水問題 2

出典: Jinkawiki

2014年7月27日 (日) 01:31 の版; 最新版を表示
←前の版 | 次の版→

概要

アジア・アフリカをはじめとする途上国地域はもちろん、先進国においても、世界の人々の命、生活、そして経済を考える上で、最重要事項である「水」。「水」は、人々の命を、直接的にも間接的にも支えている最も大切な「資源」と言える。第一に「安全な飲料水の確保」は人々の健康や命の問題につながる。実際に、世界では毎年180万人の子どもたちが不衛生な水が原因とする病気で命を落としている。次に、「農業用水の安定供給」は食料問題につながり、さらに「下水対策、水質汚染対策」は環境や公衆衛生の問題につながる。そして突発的な洪水や台風などにも応じられる「治水対策」は、人々の生命や財産を守るために、なによりも地域社会の安定にとって必要不可欠である。だからこそ水資源の保全や治水のためにも「適切な水資源の管理や気候変動への対応」が重要な課題となっている。


水の深刻な問題

① 飲み水問題

世界の9億人弱の人が安全な飲料水にアクセス(WHOが定義したものであり、1km以内に一人1日20リットルの水の確保することができる場所があることが目安とされている)できないと言われている。1kmの距離を歩くと片道約15分かかるため、安全な飲み水へアクセスできない人たちというのは、生活に必要な水を得るのに毎日往復30分家族全員を運ぶのに例えば4往復必要なら2時間以上の水汲み労働が必要となる。9億人という数字でもかなり改善した数字であり、1990年代以降、世界中で「水」の安定供給を標語として途上国支援をしていく動きが進んでいった結果、安全な水にアクセスできない人の数は確実に減少傾向にある。安全な水の確保というのは、ただ「命」の問題だけではなく、子どもたちの就学率が改善されたり、女性の社会進出が促進されたりしている。なぜならば、水汲みはとてつもない重労働であり、多くの開発途上国では水汲みは子どもや女性の仕事とされているからである。水は生命の維持には欠かせないものであり、日々の生活を文化的に暮らすために欠かせないものである。そのため、水汲み労働はあらゆる活動に優先することになる。その結果、水が不足している社会では、子どもや女性は水汲みのために他の活動に関わる機会が奪われてしまう。だからこそ安全な水へのアクセスができない状況を解消することが重要視される。水のアクセスが改善すれば、今まで水汲みのために時間を奪われていた子どもたちも学校に行く時間が作れるようになり、女性もさまざまな職業に就く機会を得られるようにもなる。飲料水がたやすく手に入る社会が実現すれば、人々の命が救われるだけでなく、子どもの教育水準向上や女性の社会進出も促進され、経済発展にもつながるのである。

② 水の価格問題

水は常に誰もがふんだんに利用しても支払える適正な値段であることが大切である。しかし、実態は異なっている。途上国の都市では、水道施設から水を得ている地域と、水道がない地域が存在しているが、水道施設がある地域のほうが値段が安いのが現状である。水道がなければ、自分で水を汲んでくるか、水売りから買うしか手段がないが、この値段が意外と高いため、その地域の人々の頭を悩ませている。ケニアの例を挙げると、水汲みに頼むと200リットル運ぶのに約150円、1トンあたりに換算するすると750円程度払うのだと言う。日本の水道水は1トンあたり全国平均で約200円であるため、日本の4倍近くも払わなければ水が手に入らないことになる。また、フィリピンのマニラでは、富裕層が住む地域は水道施設が敷かれているが、そうでない地域は水道の約10倍のお金を払って水売りから水を買っている。金持ちのほうが安く水を使えるのに対し、貧困あえぐ人々のほうが高い水しか使えないのが今の状況である。

③ 治水問題

洪水が起きると、衛生面でも問題が発生し、農業にも多大な被害が及んでしまう。ほとんどの作物は水浸しになるとだめになってしまう。この問題も、同じ地域でも貧富の格差を受けてしまう。なぜならば、同じ地域でも、洪水の被害に遭いやすい場所と、そうでない場所があるからである。洪水の被害に遭うのは、たいがい川のそばの低地や崖の下などで、こうしたところは地価が安いところが多いと言う。一方、洪水に遭いにくい場所は、台地の上などで水はけがよく、地価が相対的に高いところである。これは日本をはじめ先進国でも、途上国でも同じ図式と言える。つまり、洪水の被害を受けやすいところに住んでいるのは、経済的弱者が多いのである。洪水対策につながる治水事業は、しっかり対策をとっていないと膨大な経済損失が出現される可能性も秘めているにも関わらず、通常時には関係ない話なため後回しにされがちである。計画的な治水対策があってはじめて、社会の安全と経済発展が支えられている。この事実を先進国も途上国も、とも意識するべきであるのだ。


  人間科学大事典

    ---50音の分類リンク---
                  
                  
                  
                  
                  
                  
                  
                          
                  
          

  構成