ティーンコート
出典: Jinkawiki
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ティーンコート teen court (十代裁判)
少年犯罪に対する画期的な試みとして、今やアメリカの41の州で実施されている司法システムである。1983年、アメリカのテキサス州オデッサで犯罪を犯した子供を初期の段階で更生させるための試みとして始まった。これは厳罰主義と対極にあるもので、十代の子供が検察官、弁護人、法廷看守、陪審員(時には判事も)を務め、同世代の犯罪者を裁くというものである。ティーンコートは法廷の一室で行われる。判事と法廷看守、弁護士と被告、検察官、陪審員によって行われる。通常、判事だけは大人のボランティアが務めることになっているが、判事以外の検察官も弁護士も陪審員はすべて12才から18才までの子供たちが務めているということ以外、普通の法廷と変わりはない。 通常、ティーンコートでは社会奉仕作業(最高45時間)、陪審義務(最高5回)、被害者への謝罪レターの提出、コンフリクト解決法セミナーの受講義務などを含めた判決が下される。その際、犯行が計画的かつ意図的なものだったか、あるいは突発的なものだったか、被告に反省の気持ちや謝罪などの具体的な行動が見られるかどうかなどがポイントとなる。
・ティーンコートにより少年犯罪者には二つの選択肢が与えられる
万引き、家宅不法侵入、ケンカ、窃盗などの軽犯罪で逮捕された少年犯罪者には、少年審判所(Junenile Court)で裁判を受けるか、あるいはティーンコートを受けるかの選択肢がある。少年審判所に行けば簡略な手続きの後、社会奉仕活動などの処分を命じられる。その処分をきちんとやれば罪は許されるが、犯罪の記録が残ってしまう。一方、ティーンコートでは公開の法廷に立たされた上に、より重い処分(社会奉仕活動の他に反省文の提出や陪審義務など)を課せられる可能性が高いが、初犯の場合、犯罪の記録は残らない。判決は被告に悪いことをしたと自覚をさせ、その罪の償いをさせることで再び同じような過ちを繰り返すのを防ぐのが狙いである。一回の過ちを無かったことにできるということなのだ。更生を重視したティーンコート、あるいは懲罰を重視した少年審判所のどちらで裁かれるかによって、少年犯罪者のその後の人生は大きく変わってしまうといえるだろう。この二つの選択肢を与えているのがアメリカのやり方なのである。
・ティーンコートは再犯率が少ないと言われている
ティーンコートの重要な役割はどんなささいな犯罪でも自分で償いをさせることだ。初めて犯罪を犯した者に、自分の行為が被害者や地域社会にどんな損害を与えたかを認識させ、同時にその罪の償いを自分でさせるのだ。それによって彼らは「二度と同じ過ちを繰り返すまい」と考えるようになるのだ。一般的に言われているのは少年審判所で裁かれた者の再犯率が40%前後なのに対し、ティーンコートの再犯率は10~15%にとどまっている。
少年犯罪の特質として犯罪が軽いうちに対処していくことが大切と言われているが、厳罰化をおこなっているだけでは数の関係から軽犯罪は放置されてきているのが現状と言える。そして、軽犯罪を放置していくことで犯罪を繰り返し行う凶悪な犯罪者を成長させてしまうのである。そうなってからではもう遅いのだ。ティーンコートにより少年を初犯の犯罪で裁き、罪を償わせ、しっかりと責任をとらせていくことができる。そしてきちんと責任をとれば、前科がつかなくてすむのだ。だれでも過ちはしてしまうものであろう。その一回の過ちを許してあげることで、少年を更生させ、再犯を減らすことにつながっていくのだと思った。
引用:矢部 武著 「少年犯罪と闘うアメリカ」 東京:共同通信社 2000.6