カザフスタン
出典: Jinkawiki
←前の版 | 次の版→
カザフスタン共和国(カザフスタンきょうわこく)、通称カザフスタンとは、中央アジアに位置する国家である。首都はアスタナ、最大都市はアルマトイ。ロシア連邦、中華人民共和国、キルギス、ウズベキスタン、トルクメニスタンと国境を接し、カスピ海、アラル海に面している。
カザフスタンの養育放棄問題
1991年に旧ソ連から独立を果たしたカザフスタン。世界有数の広大な国土と豊富な天然資源を持ち、最近はレアアース(希土類)の産出国として存在感を増す。しかし経済が発展を遂げる一方で、体制転換後もカザフスタンが抱えてきたのが、子供の養育環境にまつわる問題だ。
カザフスタンを含む旧ソ連の親露国で構成される独立国家共同体(CIS)は、他の地域に比べ、親元では暮らせず施設で生活する子供の比率が高い。カザフスタンでは現在、1万1000人の子供が親元ではなく施設で育ち、そのうち1500人が0~3歳の乳幼児だ。
なぜ養育放棄がカザフスタンをはじめとするCIS諸国で問題となっているのか。それは旧ソ連時代の“負の遺産”や、独立後の混迷による影響があるからだという。19世紀末~20世紀前半の近代に東欧を含む欧州では、大規模な施設で画一的に効率的な教育をと、乳児院や孤児院が整備されていった。この時代、子育てを国家の手に委ねたほうが子供に良いといったような考え方が規範とされたようだ。またスターリン支配下の旧ソ連では多くの政治犯の子供が親から引き離され施設で育てられたという。その後、西欧では親子関係を重視した現代的な子育て観へと修正されたが、旧ソ連圏では浸透せず旧弊が残った。
一方、旧ソ連崩壊後、独立間もないカザフスタンでは、乳児院や孤児院の子が金銭を介した養子縁組のターゲットとなったこともあった。現在、カザフスタン政府は、乳幼児の養育放棄の防止に向けた取り組みに着手している。海外への養子縁組は2010年のハーグ条約加盟を機に停止されている。また子育てが困難だと見られる親を支援するため、仕組みづくりも始まった。
また、このようなことから「フィリップモリス社のタバコ生産における児童労働」のような問題まで発生している。 この事件は2010年7月14日にタバコメーカーのフィリップモリス・インターナショナルが、カザフスタンでタバコ栽培農場で児童労働があったことが発見され、「深刻な問題」と認めた事件である。米国の人権団体ヒューマンライツ・ウォッチ(以下、HRW)による調査で、「フィリップモリス社がタバコを調達しているカザフスタンの農場に10-17歳の児童労働者72人がいたことが報告された。」ということである。
子供のための施設のはずが、一面ではあるものの、負の慣習をひきずり親子を引き離す役目を担ってしまった乳児院や孤児院。その変革に向け、政府は、乳児院や孤児院に母子支援のための新たな役割を持たせようと取り組んでいる。 時には、子供の養育環境に不安のある母親が、生活が安定するまで子供とともに乳児院で暮らせるようにして支援する例もあるという。
また昨年、ユニセフはカザフスタン政府の要請を受け、子供の養育放棄を予防するためのモデルプログラムを、首都アスタナ、カラガンダ、セメイ(旧セミパラチンスク)の3地域で始めた。3歳児以下で、かつ体が不自由だったり、発達に遅れが見られるような子供を持つ家庭に向けて、保健省やNGOのソーシャルワーカーが継続的な相談に乗るなどの支援をしている。またこの3地域では、病院や地域のヘルスセンターにソーシャルワーカーを配置する取り組みも始まった。こうした施設には妊婦や出産後間もない母親が診察に訪れるため、経済状況や家庭内暴力にあっているかなど、養育放棄のリスクが高いケースを把握するようにした。その情報を地域のNPOやNGOとも共有し、より生活に密着した支援も可能にした。
こうした制度面の整備を進める一方、カザフスタン政府は「家族のあり方」について国民の意識変革も促している。2012年、国家法として「ファミリーコード(家族法)」を整備。家族を守るため、政府が担うべき役割や、家庭内での父・母が担う責任だけではなく、経済発展によって崩壊しつつあった地域コミュニティーの役割についても明文化されている。
独立から20年余り、まだ緒にある国づくりのためにも、養育放棄克服への取り組みはさらなる深化が求められている。
参考資料 http://sankei.jp.msn.com/world/news/130215/erp13021512550001-n1.htm
http://acejapan.org/info/2010/08/4634/?gclid=CK611uKA2rgCFUMzpAodVkgAGA
ハンドルネーム:kinge