ルソー2
出典: Jinkawiki
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ルソー2
概要
啓蒙運動のなかで、伝に見落とされがちだったのが、人間の非知性的・非合理的な側面だった。この側面を重視して、著名な啓蒙思想家やフィロゾーフたちと激しく対立することになったのが、ジュネーブ生まれの思想家ルソーだった。ルソーは合理主義によって押しつぶされそうになっていた道徳と感情の重要性を説き、「人間な幸福であるために生まれてきた」という有名な言葉とともに、思想史にその名をのこすこととなった。彼の考えによれば、18世紀のヨーロッパ人は、道徳と感情を軽視したせいで成長が止まり、不完全で堕落した人間になってしまったと豪語した。
ルソーとロマン主義
その後のヨーロッパ文化にルソーの思想は大きな影響をあたえてはいるが、その功罪は相半ばすると言ってよいだろう。ルソーは「すべての魂のなかに新たな苦悩を植え付けた」と言われることがある。簡単に言ってしまえばルソーこそロマン主義の創始者だったのだ。
思想家としての立ち位置
ルソー思想や文学など、さまざまな分野でそのきわだった天才ぶりをいかんなく発揮した。しかし、彼以外にもそのころ同じような考えをとなえた人たちがいたことも事実である。たとえばルソーは啓蒙運動によって地域社会のつながりが崩壊していくことを嘆き、人間はみな兄弟であり、社会や道徳をともに構成するべき一員であると考えていたが、同時代に活躍したアイルランド出身の保守主義者で政治家のエドマンド・バークも、ほぼ同様の考えをルソーに負けないくらい熱心に説いていたのである(その結論はルソーとはまったく異なったものではあったが)。結局ルソーは、啓蒙運動が下火になり始めた頃に人々が漠然と抱き始めた考えを、代弁した思想家だったと言えるだろう。
参考文献
・「今こそルソーを読み直す」 仲正昌樹 生活人新書
・「ルソー」 福田歓一 岩波現代文庫
HN・YOROP209