葬送儀礼
出典: Jinkawiki
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葬送儀礼 私たちの世界には多くの民族が住み、それぞれ異なる「文化」を持っており、大切にしている。しかし、異なっている中にも共通する点はいくつかあり、その内の一つに「死」という現象がある。「死」はこの地球上の人類には必ず訪れ、ある特定の民族がそれを避けることができるということは無い。そして、故人を弔うための営み、つまり、葬送儀礼がある。葬送儀礼を行う理由として社会的、文化的、宗教的、衛生的、心理的処理を目的として行われる。葬送儀礼は「葬制」という死に関する文化的な取り決めや、習慣に従って実施される。具体的に土葬、火葬、水葬、船葬、樹上葬、鳥葬などがある。かつての日本では古墳などに見られるように土葬が主流であるが、現在は宗教や衛生、墓地不足等の理由で火葬が主流となっている。世界には様々な葬送儀礼があり、ここでは日本では馴染みの薄い葬送儀礼を紹介したい。
チベットの鳥葬 鳥葬は、中国、ネパール、インドのチベット文化圏で一般的に行われている。チベット文化圏において転生する魂の抜けた遺体は、ただの抜け殻に過ぎない。死後2、3日経って魂が肉体から解放された後、残された遺体はハゲワシなどの猛禽類に啄まれる。猛禽類が遺体をついばむ場面は、他の文化圏の人からすればチベットの人が死者をないがしろにしているように感じられるかもしれない。一見残酷極まりなく思われるが、この葬送儀礼には自然環境だけでなく文化的な合理性がある。猛禽類に啄まれた遺体は猛禽類と共に天高く舞い上がる。鳥葬は魂の抜けた肉体を天に送り返すために行われる。正式には鳥葬のことを天葬と呼ぶ。つまり、鳥葬は、遺体を天に運ぶ手段であり、ただただ猛禽類に遺体を食べさせることだけが目的なのではないのである。
まとめ 葬送儀礼にはそれぞれの文化でそれぞれの合理性があり、文化は相対的なものであるため、それぞれ優劣をつけるようなものではない。ただ、一見、残酷な行いに見えるようなものや、疑問符が浮かぶようなものがあるが、詳しく理由や意味を問うと理に適っており、そこには死者を弔う気持ちが込められている。葬送儀礼だけでなく、様々な文化や思想も一目見て善し悪しを判断するのではなく、そこに隠された本当の意味や理由、目的を理解する事が大切である。
参考文献:『 テキスト臨床死生学 日常生活における「生と死」の向き合い方 出版:勁草書房 編著者:臨床死生学テキスト編集委員会 出版日:2014.6.20』『 (http://www.cscd.osaka-u.ac.jp/user/rosaldo/000316crelat.html )2015.8.4』 『( http://www.kimuraya.com/iroha/about/index.html )2015.8.4』