チャータースクール 11

出典: Jinkawiki

2015年7月30日 (木) 15:45 の版; 最新版を表示
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 州や学区の認可(チャーター)を受けて、父母・地域住民・教員グループ・民間企業・NPO等が学校運営の主体となって設置する初等中等学校で、公費によって運営される。 ○設置者の多様性……教員,親,地域団体など。 ○公費による運営・無償制……公費によって運営,授業料の徴収なし。 ○契約制・チャーターの更新……州,学区と設置者の間で児童生徒の学力等の改善に関する契約を締結。成果が挙がっていないと判断されればチャーター取り消し。 ○規制の免除……多くの法令・規則の適用が免除されるため,独自の理念・方針に基づく教育が可能。州によっては,教員免許を持たない者もフルタイムの教員として教壇に立つことができる。  ○選択制……通学区域を超えて児童生徒を集めることが可能。 ○無選抜制……一般の公立学校と同様原則としてすべての希望者を受け入れること。 州や学区の法令・規則の適用が免除されるため、独自の理念・方針に基づく教育を提供することができる。例えば、通学区域を超えて就学できること、教育課程の弾力化が可能になること、教員人事を柔軟に行えること、などの特別措置が認められる。ただし、教育的成果をチャーター交付者により定期的に評価され、一定の成果を挙げなければ、チャーターを取り消される。


目次

●歴史

1991年、ミネソタ州で設置を認める法律が成立し、翌92年に同州で全米最初のチャータースクールが設置された。これに続き、92年にはカリフォルニア州で、93年にはコロラド州やジョージア州など6州で同様の法律が制定され、設置を認める州が増えるにともない、学校数も増大した。


●積極的評価

 ○ 独自の理念に基づく指導

  ・ 教員や親が独自の理念に基づいた教育機会を提供できる。民間シンクタンクの調べによると,「チャーター・スクールの教育哲学」に「非常に満足している」あるいは「満足しいてる」と回答したチャーター・スクールの教員は90%以上に上る。

  ・ 別の民間シンクタンクの調べによると,各チャーター・スクールのカリキュラム内容はきわめて多様である。(選択肢の多様性はプラス評価)

 ○ 少人数での学校運営

  ・ 連邦教育省の委託調査によると,チャーター・スクールが実際に設けられている州の一般の公立学校の規模(1校当たり平均在学者数)に比べて,チャーター・スクールの規模は小さい(約半分)。在学者数200名未満の学校の比率(1998年)でみると,一般の公立学校の場合は6分の1であるのに対して,チャーター・スクールでは6割以上に上る。

  ・ 民間シンクタンクの調査によると,チャーター・スクール在学者は在学するチャーター・スクールの「好きなところ」として,「わかるまで教えてくれる」(51.3%),「自分たちを取り残さない」(38.5%),「教員の注意が行き届いている」(33.9%)など,チャーター・スクールのきめ細かな指導を評価している。また,同じ調査によると,チャーター・スクールに子どもを通わせている親についても「個々の生徒に対する教員の目配り」や「クラスあるいは学校の規模」に満足しているとする者の比率が高い。

 ○ 学力の維持・向上     ・ 学力の維持・向上に対するチャーター・スクールの貢献について,まとまった調査研究は見られないが,コロラド州教育局の州内チャーター・スクールに関する年次調査報告書によると,州内統一の学力テストの成績で比較すると一般の公立学校在学者よりも,チャーター・スクール在学者のほうが優れた成績を修めているという。


●否定的評価

 ○ 学校閉鎖による教育的混乱  

 ・ 州や学区との間で結ばれる契約内容(一定水準の学力の確保等)を遂行できないチャーター・スクールは契約を取り消され,閉鎖される。1992年の第1号校設置以降,2000年12月時点で86校(全チャーター・スクールの約4%)が契約を破棄されている。

 ○ 公財政(学校運営費)運用上の問題

  ・ 契約(チャーター)破棄の原因の多くは,学校運営費として政府から支給される公財政の不正使用である。例えば,2000年5月に閉鎖されたミネソタ州セントポールのチャーター・スクールの場合,委託先企業の財務管理失敗や教材費不正請求など,公財政の運用に失敗したことが理由であった。

  ・ このように,公財政支出である学校運営費を教育活動に適切に充てることを保証する仕組みが必ずしも確立されていないことや,学校運営費の運用の失敗による負債への対応(負債を誰が支払うのか,支出を認めた州や学区の責任)などが問題となっている。

 ○ 教育水準の低下に対する懸念

  ・ 数学や芸術など,需要に対して教員のなり手が少ない教科について,十分な資格・専門性を有する教員の確保が困難な状況が指摘されている。

  ・ 体育に関する指導が十分に行われていない,また,授業以外の楽しみがないという見方もされている。上記民間シンクタンクの調査によると,チャーター・スクール在学者がチャーター・スクールの「嫌いなところ」として,「スポーツ・プログラムがつまらない」「授業以外の活動が少ない」ことを挙げた者が最も多い(いずれも29.4%)。

 ○ 運営方針の混乱

  ・ 連邦教育省や民間のシンクタンクの調査によると,チャーター・スクールを設置した後に,教員間あるいは教員と親との間に教育方針や教員と親との役割分担等において考え方の違いが見られるようになり,契約(チャーター)の内容変更を行ったり,学校運営に支障をきたす学校があるという。

 ○ 一般の公立学校との摩擦

  ・ 一般の公立学校はこれを設置管理する学区が徴収する税金(学校税)と在籍者数に応じて配分される州の補助金を主な財源とする。しかし,チャーター・スクールに既存の一般公立学校から児童生徒が流出すると,これら学校への州補助金の配分額が減少することになるため,一般公立学校とチャーター・スクールとの間に摩擦が生じやすい。

  ・ チャーター・スクールは学校関係者及び近隣住民の間に「地域の学校」としての認識が薄い。連邦教育省の調査によると,あるチャーター・スクールの責任者が近隣の一般公立学校を批判したため,この学校が地域から浮いた存在となってしまったという。

 ○ 更新手続きにおける厳正な評価の欠如

  ・ チャーター・スクールという仕組みを有効に活用できるか否かは,各チャーター・スクールの教育的成果をいかに評価するかということによる。しかし,各チャータースクールの教育成果を主として学力テストの結果によって評価することに否定的な見方がある。また,こうした評価が必ずしも厳正に評価されていないという指摘がある。

 ○ 人種分離に対する懸念

  ・ 在学者の人種構成を学校単位でみると偏りがみられるという指摘がある(市民として共有すべき知識や価値観を教えるという公立学校の役割を担保する仕組みはチャーター・スクールにおいて必ずしも明確でない)。



【参考】

http://www.kantei.go.jp/jp/kyouiku/2bunkakai/dai5/2-5siryou5-2.htmlhttp://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chukyo/chukyo3/gijiroku/020802k.htm   HN:mks


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