シント・ニコラス・デー
出典: Jinkawiki
シント・ニコラス・デー(またはシント・ニコラス祭)は12月5日にあるオランダにある第二のクリスマスである。日本でも行われている12月25日のクリスマス。そしてもう一つのクリスマスであるシント・ニコラス・デーは12月5日に行われる「聖ニコラス」という聖人の誕生前夜祭のことである。 シント・ニコラス(St.Nicolass)はシンタクラース(Sinterklass)とも呼ばれ、サンタクロースの原型になった聖人だとも言われている。
注)地域や家の方針によっては12月6日をシント・ニコラス・デーとしている
<シント・ニコラスがやってくる>
シント・ニコラス・デーは12月5日にあるのだが、シント・ニコラスはその日に間に合うようにと早々と11月の半ば過ぎにやって来る。そのときにオランダのサンタクロースは、北の国からトナカイの引くソリに乗ってではなく、スペインから船に乗って、しかも黒人のムーア人の少年お供につれてやって来る。
オランダの子供たちは、シント・ニコラスは11月の第三日曜日にアムステルダムに到着し、その後国内のあちこちを動き回るものだと思っている。到着の様子を一目見ようと、子供たちは両親につれられわくわくしながら港に集まっていく。 やがてシント・ニコラスが例の赤服に白い毛皮の緑飾りという一般的なイメージとは異なって、スペインの大僧正といういでたちに、お供のムーア人のピート少年(Zwarte Piet)を伴って現れ、人々の歓声に迎えられる。
<シント・ニコラスを待ちわびる子供たち>
シント・ニコラスが到着してから12月5日のシント・ニコラス・デーまでの間、シント・ニコラスは夜ごとに白馬にまたがって家々の屋根をつたい歩き、オランダ中の子供たち一人ひとりが良い子だったか、悪い子だったかを見極めて回るために大忙しの日々を過ごすことになる。
良い子にはその子のイニシャルを型取ったチョコレートやマセパインというお菓子でできた果物、ジョーク用の入れ歯などの模型、特大の人形クッキーなどを屋根の煙突から落としてくれる。悪い子にはお供のピートがかついでいる袋に入れられて連れていかれたり、鞭の罰が与えられる。ところがこのピート自身がおっちょこちょいのいたずら好きで、ちょこまか動き回ってはいたずらをして、シントににらまれることもあるそうだ。
子供たちは「シント・ニコラスを射いんとすれば、まず馬を射よ」とばかりに、毎年暖炉の横ににんじんや角砂糖を入れた靴を置いてはひづめの音を待ち焦がれる。シント・ニコラス・デーの二週間も前から子供たちは毎晩、あるいは週に数回、靴に馬の餌を入れて、期待に満ちて翌朝を待つという儀式を繰り返す。シント・ニコラス・デーまでにこの餌は時々なくなって、代わりにキャンディーやクッキーなどが置いてあることがある。「昨夜はシント・ニコラスがこっそり様子を見に来たんだ」と、子供たちはますますシント・ニコラス・デーのプレゼントへの期待を高めていく。
<忙しい親たち>
オランダの親たちはこの時期には体力的にも、頭脳的にも大いに消耗するときである。日本やアメリカのようにプレゼントをあれこれ用意するだけでは終わらないのだ。実はオランダの親たちは「詩人」にならなくてはならないのだ。プレゼントはまだシント・ニコラスの「信者」である子供やそれ以外の人にシント・ニコラスかピートの名前でプレゼントされる。そのプレゼントに詩が添えられるのだが、その詩はプレゼントをあげる相手の一年間の業績をたたえ、失敗やいたずらを戒めるものだが、それを韻を踏んだ詩の形に整えなくてはならない。
一部の人たちを除いて、そういった詩を創るのは大変な苦労である。このシーズンでは口をもごもごさせながら歩いていたり、ぼんやり腕組みをして天を仰いでいるような人たちが増えていく。その人はきっと親しい人への詩を作成中なのだろう。
<シント・ニコラス・デー当日>
家族がそろって、あるいは友達と一緒に夕食を終える、いよいよシント・ニコラスとピートからのプレゼントがもらえる段階になる。しかしそれが一筋縄にはいかない。 友達が集まっているときには、例えば部屋の隅に大きな箱や袋が置かれ、中にはそれぞれの人にあてたプレゼントが入っている。もちろんそれには例の詩が添えられていて、もらった人はまずその詩をみんなの前で読みあげなくてはならない。プレゼントは過去一年間の所行をすべてお見通しのシント・ニコラスとピートからのものだから、もらう本人にはピーンとくる内容の詩が添えられている。さらに、その詩を読めばプレゼントの中身が察しがつくようになっているので、最後には中身をピタリと当てなければならない。そうしてやっと、プレゼントが我がものになる。 家族でシント・ニコラス・デーを迎える場合にはもっと念の入ったやり方がある。例えば、ペーターという息子がちょっとよそ見をしている隙に、父親が詩の入った封筒を椅子の下に置く。しばらくして封筒に気が付いたペーターはわくわくしながら開けてみる。すると中の詩には、ペーターのこの一年間に関するお褒めの言葉や改善すべき点を示唆する言葉、プレゼントの中身を暗示する言葉などが、ウィットと愛情とゴロ合わせにあふれて書かれている。さらに、どこかに隠されているプレゼントのありかを教えている。家の中で最も寒いところを捜してみるようにという詩に従ってペーターが冷蔵庫を覗いてみると、また別の封筒があって「自分の部屋のベッドの下を捜してごらん」と書いてある。部屋に駆け上がって捜して、やっとプレゼントが見つかる、といった具合である。まるで宝探しをしているようであり、大家族の場合ではプレゼントを順番に手に入れていくだけでも一晩中かかってしまいそうである。
参考文献:オランダ雑学事始
オランダ暮らし十二ヵ月