東海大学医学部付属病院事件
出典: Jinkawiki
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東海大学医学部付属病院事件
患者(当時58歳)は多発性骨髄腫(不治のガン)のために東海大学医学部付属病院に平成2年12月4日から入院していた。この際、患者の意識はあったが、病名は家族にのみ告知させていた。その後、患者の病状は悪化してゆき、疼痛刺激に対してもまったく反応を示さないこん睡状態に陥った。
平成3年4月13日の正午ごろ、家族は患者の辛そうな姿をこれ以上見ていられない、家族も看病に疲れた、楽にしてやってください。と医師に栄養を送る点滴などの管を取り去る治療の中止を求め、医師は患者が余命1~2日であることを考慮して死期を早めることを承知でこれに応じた。
午後2時ごろ、家族は患者のいびきを聞くのが辛いと医師に申し出たため、医師は鎮痛剤、抗精神病薬を通常の2倍の投与量で注射をした。
午後8時ごろ、患者の苦しそうな状態はまだ止まらず、家族がまだ息をしている、今日中に家につれて帰りたいと強く医師に求めた。 そこで医師は、まもなく死亡する可能性があり、家族の態度から追い詰められたような心境になり、患者に今すぐ息をひきとらせる意向で塩化カリウム20ミリを注射し、患者は同日急性カリウム中毒で死亡した。 翌月にこのことが発覚し、医師は塩化カリウムを注射したことを問われ、殺人罪により起訴された、今回の事件では患者自身の死を望む意思表示が無いことから、罪名は嘱託殺人罪ではなく殺人罪で起訴された。
判決では医師による安楽死の要件として
1. 患者が耐えがたい肉体的苦痛に苦しんでいること
2. 患者は死が避けられず、その死期が迫っていること
3. 患者の肉体的苦痛を除去、緩和するために方法を尽くし他に代替的手段がないこと
4. 生命の短縮を承諾する患者の明示の意思があること
の4つをあげた。 医師である被告人が、患者に対する治療行為を中止し、更に薬物注射により死亡させた行為は、患者の医師を推定できる家族の意思表示が存ぜず適法とは言えず、患者に肉体的苦痛は存ぜず、患者の明示の意思表示も無いので、積極的安楽死として容認されるものではない。 要件の1と4を満たさずに医師が殺害といった判決になった。 しかし、終末期医療体制の未発達と現状と家族の要望から、情状酌量になり執行猶予が付された。