フリードリヒ・ハイエク

出典: Jinkawiki

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フリードリヒ・ハイエク(1899年5月8日 - 1992年3月23日)は、オーストリア・ウィーン生まれの経済学者、哲学者。オーストリア学派の代表的学者である。 経済学と哲学だけでなく、心理学にも多岐な業績を残した。リバタリアニズム(個人的な自由、経済的な自由の双方を重視する、自由主義上の思想であり、 他者の権利を侵害しない限り、各個人の自由を政府が侵害するべきではないという考え)の思想を持つ。

1899年 オーストリア・ハンガリー帝国の首都ウィーンに生まれる。
1918年 ウィーン大学に入学。
1923年 渡米し、ニューヨーク大学で研究助手として働く。
1924年 ウィーンに戻り、ハーバラー、マハループ、モルゲンシュテルンらと共に私的なセミナーを開く。
1931年 ライオネル・ロビンズにロンドン・スクール・オブ・エコノミクス (LSE) での講演に呼ばれ、これ以降、LSEの教授職になる。
1933年 「貨幣理論と景気循環」を発表
1941年「資本の純粋理論」を発表
1944年 発表した「隷属への道」 は社会主義、共産主義、ファシズム、ナチズムが同根の集産主義であると批判し当時のベストセラーとなる
1948年 「個人主義と経済秩序」を発表
1952年 「感覚秩序」、「科学の反革命」を発表
1955年 ロンドンのIEAの設立に関与。後のサッチャー革命の理論的拠点となる。
1960年 「自由の条件」を発表
1962年 西ドイツのブライズガウにあるフライブルク大学の経済政策教授となる。
1973年 「法と立法と自由 Ⅰ」を発表
1974年 ノーベル経済学賞受賞。田中清玄と親交を結び、ノーベル賞授賞式には唯一の日本人としてメーンテーブルに招待した。
1976年 「法と立法と自由Ⅱ」を発表
1977年 ザルツブルク大学名誉教授。
1979年「法と立法と自由 Ⅲ」を発表
1988年「致命的な思い上がり」を発表
1991年 ブッシュ大統領により、アメリカの民間人へ与えられる最高の栄誉賞である大統領自由勲章を受章。
1992年 逝去の報に際して、ブッシュ大統領は直ちに追悼声明を発表し、「現代の最も偉大な思想家の一人」と称している。


ケインズとの対立

1929年10月の大暴落の結果、市場経済は人々の信頼を失った。国民は政治の経済への介入を望み、ケインズを擁立するに至る。 それに対しハイエクは一貫して政府が経済に積極的に関わる事に反対し、ケインズの「借金をしてでも政府が財政支出をすべき」とする一般理論とは真っ向から対立した。 ケインズの死後、ハイエクは今度は社会主義との議論に熱意を向けた。今でこそ社会主義は廃れた思想ではあるが50年代の世界の知識層は、 人間は理性的に管理できるという社会主義を好み、自由至上を主張するハイエクには厳しい目が向けられ、卵をよくぶつけられたという。


ハイエクの主張

ハイエクは社会主義を致命的な思い上がりだとして厳しく批判した。 社会主義の問題点の一つに、目的の合体ができないということがある。

例えば、ある個人が人生の目標を定める時、社会主義政府はその個人全員の目標を全て足し合わせなければいけない。そしてその個人間の目標はほぼ確実に相互に矛盾する。 結果として国民の一部には恣意的な犠牲を強いることになる。(ハイエクは恣意的な強制を最も嫌った)

そしてもう一つに、社会主義は値段も生産量も国が決めてしまうので、労働者が努力をしなくなるという問題もある。努力しなくても政府が商品を買い取ってくれるのでは、誰も技術革新の為に頑張ろうとはしないだろう。

社会主義を押し進める新古典派(当時の主流学派)は、その理論に「政府は適切である」という前提を置いていた。適切な政府が適切に政治を行えば適切な社会が出来るという理屈だ。しかし、ご存知のように適切な政府なんてものはありえない。政治家だって人間なんだからお金が欲しいし、誰かをひいきしたくなるときもある。

仮に全ての欲を捨て国の為だけを思う聖人が政治家になったとしても、その人物が全知全能の神でない限り適切な政府は成り立たない。全ての国の情報を知ることが不可能であるし、災害などの不確定の未来を予知することはできない。

現実的には、政府は不十分な情報のもと、不十分な未来予想に基づいて、利己的な政治家によって運営される。これによりハイエクは新古典派の「適切な政府」の前提を批判したのだった。


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