化、命中精度の向上と複数弾頭化、戦略・戦術核兵器の多様化の道を進んできたのである。
核兵器の種類
核兵器体系は、核兵器(爆弾、弾頭)、運搬手段、誘導装置などからなる。核兵器には、原爆(原子爆弾)と水爆(水素爆弾)があり、水爆は広島型原爆の何千倍もの圧倒的な爆発威力をもつ。核兵器の開発は、まず原爆から水爆という順序で進められた。 核兵器には、戦略核と戦域・戦術核との区別があり、概ね爆発威力の大きいものが戦略核、小さいものが戦域・戦術核と分類されるが、その基準は必ずしも厳密なものではない。その区別は次に述べる運搬手段の性格によるところが大きく、敵本国を直接攻撃できる大陸間弾道ミサイル(ICBM)、潜水艦発射弾道ミサイル(SLBM)、戦略爆撃機に搭載されるものが戦略核兵器である。それよりも射程や航続距離の短い、敵本土以外の目標を攻撃するための中距離弾道ミサイル(IRBM)、準中距離弾道ミサイル(MRBM)、中距離爆撃機に搭載されるものが戦域核兵器である。さらに短い射程のミサイル(SRBM)その他に装備されたものが戦術核兵器である。その種類は極めて豊富で、戦闘爆撃機搭載の核爆弾、空対地・空対空・地対空の各種ミサイル、陸海軍用核砲弾、核魚雷、核爆雷、核地雷等々、あらゆる分野で通常兵器と並んで装備されている。なお、核地雷や核砲弾、SRBMなどは、戦場核と呼ばれることもある。
参考文献 広島平和記念資料館Website http://www.pcf.city.hiroshima.jp/
Yoshisan