反グローバリズム

出典: Jinkawiki

2015年5月18日 (月) 17:15 の版; 最新版を表示
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反グローバリズム

反グローバリズム 地球規模で市場メカニズムを浸透させる経済のグローバル化は、強者と弱者の格差を拡げ、環境破壊をもたらすので反対する、という考え方と運動。担い手は環境・開発などのNGO、原発・遺伝子組み換えへの反対運動、学生・労組・農業団体など幅広い。これらの反グローバル派は、1990年代以降、国際会議の開催地に結集、例えば99年秋、シアトルの世界貿易機関(WTO)閣僚会議をデモで包囲。それに対し同年のサミットが重債務国の債務削減を決定したのは、運動の成果。また世界社会フォーラムが毎年南で開かれ、多くのNGO・市民が参加。反グローバリズムの中の地球市民の運動は、グローバル化の全面的拒絶より、国際組織の民主化や特定の政策変更などを目標とし、市民社会の価値観や倫理を訴える役割を担ってきた。他方この運動には、アメリカ文化・多国籍企業の浸透、グローバル化に埋没する自国エリートなどへの反発や不満など、既存秩序の外に周辺化された人々のポピュリスト的エネルギーのはけ口という側面もある。その極端な例が銀行・マクドナルドなどへの襲撃。極左から極右までが「反グローバリズム」の行動に流れ込み、グローバル化は、左からは社会的格差を広げ、右からは国民国家を掘り崩すとされ、両極から挟撃されている。 (坂本義和 東京大学名誉教授 / 中村研一 北海道大学教授 / 2007年)

グローバル化は、一般に、世界的に情報、人やモノ、資本などが容易に、頻繁に移動することを意味する。一方、反グローバリズムとは、そうした傾向が多国籍企業による発展途上国の搾取や、通貨金融危機の発生、環境破壊を招くとする批判や運動である。最近では「スローフード」の提唱のように、文化や生活様式までも見直す動きが出ている。グローバル化は、情報通信革命をきっかけに加速されたが、制度的には、ブレトン・ウッズ体制が崩壊し、国際金融取引が大幅に自由化されたことが転機になった。もう1つの要因は冷戦の終結である。社会主義的管理体制が信頼を失墜させ、市場メカニズムへの評価がますます高まったことから、自由化政策が世界的に普及した。しかし、1999年にシアトルで開催されたWTO総会は、NGOなどの抗議行動で中止に追い込まれ、その後も、IMF総会やサミットの会場では、反グローバリズムのデモが頻発している。こうした動きの他に、NGOからの具体的な政策として、トービン税(外国為替取引に低率で課す税)を導入し、その収入を発展途上国への援助に充てることも提唱されている。しかしその一方で世界銀行などでは、中国やインドが自由化政策によって経済成長を遂げたように、グローバル化は世界の貧困解消につながるとする見方も有力である。 (石見徹 東京大学教授 / 2007年)


過去における抗議行動

 13年7月、イタリア・ジェノバで開催されたG8サミットでは、約20万人が抗議デモを行い、一部が警備部隊と衝突するなどして約170人が身柄拘束されました。デモ隊、警備部隊、報道関係者合わせて約300人が負傷し、デモ参加者の1人が警備部隊の銃撃により死亡しました。  17年7月、英国・グレンイーグルズで開催されたG8サミットでは、約20万人が会議場からほど近い都市・エディンバラで抗議デモを行いました。また、会議場直近では、サミット開催に反対する団体が会場に通じる道路を封鎖するとともに、警察部隊や飲食店の窓ガラスに投石するなど暴徒化したほか、「アフリカの貧困救済」を訴える約4,000人規模のデモが行われ、このデモに参加していた約300人が会場周辺に設けられたフェンスを破壊しました。  17年11月、韓国釜山で開催されたAPEC首脳会議では、APECの開催や貿易自由化に反対する農民団体、労働団体、市民団体等のメンバー約3万人が抗議デモを行いました。デモ隊の一部が、道路を遮断するために警察が設置していたコンテナを引きずり倒したほか、警察部隊に投石し、鉄パイプを振り回すなどしたため、双方に多くの負傷者が出ました。  17年12月、香港で開催されたWTO第6回閣僚会議では、自由貿易等に反対するNGOのメンバーら約1万人が抗議デモを行いました。このデモ隊のうち会議場に接近しようとした韓国農民団体のメンバーが警戒線を突破して警察部隊と衝突したほか、道路を封鎖するなどして、約900人が身柄拘束されました。  19年6月、ドイツ・ハイリゲンダムで開催されたG8サミットでは、約8万人が会議場からほど近い都市ロストックで抗議デモを行いました。このデモ隊の中には、「ブラック・ブロック」と呼ばれる全身黒装束で過激な行動を行うグループ等が参加しており、警察部隊への投石や店舗破壊等を行いました。また、一部のデモ隊は、会議場につながる鉄道・道路を封鎖するなどしました。これらの抗議行動により、約1,100人が身柄拘束されました。  21年4月、英国・ロンドンで行われたG20金融サミットでは、約5,000人が抗議デモを行い、デモに参加した一部の者が警察部隊と衝突するとともに、銀行の窓ガラスを破壊して行内に侵入するなど暴徒化して、80人以上が身柄拘束され、1人が死亡しました。  21年9月、米国・ピッツバーグで開催されたG20金融サミットでは、約7,000人が抗議デモを行い、約200人が身柄拘束されました。会議初日の無許可デモには、約1,000人が参加し、会議場付近で警察車両への放火や警察部隊への投石を行ったほか、道路封鎖等を行い、20人以上が身柄拘束されました。また、集まった多数の学生が、銀行や店舗を破壊したほか、警察署を襲撃するなどして60人以上が身柄拘束されました。このほか、環境保護団体の活動家8人が、市内の橋に垂れ幕を掲出したとして身柄拘束されました。  21年12月、デンマーク・コペンハーゲンで開催されたCOP15(国連気候変動枠組条約締約国第15回会議)では、気候変動問題に取り組む環境保護団体のメンバーら約5万2,000人が抗議デモを行い、デモに参加した一部の者が政府施設等のガラスを破壊するなど暴徒化し、約1,700人が身柄拘束されました。   このほか、環境保護団体の活動家が、要人車列に偽装した車両で女王主催の晩餐会会場に侵入し、横断幕を掲げる事案も発生しました。  22年6月、カナダ・トロントで開催されたG20トロントサミットでは、約1万人が抗議デモを行い、このデモに加わっていた「ブラック・ブロック」が、会議場に向かう途中で警察車両への放火、店舗、銀行等の破壊等を行うなど暴徒化し、約900人が身柄拘束されました。

参考文献

・コトバンク https://kotobank.jp/word/%E5%8F%8D%E3%82%B0%E3%83%AD%E3%83%BC%E3%83%90%E3%83%AA%E3%82%BA%E3%83%A0-181175 ・特集 ~反グローバリズムを掲げる過激な勢力の脅威~ https://www.npa.go.jp/archive/keibi/biki/apec/text/p03-1.html


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