健康格差
出典: Jinkawiki
人間の健康状態は全般的に向上し、平均余命も伸びてきたので、諸国家の健康格差は前世期を通じて小さくなってきた。この主な原因は、公衆衛生施設の改善、薬品や医療保険技術へのアクセスが容易になったこと、生活水準や教育水準の向上である。
世界中で標準体重以下の子どもの割合は、1990年の25パーセントから2005年の18パーセントまで低下した。結核の広がりも収束しつつある。そして大半の国々は、
マラリアの発生率を下げるというミレニアム開発目標を達成しつつあるように思われる。南アフリカも大半の国々において成人人口に猛威を振るってきたHIVは、2000~2008年の間で新たな感染率が16パーセント低下しており、制御できるようになってきた。
健康状態が改善されてきたにもかかわらず、発展途上国と先進工業国の間で、大半の国々の富者と貧者の間で、そして都市部と農村部の間で、かなりの格差が存在している。教育レベル(とくに親の教育レベル)、職業、エスニシティのような社会的要因もまた、健康格差を生み出す主要因である。ヨーロッパ地域では10万件の出世あたり27人の妊産婦が死亡し、アフリカでは900人の妊産婦が死亡している。このように妊産婦死亡率は、最大の格差を示す健康の指標である。1990~2005年の世界全体での妊産婦死亡率は、10万件の出産あたり400人が死亡しているように、停滞したままだった。
HIV/AIDSや結核、マラリアのような感染病は、治療ができるし、予防も可能である。しかしこれらの病気は、低所得国において「失われた生活年数」(YLL)の3分の2以上の原因となっている。対照的に、それらの病気は中所得国の死亡原因の25パーセントであるし、高所得国では10パーセント未満である。中所得や高所得の国々での主な死因は、非伝染病の心血管疾患、がん、アルツハイマー病、糖尿病である。
低所得国において健康を危険にさらす主な要因は、安全でない水や衛生施設の欠如、日常生活での固形燃料の使用、乳幼児の不十分な食事であり、高所得国においては肥満や、アルコールやタバコの有害な消費である。
国家間の比較によって、政府の働きかけによって変化を生み出せること、そして格差を小さくするプログラムを実施できることがわかった。費用があまりかからない基礎的な医療保健や保健教育の実施が、スリランカやキューバ、コスタリカの貧しい人々の格差を縮小させてきた。その結果、同じ所得レベルのほかの国々と比べると、平均寿命が伸び、病気が減っている。
『格差の世界地図』Ben Crow and Suresh K.Lodha 岸上伸啓訳 丸善出版
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