国庫維持学校
出典: Jinkawiki
イギリスの学校には日本と同様に公営学校と私営学校が存在していたが、1988年の教育改革法によって、公営にも、私営にも属さない国庫維持学校が新たに設立されるようになった。イギリスのサッチャー政権は、1980年代以降、教育においても民間活力導入を柱として、特に学校理事会の改革、「自主的学校運営」を進めてきた。学校の運営に関して地方教育当局から各学校に責任を移行したのである。この動きが強まる中で、国庫補助学校の導入が決定された。この動きは一般にOpt-outと呼ばれ、公立学校が保護者の投票や教育大臣の認可を受けて、学校予算の裁量などに関して、地方教育当局の管轄から独立し、土地・建物を所有し、教員の雇用主として存在し、国から直接補助金を受けて運営されるようになっている。したがって、学校理事会には地方教育当局の代表者には含まれていない。 1997年5月の総選挙で大勝し成立したブレア政権は、国庫補助学校への予算配分が不公平であるとの理由でこの見直しを公約とした。そして、1998年に教育水準・新学校法が成立し、99年から国庫補助学校は地方補助学校に変更された。予算配分に関して、地方教育当局が関与するものの、土地建物を所有し、学校の自主的運営の面では、他の学校より強く保たれている。
公費の補助を受けて、地方自治体が維持する学校
1、コミュニティスクールまたはカウンティ・スクール
我が国の公立学校に相当するもので、都道府県の教育庁にあたる地方教育局によって管理・維持されている。学校全体の約2/3を占めている。
2、ボランタリー・スクール 初めは英国国教会やローマ・カトリックなどの宗教団体や有志団体(ボランティア団体)が設立した学校であるが、教員の給与、校舎の補修費、その他の学校管理運営に必要な諸経費は公費の補助を受けている。そのため、形態上は我が国の私立学校に最も類似している。学校数は学校全体の1/4である。
このボランタリー・スクールはさらに次のように分けられる。 a、コントロールド・スクール(管理学校)…ボランティア団体によってによって設立され、その後、地方教育局によって全面的に財政援助を受けて運営している学校。 b、エイデット・スクール(助成学校)…ボランティア団体によって設立され、現在も一部の運営に関しては独自の責任の下で行われているが、学校の経営維持費の85%は地方教育局に依存している。宗教教育を行うことができる。 c、スペシャル・アグリーメント・スクール(特別協定学校)…学校の設立には地方教育局がその建築費の1/2~3/4を負担し、さらに施設、設備の維持費の85%を補助している。父母の希望があれば宗教教育を行うことができる。
このようなボランタリー・スクールには管理機関として、それぞれの学校に理事会が置かれている。この理事会は学校運営に大きな権限をもっていて、1学期に1回は会合を持ち、監督を行っている。また、当該学校の教育方針、教育過程、性教育のやり方、学校生活や規律の基本方針、通常の時間以外の学校施設の使用規定、予算の配分、教職員の任命などは、いずれもこの理事会で審議、決定される。
公費の補助をうけていない学校
インデペンデント・スクール(独立学校)
私営の私立学校で、公費による補助は一切受けず、生徒の授業料によって維持されている。この種の学校はイギリス全土で約2500校あり、約7%に相当する生徒が在籍している。このうち13歳~18歳までの生徒を教育するパブリック・スクールが約233校あり、2~3%当該年齢層の生徒を受け入れている。
インデペンデント・スクールを設置するためには、学校として
・施設が適当である。
・十分かつ適切な教育が行われる。
・理事および教員が適当である。
と認定されれば、インデペンデント・スクールとして認可されるのである。このようなことから、かつてはイギリスでは移民の多い地域や特定の宗教団体からインデペンデント・スクール設置の申請が多く出されていた。一般の公立学校では独自の宗派的宗教教育や宗教的行事、宗教的戒律を保持し、実践することができないというのがその主な理由であった。そして、移民立、民族立、あるいは宗教立の形態をもったインデペンデント・スクールが建国されるようになったが、移民制限法、英国国籍条例、人種差別禁止法などが制定されると、インデペンデント・スクールは経営的に苦境に陥り、公的な財成援助を仰ぐようになり、多くの学校はボランタリー・スクールに転化していったんである。そのため、今では1宗派を中心にしたセクト毎のインデペンデント・スクールは授業日程を見る限り我が国の学習塾に相当するもので、正規の学校とはいえないものである。shuto
参考著書
「世界の教育」 財団法人日本私学校教育研究所
「諸外国の学校教育」文部省 教育調査第122集
「世界の学校―比較教育文化論の視点にいたって」福村出版 二宮皓
「世界の教育改革―21世紀への架ヶ橋」東信堂 佐藤三郎
「イギリスの多文化・多民族教育」国土社 佐久間孝正