労働市場

出典: Jinkawiki

2015年8月5日 (水) 16:26 の版; 最新版を表示
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目次

概要

 労働市場とは、労働力に対する需要供給が結合ないし調整される場のことであり、したがって労働市場法生徒は、労働力の需給調整システムに関する法ということになる。また、終身雇用・年功処遇・企業別組合という特殊日本的雇用慣行に着目して、労働市場を内・外に分けて定義する見解に従えば、外部労働市場に関する法ということもできる。


戦後日本の労働法

 敗戦直後の1945年12月、GHQの占領政策によりいち早く労働組合法が制定された。これは、官民を問わずすべての労働者に対し労働三権を保障し、不当労働行為に対しては原状回復主義ではなく直罰主義を採用するものであった。しかし、GHQの政策転換により、旧労組法は1949年に大幅に改定されて現在の労組法となり、その後は大きな改定を受けず今日にいたっている。  1946年11月、日本国憲法が公布され、同法第27条2項で労働条件法定主義が謳われた。これを受け、1947年3月、本格的な労働保護法である労働基準法が制定された。そして、労基法は1987年まで約40年にわたり小刻みな改定はあったものの、労働保護法としての本質を変えることなく推移したが、真珠遊主義の大尉等とともに、以降、大きな変化を遂げることとなった。  1980年代に入り、イギリスのサッチャリズム、アメリカのレーガノミクスにより本格的に開始された新自由主義政策は、日本においては1990年代以降、規制緩和政策となって目的意識的に遂行されることとなるが、労働法の分野においては、規制緩和が提唱される前から、経済社会さらには国際社会の圧力を受ける形で改変が始まっていたのである。  また、1985年には労働者派遣法が、1993年にはパートタイム労働法がそれぞれ制定され、労基法の有期雇用規制の緩和と相まって、非正規雇用の増だに拍車をかける一方、増大する個別労使紛争に対応するため、2004年には労働審査法が、2007年には労働契約法がそれぞれ制定された。


戦後日本の労働市場

 戦後日本の労働市場法製の支柱になってきた法律は、1947年制定の職業安定法である。同法は、労働者を食い物にするピンハネ業を禁止するという趣旨のもとに、公共職業安定所を全国に設置して職業紹介事業を国家独占し、民間による有料職業紹介事業=人材仲介業を原則禁止し、また、労働大臣の許可を受けた労働組合以外による労働者供給事業=人材派遣業を全面禁止していた。


労働市場の変質

 1973年以降、円の変動相場制への移行とオイルショックを契機に低成長時代に突入した日本資本主義は、「減量経営」を合言葉に企業経営の再現合理化に乗り出し、これにより技術革新、OA・ME化が進む中で、専門的・臨時的な労働需要を生じる一方、人件費を節約し雇用責任を回避したい企業の要望に応えるように、派遣的形態の業務請負業(情報処理・事務処理)が増加していった。しかし、これが職安法の禁止する労働者供給事業に該当することは明らかであったので、政府は1985年、労働者派遣法を成立させ、非合法の人材派遣業を一部合法化するに至った。  こうして、内部労働市場における日本型雇用慣行を温存しつつ、不足する質の人材を、必要な時に、必要な量だけ、外部労働市場から調達することを可能にする、新たなる労働力需給調整システムが法制度化されたわけであるが、それは、経済社会において既に行われていた違法業態を追認したにすぎないものであった。したがってこの時点においては、未だ労働市場法製の目的意識的な新自由主義再編が開始されたとは言えないが、経済社会がまず求めたものが労働市場法製の規制緩和であったこと、しかも、それは直接雇用を回避することができる間接雇用形態の導入であったことは重要である。すなわち、経済者にとっては、外部労働市場に滞留する相対的過剰人口=産業予備軍を間接雇用形態において活用することにより、生産性向上にこの上なく貢献してきた企業一家的な内部労働市場を温存しつつ、これを補完することができるようになったのである。


参考

森博行 『労働者のための労働法ハンドブック―労働基準法を中心にして』 新社会文化出版 濱口桂一郎 『新しい労働者会』 岩波新書


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